ASUS ROG Cetra True Wireless

総合評価
2.7
科学的有効性
0.4
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
0.6
信頼性・サポート
0.7
設計思想の合理性
0.4

ゲーミング特化チューニングを施した完全ワイヤレスイヤホンですが、音質面での科学的妥当性に課題があります。ANC機能と低遅延接続は評価できるものの、より安価な同等製品の存在によりコストパフォーマンスは標準以下です。

概要

ASUS ROG Cetra True Wirelessは、ゲーミング用途に特化した完全ワイヤレスイヤホンです。2022年の発売以来、10mmの専用チューニングドライバーとハイブリッドアクティブノイズキャンセリング、最大27時間のバッテリー駆動時間を特徴としています。低遅延Bluetooth接続により、ゲーミングでの音声遅延を最小限に抑える設計となっており、IPX4の防水性能も備えています。ASUSのゲーミングブランドROGの製品として、RGB照明こそありませんが、Armoury Crateアプリによるカスタマイズ機能を提供しています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.4}\]

本製品の周波数特性は20Hz-20kHzの帯域幅を持ち、V字型チューニングが採用されています。利用可能な測定データによると、低音域と高音域が強調され、中音域が相対的に後退する傾向があります。周波数特性は透明レベルの±0.5dBを大幅に上回り、特に低音域で大幅な偏差が見られ、マスター音源への忠実度を損なっています。ASUS公式のTHD仕様は公開されていませんが、独立測定では業界標準範囲内の性能が示唆されています。ただし、V字型チューニングが全体的な透明性に影響し、測定結果基準表の透明レベルを下回る性能です。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

10mmネオジウムドライバーEssenceは適切なサイズを採用しており、インピーダンス32オームの技術仕様を実現しています。ハイブリッドANC技術は大幅なノイズ減衰性能を有し、業界標準レベルの結果を提供しています。低遅延Bluetooth実装によりゲーミング用途での遅延を軽減しており、Bluetooth 5.3とSBC/AACコーデック対応は現在の標準的な技術水準です。特許技術や独自の音響工学的アプローチは確認されておらず、全体的に既存技術の組み合わせにとどまっています。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.6}\]

現在の市場調査に基づくと、ASUS ROG Cetra True Wireless(オリジナルモデル)は各販売店で約18,000円で販売されています。ゲーミング低遅延、ANC、同等のバッテリー性能を含む同等機能を持つ製品として複数の選択肢が存在します。最も安価な同等製品はEarFun Air Pro 4(約11,600円)で、アダプティブANC、低遅延ゲーミングモード、優れたバッテリー寿命を提供します。JBL Quantum TWS(約13,500円)も専用ゲーミング機能を持つ競合製品として挙げられます。11,600円 ÷ 18,000円 = 0.64の計算により、本製品のコストパフォーマンスは0.6と評価されます。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.7}\]

ASUSは業界標準の保証期間を提供しており、日本国内でのサポート体制も整備されています。ROGブランドとしての品質管理は一定水準を維持していますが、完全ワイヤレスイヤホンという製品特性上、バッテリー劣化や接続安定性の長期的な保証は限定的です。Armoury Crateアプリによるファームウェア更新対応は評価できるものの、更新頻度や機能追加の積極性は競合他社と比較して標準的なレベルです。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.4}\]

ゲーミング用途に特化したチューニングという設計思想は、特定の市場ニーズに応えるものの限定的な合理性しか示していません。低遅延接続の実装やANC機能の搭載は、ゲーミング環境での実用性を高めています。しかし、大幅なベース強調を伴うV字型周波数特性は、忠実な音響再生の科学的根拠に乏しく、主観的な好みのために音質を犠牲にしています。競合製品が音響透明性を損なうことなくゲーミング機能を実現している点で、このアプローチは特に問題です。ゲーミング特化製品であっても、ニュートラルな周波数特性から大幅に逸脱する設計は、音響忠実度の観点から根本的に非合理的な選択です。

アドバイス

ASUS ROG Cetra True Wirelessは、ゲーミングに特化した機能を求めるユーザーには一定の価値を提供しますが、音質を重視するユーザーには推奨できません。現在の市場代替品であるEarFun Air Pro 4(約11,600円)やJBL Quantum TWS(約13,500円)が同等のゲーミング機能をより安価に提供していますが、価格差は当初の計算ほど極端ではありません。ASUSブランドの信頼性やArmoury Crateアプリとの統合を重視するユーザーには意味があります。ゲーミング用途であっても、音質の科学的妥当性を犠牲にする必要はなく、より良い音響特性を持つ選択肢も存在します。本製品のV字型チューニングは聴覚疲労を引き起こす可能性があり、長期使用には注意が必要です。価格重視なら競合製品、ブランド重視なら本製品という選択になります。

(2025.7.13)