1MORE

総合評価
3.5
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
1.0
信頼性・サポート
0.5
設計思想の合理性
0.5

中国発のオーディオブランド1MOREは、2013年設立で元FoxconnのエグゼクティブがXiaomiの投資を受けて設立。コストパフォーマンスに優れたイヤホン・ヘッドホンを製造し、THX認証を取得した製品も展開している。

概要

1MOREは2013年に中国・深圳で設立されたオーディオブランドで、元FoxconnのゼネラルマネージャーらがXiaomiの投資を受けて設立した。同社は「音楽愛好家は常により多くを聞くべき」という理念のもと、高音質なヘッドホンを手頃な価格で提供することを使命としている。世界初のTHX認証を取得したQuad Driverイヤホンや、CES賞を12回受賞するなど技術面で評価を得ている。現在は米国サンディエゴと中国深圳を拠点に、Triple Driverシリーズ、SonoFlowシリーズ、ComfoBudsシリーズなど幅広い製品を展開している。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

1MOREの主力製品であるTriple Driver In-Earヘッドホンは、周波数特性20Hz-40kHzの帯域でTechRadarとSoundGuysの測定レビューにおいて中音域・高音域でTHD0.1%以下を実現している。S/N比は多くのモデルで100dB超を達成し、ポリシーの透明レベル要件を満たしている。しかし、低音域での歪み特性については改善の余地があり、一部モデルでは100Hz以下の低音域でTHD値0.08-0.12%を示し、ヘッドホンの閾値0.05%を超える場合がある。全体的な測定性能は科学的に有効な可聴改善を提供している。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

1MOREは独自のトリプルドライバー構成(2基のバランスドアーマチュア+1基のダイナミックドライバー)を採用し、世界初のTHX認証イヤホンを開発するなど技術的な独自性を示している。QuietMax ANCテクノロジーやLDACコーデック対応、ハイブリッドANC技術など最新技術を積極的に採用している。しかし、測定データを見ると周波数特性にやや癖があり、特に低音域での歪み特性が指摘されている。業界平均を上回る技術レベルは有しているものの、完全に独自の技術革新というよりは既存技術の効果的な組み合わせという側面が強い。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{1.0}\]

1MOREの製品は、同等の機能・性能を持つ競合製品と比較して、極めて優れたコストパフォーマンスを実現しています。多くの場合、その製品カテゴリにおける世界最安値、あるいはそれに近い価格帯で提供されています。

  • 1MORE SonoFlow (75USD): LDAC・ANC対応ヘッドホンとして市場で最も安価な選択肢の一つでありながら、Sony WH-1000XM5 (279USD) のような高価な製品と同等の基本機能を提供します。
  • 1MORE Triple Driver (60USD): 複数のドライバーを搭載し高音質を実現したイヤホンとして、Shure SE535 (494USD) のような著名な高音質モデルと比較して圧倒的な低価格です。
  • 1MORE ComfoBuds Mini (99USD): 高性能なANC機能を搭載した小型完全ワイヤレスイヤホンとして、Sony WF-1000XM4 (159USD) のような上位機種と比較しても非常に競争力のある価格設定です。

このように、主力製品がいずれも同等機能を持つ製品の中で実質的な業界最安値を実現しているため、コストパフォーマンスは最高評価の1.0となります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.5}\]

1MOREは2013年設立と比較的新しいブランドであり、長期的な信頼性実績は限定的である。保証期間は標準的な1年間を提供しているが、日本における修理体制やサポート体制は大手ブランドと比較して脆弱な面がある。一方で、ファームウェアアップデート対応は積極的に行っており、製品の継続的な改善には取り組んでいる。CES賞12回受賞などの実績はあるものの、故障率やMTBFなどの具体的な信頼性データは公開されておらず、サポート品質について業界平均レベルと評価せざるを得ない。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.5}\]

1MOREの設計思想は「優れた音質を手頃な価格で」という明確なコンセプトに基づいており、基本的には合理的である。Triple Driverの構成やTHX認証取得など、測定可能な音質向上に寄与する技術的アプローチを採用している。しかし、製品によってはベース強調の音作りを行っており、これは測定上の透明性よりも主観的な嗜好を重視した設計となっている。また、専用オーディオ機器としての存在意義について、同価格帯のスマートフォン用高品質DACアンプと比較した場合の優位性が明確でない製品も存在する。科学的根拠に基づく設計と商業的な音作りの両面があり、完全に合理的とは言えない側面がある。

アドバイス

1MOREは限られた予算で高音質を求めるユーザーに適したブランドである。特にTriple Driverシリーズは、7-8万円クラスの競合製品と同等の音質を1-2万円で提供しており、入門者から中級者まで幅広く推奨できる。ただし、長期的な信頼性やサポート体制を重視する場合は、SonyやSennheiserなどの確立されたブランドを選択すべきである。また、完全にフラットな音質を求める場合は、1MOREのベース強調傾向を考慮し、購入前に試聴することを強く推奨する。最新のワイヤレス技術(LDAC、ANC)を低価格で体験したい場合は、SonoFlowシリーズが有力な選択肢となる。総じて、価格性能比を最重視するユーザーには魅力的な選択肢である。

(2025.7.11)