ACTIVO

総合評価
3.1
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
0.5
信頼性・サポート
0.4
設計思想の合理性
0.8

Astell&Kernの廉価ブランドとして展開されるDAPメーカー。測定性能は優秀だが、より安価な競合の存在によりコストパフォーマンスとサポート体制に課題あり。

概要

ACTIVOは、韓国のDreamusグループが運営するAstell&Kernのサブブランドとして2019年に設立されたデジタルオーディオプレーヤー(DAP)専門企業です。Astell&Kernの音質技術をより手頃な価格で提供することを目標とし、アクティブなライフスタイルを持つユーザー向けの製品展開を行っています。現在の主力製品は2024年7月に発売されたACTIVO P1(429 USD)で、過去にはCT10(299 USD、販売終了)を展開していました。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

ACTIVO P1の測定性能は、科学的に見て極めて優秀です。THD+Nは0.0004%(バランス出力)、S/N比は124dB(バランス)、クロストークは-145dB(バランス)と、いずれもポリシーの透明基準(THD+N 0.01%以下、S/N比 105dB以上、クロストーク -70dB以下)を大幅に上回っています。これはCirrus LogicのMasterHIFI DAC「CS43198」をデュアルで搭載し、Astell&Kernのサウンドソリューション「TERATON ALPHA」で最適化した結果であり、可聴域における歪みやノイズは人間には知覚不可能なレベルに抑えられています。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

Astell&Kernから継承したサウンドソリューション「TERATON ALPHA」を中心に、Cirrus Logicの高性能DAC「CS43198」をデュアル構成で採用するなど、堅実な設計が特徴です。DACチップ内蔵アンプに頼らず、専用の回路で音質を追求するアプローチは技術的に正当です。しかし、これらの技術は親ブランドで既に採用されているものであり、ACTIVO独自の革新的な技術とは言えません。業界全体で見れば、平均をやや上回る技術レベルに留まります。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.5}\]

ACTIVO P1(429 USD)は、機能・測定性能で同等以上の競合製品と比較すると、コストパフォーマンスに課題があります。例えば、デュアルAK4493SEQ DACを搭載し、同等のストリーミングサービスに対応するTempotec V3は199 USDで販売されています。コストパフォーマンスは 199 USD ÷ 429 USD ≒ 0.46 となり、四捨五入して0.5となります。P1の性能は優れていますが、ほぼ半額で同等性能の代替品が存在するため、価格競争力は低いと評価せざるを得ません。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.4}\]

親会社であるAstell&Kernのサポート体制には、ユーザーから複数の問題が報告されています。2024年時点でも「メールの返信が数週間ない」「電話対応が不十分」といった声が挙がっており、カスタマーサービスの品質には深刻な懸念があります。保証期間は1年間ですが、修理対応が中心で長期間を要する傾向があるとの報告も見られます。ACTIVOブランド独自のデータは限定的ですが、親会社のサポート体制の問題は無視できません。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.8}\]

測定性能を重視し、透明な音質を達成しようとする設計思想は科学的に合理的です。Cirrus LogicのMasterHIFI DACをデュアルで採用し、専用のアンプ回路で駆動するなど、音質向上に寄与する技術的アプローチは評価できます。一方で、DAPという製品カテゴリ自体が、スマートフォンと高性能な外付けDACの組み合わせに対して絶対的な優位性を示しにくくなっている点は考慮が必要です。しかし、専用機として音質を追求する姿勢は一貫しています。

アドバイス

ACTIVO P1は、単体で見れば科学的に優れた測定性能を持つDAPです。しかし、購入を検討する際は、より安価で同等以上の性能を持つTempotec V3のような競合製品の存在を念頭に置くべきです。特に、コストパフォーマンスを重視するユーザーには、より良い選択肢が存在します。また、親会社Astell&Kernのサポート体制に関する過去の報告を考慮すると、万が一の際の対応に不安が残ります。測定性能の高さを最優先し、価格や長期的なサポート体制のリスクを許容できる場合に限り、選択肢となるでしょう。

(2025.7.28)