Ause Audio

総合評価
2.4
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
0.2
信頼性・サポート
0.4
設計思想の合理性
0.3

日本の小規模オーディオメーカー。高性能なHypex nCore技術を採用するが、競合製品と比較して価格競争力に大きな課題を抱える企業。

概要

逢瀬(Ause Audio)は、創業者が30代前半で設立した日本の小規模オーディオメーカーです。代表製品であるWATERFALLシリーズのインテグレーテッドアンプは、オランダHypex社のnCoreモジュールを使用したClass-Dアンプ技術を採用し、「分離の良さ」を追求した音質を標榜しています。同社の哲学は「売上よりも音質を最優先とし、オーディオで利益が出なくても事業継続可能」というものです。主力製品のWATERFALL Integrated 250(360,000円)は、AK4497 DAC + nCoreアンプの構成で、DAC専用・パワーアンプ専用・統合・外部プリアンプ対応の4つの動作モードを提供していました。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

WATERFALL Integrated 250の測定仕様は優秀で、THD+N約0.001%(1kHz、Hypex NC252MPの実測値に基づく)、ノイズフロア30µV以下(0-20kHz)、出力インピーダンス約1.5mΩという数値は、透明レベルを上回る性能です。Hypex nCoreモジュール(NC252MP)は250W@4Ωの出力で、周波数特性10Hz-50kHz(+0/-3dB)を実現し、測定基準の透明レベルをクリアしています(SNR120dB超、クロストーク-70dB以下、IMD0.02%以下)。電源性能もノイズ低減を達成しており、科学的に可聴な音質向上に寄与する技術的改善が認められます。ただし、これらの数値は主にHypex社の既存技術によるものです。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

同社はHypex nCoreモジュールをベースとしつつ、DAC部にAK4497+OPA1632+AD812構成を採用し、クロック・DAC・出力アナログ回路の最適化されたレイアウト設計を実装しています。4つの動作モード切り替え機能や、フルバランス接続によるDAC-アンプ間結合も技術的に合理的な設計です。しかし、コア技術であるnCoreアンプ部分は完全にHypex社の既製設計に依存しており、独自技術開発の比重は限定的です。DAC周辺回路の最適化は評価できますが、業界最高水準の自社設計技術とは言えません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.2}\]

WATERFALL Integrated 250(360,000円)と同等以上の機能・測定性能を持つ競合として、Topping DX3 Pro+ DAC(21,900円)+ Fosi Audio V3 Monoペア(39,999円)の組み合わせ(合計61,899円)が存在します。このセットはDAC機能、240W@4Ω出力、THD+N0.006%未満、SNR123dB超、XLR/RCA入力対応と、ユーザー向け機能で同等以上です。コストパフォーマンス計算:61,899円 ÷ 360,000円 = 0.172。同様の統合型としてSMSL DA-9(約37,500円)も比較可能です。これらの比較により、同社製品のコストパフォーマンスは低い水準にあります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.4}\]

創業者の若年での起業により長期サポートの継続性を謳っていますが、公式サイトでWATERFALL Integrated 250をはじめ製品が非公開または製造中止となっており、V2更新も半導体不足や市況変化を理由に中止されています。小規模企業のため修理体制や部品供給の長期継続性に不安が残ります。保証期間や具体的なサポート体制についての公開情報も限定的で、業界平均を下回る水準と判断せざるを得ません。製品ラインナップの継続性も不安定で、長期的な信頼性に課題があります。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.3}\]

「分離の良さ」を追求する音質哲学自体は科学的に意味がありますが、実際の製品展開における合理性には疑問があります。優秀なHypex nCore技術を採用しながら、同等性能を低コストで実現する競合品の存在を考慮すると、専用オーディオ機器として高額販売する必然性が見出せません。汎用的なClass-D技術の組み合わせで同等以上の性能が安価に実現されている現状において、大幅な価格プレミアムを正当化する独自技術や付加価値が不足しています。科学的に効果が疑問視される「オーディオ専用設計」による価格上昇は、合理的とは言えません。

アドバイス

逢瀬の製品は技術的には優秀ですが、価格競争力の観点で推奨できません。同等以上の音質性能をお求めの方には、Topping DX3 Pro+ DACとFosi Audio V3 Monoの組み合わせやSMSL DA-9などの統合型など、科学的測定で同等以上の結果を示しながら安価な選択肢があります。これらの製品はコストパフォーマンスが数倍優秀でありながら、測定性能では逢瀬製品を上回る場合もあります。オーディオ機器選択においては、ブランドプレミアムや「専用設計」という謳い文句に惑わされず、客観的な測定データと価格の関係を重視することをお勧めします。「分離の良さ」という音質は、より安価な高性能Class-Dアンプでも十分に実現可能です。

(2025.8.6)