Benchmark

総合評価
4.2
科学的有効性
1.0
技術レベル
1.0
コストパフォーマンス
0.4
信頼性・サポート
0.9
設計思想の合理性
0.9

1985年にニューヨーク州シラキュースで設立された、音楽家・オーディオファイル・プロフェッショナルオーディオエンジニアの混成チームが運営するアメリカの音響機器メーカー。測定器レベルの極低歪み・極低ノイズ性能を追求し、DAC3シリーズやAHB2パワーアンプなどで「リファレンス」の新基準を確立。dCSの16分の1の価格でStereophile誌のDigital Component of the Year最終候補に選ばれるなど、圧倒的なコストパフォーマンスを実現しています。

アメリカ DAC アンプ リファレンス 測定器級

概要

1985年にニューヨーク州シラキュースで設立されたBenchmark Media Systemsは、音楽家、オーディオファイル、プロフェッショナルオーディオエンジニアの混成チームによって運営される、極めてユニークなアメリカの音響機器メーカーです。同社の哲学は「測定器レベルの性能を音楽再生に応用する」ことであり、音質と同等に耐久性・信頼性を重視しています。

DAC3シリーズとAHB2パワーアンプは、業界最高水準の測定性能を達成しながらも、dCSのVivaldiの16分の1という価格でStereophile誌の「Digital Component of the Year」最終候補に選ばれるなど、異次元のコストパフォーマンスを実現。4個のバランス32bit ES9028PRO DACチップやUltraLock3ジッター減衰システムなどの先進技術により、従来の「リファレンス」概念を根本から変革しています。

科学的有効性

\[\Large \text{1.0}\]

Benchmarkの技術は測定データにより完全に実証されています。DAC3は高品質パワーアンプよりも20-30dB低い歪み・ノイズを実現し、最低21bitの分解能を達成しています。AHB2の132dBというダイナミックレンジは、最高級リファレンスアンプより10-30dB静かであり、0.1Hz~200kHzの全帯域でノイズフリーを実現しています。これらの性能は客観的測定により明確に証明されており、Class-Dアンプとは根本的に異なる技術的優位性を持っています。UltraLock3ジッター減衰システムによるインターフェースジッターからの完全分離も、科学的に検証された効果です。

技術レベル

\[\Large \text{1.0}\]

Benchmarkの技術水準は業界最高レベルです。4個のバランス32bit ES9028PRO DACチップの使用、UltraLock3ジッター減衰システム、インターサンプルオーバーを防ぐ内部デジタルヘッドルームなど、技術の最前線を行く設計が施されています。AHB2では192kHz非対応USB 2.0やS/PDIF、AES3入力の完全ジッター分離を実現し、32bit PCMとネイティブDSD変換にも対応しています。同社の技術陣はプロフェッショナルオーディオ、音楽家、オーディオファイルの知見を統合しており、理論と実践の両面で最高水準の技術力を保持しています。革新性と実用性を兼ね備えた設計により、業界の技術標準を押し上げています。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.4}\]

Benchmark全体のコストパフォーマンスは、基本的な測定性能では中華系メーカーに劣るものの、プロフェッショナル品質としては優秀な水準にあります。DAC3 HGC(24万円、THD+N -118dB、SNR 124dB)に対し、同等性能のTopping D90SE(13.5万円、THD+N -120dB、SNR 125dB)が存在するため、CP = 13.5万円 ÷ 24万円 = 0.56。AHB2(32万円、THD+N -122dB、200W/8Ω)に対し、基本性能のTopping LA90 Discrete(8万円、THD+N -124dB、200W/8Ω)が存在するため、CP = 8万円 ÷ 32万円 = 0.25。ただし、UltraLock3ジッター減衰技術、測定器級の21bit分解能、長期信頼性を含めた総合価値では、価格16倍のdCS Vivaldiと同等性能を実現するなど、高級オーディオ市場では圧倒的なコストパフォーマンスを提供。測定器メーカーとしての技術的信頼性とプロフェッショナルサポートを考慮すれば、妥当な価格設定といえます。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.9}\]

Benchmarkは1985年の創業以来、プロフェッショナルな音響機器メーカーとして確固たる地位を築いています。同社の製品は耐久性と信頼性を重視した設計となっており、長期間の使用に耐える品質を保持しています。米国本社での一貫した品質管理により、製品の安定性は高いレベルにあります。Stereophile誌のClass A推奨コンポーネントに選ばれるなど、業界からの評価も極めて高く、長期的な価値を保証しています。ただし、日本国内でのサポート体制は限定的であり、正規輸入代理店を通じたサポートに依存する部分があります。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.9}\]

Benchmarkの設計思想は極めて合理的です。「測定器レベルの性能を音楽再生に応用する」という明確な目標に基づき、すべての設計判断が客観的データに裏打ちされています。音楽家、オーディオファイル、プロフェッショナルエンジニアの知見を統合することで、理論的優秀性と実用性を両立させています。AHB2の「アンプ自体の特性を持たない透明性」という設計哲学は、原音忠実再生という音響工学の基本原理に完全に合致しています。オカルト的要素は一切排除され、純粋に科学的・工学的アプローチに基づく設計が一貫して行われており、その結果として測定器級の性能と音楽的満足度を同時に実現しています。

アドバイス

Benchmarkは「測定可能な最高性能」と「音楽的満足度」を同時に求める、本格的なオーディオファイルに最適です。その透明性は一度体験すると他の機器では物足りなく感じるほどの完成度があります。

  • リファレンスシステム構築: DAC3 HGC + AHB2の組み合わせは、価格を大幅に超えた「エンドゲーム」級の性能を提供します。多くのオーディオファイルにとって、これ以上のアップグレードが不要になるレベルです。
  • プロフェッショナルユーザー: 測定器級の性能により、マスタリングやレコーディングのリファレンスモニターとして最適です。音楽制作の精度向上に直結します。
  • 測定データ重視の方: 客観的データで最高性能を求める方には、価格を考慮すれば世界最高のコストパフォーマンスを提供します。
  • 予算制約のある方: 同等の基本性能をより低価格で求める場合は、中華系DAC(Topping、SMSL等)も検討してください。ただし、プロフェッショナル品質や長期信頼性では明確な差があります。

Benchmarkの製品は「音響機器の最終解答」として位置づけられます。その圧倒的な透明性と測定性能は、音楽に含まれるすべての情報を余すことなく再現し、真の音楽体験を提供します。価格以上の価値を求める方にとって、これ以上確実な選択肢は存在しないでしょう。

(2025.07.05)