BQEYZ

総合評価
2.5
科学的有効性
0.5
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
0.2
信頼性・サポート
0.5
設計思想の合理性
0.6

中国の新興IEMメーカーで、ピエゾ電気ドライバーを用いたトライブリッド構成に特化。技術的革新性は評価できるが、測定性能と価格競争力に課題を抱える。

概要

BQEYZは2017年に中国・東莞市で設立されたオーディオブランドで、正式社名はDongguan Xianchao Acoustic Technology Co., Ltd.です。”Best Quality Earphones for Your Z(G)eneration”の略称を持ち、主にインイヤーモニター(IEM)を専門としています。同社の特徴は、ダイナミックドライバー、バランスド・アーマチュア、ピエゾ電気ドライバーを組み合わせたトライブリッド構成への特化です。Spring、Summer、Autumn、Winterの季節シリーズを中心に、BQ-10やFrostなどの低価格モデルまで幅広く展開しています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.5}\]

主力製品Spring 2の測定データでは、周波数特性は中低域の膨らみと高域のピークを持つ明確なV字型を示し、原音忠実性を表す±3dBの範囲を逸脱する箇所も見られます。感度110dB、インピーダンス32Ωという仕様は標準的ですが、特に低域における高調波歪率(THD)の上昇も報告されており、透明性の確保には課題があります。公開されている測定データではS/N比などの詳細な数値情報が限定的で、重要な指標による評価が困難です。ピエゾ電気ドライバーによる高域拡張は確認できるものの、それが全体の忠実度向上に結びついているとは言い難く、入手可能な測定データからは、科学的に透明レベルには到達していない性能と判断されます。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

BQEYZの最大の技術的特徴は、5層から9層のピエゾ電気セラミックドライバーを用いたトライブリッド構成です。ピエゾ電気素子をIEMに応用する例は珍しく、業界での独自性が認められます。自社製造による品質管理と、各ドライバーユニットの最適化技術は評価に値します。特にSpring 2の9層ピエゾ電気ドライバーは、従来のBAドライバーでは困難な高域特性を実現しています。しかし、この技術的革新が最終的な測定結果で他社製品を大幅に上回る成果には繋がっておらず、技術力のポテンシャルが十分に活用されていない面があります。20年の製造経験を持つ技術陣による設計は業界平均を上回る水準です。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.2}\]

BQEYZの代表製品Spring 2(170USD)と同等以上の測定性能を持つ製品として、7Hz Salnotes Zero(20USD)とTruthear x Crinacle ZERO:RED(55USD)を比較対象に選定しました。企業レビューとして複数の代替製品から平均値を算出します。7Hz Salnotes Zeroは 20USD ÷ 170USD ≒ 0.12で、四捨五入し0.1となります。Truthear x Crinacle ZERO:REDは 55USD ÷ 170USD ≒ 0.32で、四捨五入し0.3となります。これらの単純平均は (0.1 + 0.3) ÷ 2 = 0.2 となり、これを最終評価スコアとします。低価格モデルのBQ-10(30USD)でも、同価格帯には測定性能で上回る選択肢が多数存在します。ピエゾ電気ドライバーという技術的差別化はありますが、ユーザーが得られる音質効果を考慮すると価格競争力は低い状況です。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.5}\]

BQEYZは標準的な1年保証をIEM製品に提供し、ケーブルには3ヶ月保証を設定しています。正規販売店経由での購入では30日間の返品対応もあります。ただし、ユーザーレビューからは初期不良や長期使用での品質劣化の報告が散見されます。特にフィッティングの難しさやケーブル関連のノイズ問題が指摘されています。2017年設立の新興企業としては、製品の長期信頼性データが不十分です。一方で自社製造による品質管理体制は整備されており、業界平均的なサポート水準は維持しています。修理体制やファームウェア更新対応については情報が限定的で、今後の改善が期待されます。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.6}\]

BQEYZのピエゾ電気ドライバーを軸としたトライブリッド設計は、各ドライバーの特性を活かした合理的なアプローチです。従来のBAドライバーでは困難な高域特性をピエゾ電気素子で補完する発想は科学的に理にかなっています。自社製造による各ドライバーの最適化も合理的な方向性です。しかし、実際の製品では依然としてV字型チューニングや音色の問題が残っており、技術的ポテンシャルが音質改善に完全に活用されていません。また、同等性能をより低価格で実現する製品が多数存在する中で、専用機器として存在する必然性が薄れています。科学的アプローチは認められますが、最終的な結果が透明レベルの音質達成には至っていない状況です。

アドバイス

BQEYZは技術的革新性では評価できる企業ですが、現時点では価格競争力に大きな課題があります。Spring 2のような高価格モデルを検討されている方は、まずTruthear x Crinacle ZERO:REDやSennheiser IE 300など、同等以上の測定性能をより低価格で提供する製品との比較を強く推奨します。BQEYZの製品は、ピエゾ電気ドライバーという技術的特徴に価値を見出す愛好家向けの選択肢として位置づけられます。予算を抑えたい場合は、7Hz Salnotes ZeroやMoondrop Chu 2など、1/8以下の価格で類似性能を得られる選択肢があります。同社の今後の技術発展と価格設定の改善に期待しつつ、現在の製品選択では冷静な費用対効果の検討が必要です。購入前には必ず試聴を行い、ピエゾ電気ドライバーの音色特性が個人の好みに合致するかを確認してください。

(2025.7.28)