Denon
1910年創業の日本の老舗オーディオメーカー。AVレシーバー市場で世界最大のシェアを誇り、優れた測定性能と豊富な機能を適正価格で提供。2022年にMasimoに買収後、2025年にHarman(Samsung傘下)へ売却されるなど、所有者は変遷しているものの、製品の品質と革新性は維持。特にTHD 0.05-0.08%という優秀な歪率特性を、エントリーモデルでも実現している点は高く評価できます。
概要
Denonは1910年に日本で創業した老舗オーディオメーカーで、正式名称は「電気音響株式会社」(DENki ONkyo)に由来します。2002年にMarantzと合併してD&M Holdingsを形成、2017年にSound Unitedに買収、2022年にMasimo Corporation、そして2025年にはHarman International(Samsung傘下)へと所有者が変遷してきました。
現在、AVレシーバー市場で世界最大のシェアを持ち、エントリーモデルから高級機まで幅広いラインナップを展開。特にAVR-Xシリーズは、優れた測定性能、豊富な機能、適正な価格設定により、ホームシアター愛好家から絶大な支持を受けています。HEOS無線マルチルームオーディオシステムの開発など、革新的な技術開発も継続しています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.8}\]Denonの製品は客観的な測定データで優れた性能を示しています。例えば、AVR-X5200WのSNR(信号対雑音比)は95dB(AES17フィルター使用時)という優秀な数値を記録。THD+N(全高調波歪率+雑音)においては、フラッグシップのAVR-X8500Hが-103dB(0.0007%)という業界トップクラスの測定結果を達成しています。これらの数値は、可聴閾値を大きく下回っており、音源を忠実に再現する能力を科学的に証明しています。
技術レベル
\[\Large \text{0.9}\]業界最高水準に近い技術力を保持しています。特にデジタル信号処理技術、マルチチャンネルアンプ設計、ルームコレクション技術(Audyssey)において高い評価を得ています。全モデルでTHD 0.1%未満を達成し、エントリーモデルのAVR-S570BTでさえ0.08%という優秀な歪率を実現。8K/60Hz、4K/120Hz対応、HDMI 2.1、Dolby Atmos、DTS:X対応など、最新の映像・音声フォーマットにいち早く対応。独自のHEOSワイヤレスマルチルームシステムも業界をリードする技術の一つです。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.6}\]AVR-X2800H(実売10万円)と同等のTHD 0.06%、95W出力を持つ他社製品が6万円程度で存在するため、CP = 6万円 ÷ 10万円 = 0.6。エントリーモデルのAVR-S570BT(実売4万円)も、同等性能(70W、THD 0.08%)の製品が2.5万円で入手可能なため、CP = 2.5万円 ÷ 4万円 = 0.63。ただし、Denonは機能の豊富さ、設定の容易さ、長期サポートなど、純粋な測定値以外の価値も提供しており、実質的な価値はより高いと考えられます。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.8}\]Denonは長年の実績に裏付けられた高い信頼性を誇ります。特にAVレシーバーの耐久性は業界でも定評があり、10年以上使用される例も珍しくありません。Sound Unitedグループ(現Harman傘下)として、グローバルなサポート体制を構築。ファームウェアアップデートも頻繁に提供され、新機能の追加や不具合修正が継続的に行われています。日本国内では正規代理店によるサポートも充実しており、修理対応も迅速です。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.7}\]Denonの設計思想は「高性能を適正価格で」という極めて合理的なものです。必要十分な性能を確保しつつ、過度な高級化を避けることで、幅広いユーザーに高品質なオーディオ体験を提供しています。測定性能を重視し、主観的な音質論に惑わされない製品開発姿勢は評価できます。ただし、一部の高級モデルでは、実用上の差異が認識困難な領域での性能向上に注力している面もあり、完全に合理的とは言えない部分も存在します。
アドバイス
Denonは、ホームシアターシステムの構築を考えている方に最適な選択肢です。特にAVR-X2800HやAVR-X3800Hなどの中級機は、優れた性能と機能のバランスを持ち、多くのユーザーにとって過不足ない選択となるでしょう。8K対応、最新の音声フォーマット対応、優秀な測定性能を、比較的手頃な価格で入手できます。
ただし、純粋な2チャンネルオーディオや、極限の音質を追求する場合は、専門メーカーの製品も検討すべきです。また、頻繁な企業買収により将来のサポート体制に不安がある点も考慮が必要です。購入時は、必要な機能を明確にし、過剰な高級機に手を出さないよう注意しましょう。エントリーモデルでも十分な性能を持っているため、予算に応じた適切なモデル選択が重要です。
(2025.7.5)
この企業の製品レビュー
Denon DP-57L
0.008%の卓越した回転精度を誇る1982年製ダイレクトドライブターンテーブル。ヴィンテージハイエンド機種と競合する性能を持つが、旧式技術とサポート終了による制約あり
Denon Home Amp
eARCおよびマルチルーム機能を必要とする専門的なストリーミングアンプ分野においてHEOSマルチルーム統合機能を提供し、優れた仕様と競争力のあるコストパフォーマンスを実現するストリーミングアンプ
Denon AH-C820
独自のエアコンプレッション技術を採用した有線インイヤー。仕様上は妥当ですが、入手性とサポートの制約、より安価で性能の高い現行機の存在により総合的価値は低下しています。
Denon Home Sound Bar 550
HDMI入力+eARC、ハイレゾ/DSD再生、HEOSマルチルームを搭載したコンパクトなAtmos/DTS:Xサウンドバー。接続性は強力ですが、最大音量と超低域の量感は控えめ。4K/60パススルーは8ビット限定です。
Denon DHT-C210
一体型でDolby Atmosに対応し、内蔵デュアルサブウーハーとeARCを備える入門サウンドバー。測定系の第三者データは未公開で、Consumer Reportsの評価も限定的。機能・測定性能で同等以上の製品にVizio M-Series AiO(米)などがより安価に存在し、CPは0.7にとどまります。
Denon DCD-3000NE
クアッドES9018K2M DAC、Ultra AL32 Processing、S.V.H.メカ採用のディスク特化型SACD/CDプレーヤー。データディスクでのハイレゾ再生(最大24bit/192kHz・DSD 5.6MHz)に対応し、公開仕様のS/N・THDで下位機を上回ります。
Denon PMA-600NE
Bluetooth・192 kHz/24 bit DAC・MMフォノ内蔵のエントリー級AB級一体型です。第三者測定のSINADは60数〜約70 dBで平凡、同等機能をより安く満たす構成が存在します。
Denon AH-D2000
密閉型オーバーイヤーの上位機。50mmマイクロファイバー振動板、マグネシウム合金フレーム、Acoustic Optimizerを採用。公称25Ω/106dB/mW、再生周波数帯域5–45,000Hz。現在は生産終了で中古市場中心の流通
Denon PMA-S1
1993年にDenonのフラッグシップとして発売されたUHC-MOS搭載プリメインアンプ。50W+50W(8Ω、20Hz–20kHz)、THD 0.007%(1kHz/25W/8Ω)、S/N比108dB(Line)という仕様を持つが、現在の中古市場価格約125,000円は現代の高性能アンプと比較すると割高感が否めない。
Denon PerL Pro AH-C15PL
パーソナライズ機能を搭載した高価格帯完全ワイヤレスイヤホン。先進的な個人最適化技術を採用するものの、基本的な音響性能に問題を抱えており、価格に見合わない製品となっている。
Denon PMA-1700NE
70W×2出力のプリメインアンプ。USB-DAC、MM/MC対応フォノイコライザーを内蔵し、Advanced AL32 Processing Plusによる高解像度音源対応を特徴とする。測定性能は優秀だが、同等機能をより低価格な組み合わせで代替可能でコストパフォーマンスは低い。
Denon AVR-X4800H
9.4チャンネル対応の上位AVレシーバーとして優秀な測定性能を持つが、同等機能を大幅に安価で実現できる選択肢の存在により、コストパフォーマンスに課題がある
Denon AVR-X2800H
95W×7chのクラスAB離散アンプを搭載したミドルクラスAVレシーバー。Dolby Atmos/DTS:X対応、8K Ultra HD対応でホームシアター構築に必要な機能を網羅している。
Denon AVR-X1700H
7.2チャンネル対応でDolby Atmos機能を搭載したミドルレンジAVレシーバー。該当機能・性能で競合製品と同等クラスの価格設定を実現し、優れたコストパフォーマンスを持つが、測定性能は標準的レベル。
Denon AVR-X1800H
7.2チャンネル対応のAVレシーバー。測定性能は良好ですが、技術的には標準的。より安価な競合製品が存在するため、コストパフォーマンスは最高評価には及びません。
Denon PMA-A110
デノン110周年記念モデルの高級プリメインアンプ。優れた作りと多機能性を持つが、同等の機能と性能はより安価な製品の組み合わせで実現可能であり、コストパフォーマンスは平均的。
Denon AVR-X4500H
2018年発売のパワフルな9.2チャンネルAVレシーバー。IMAX Enhancedに対応し、11.2chプロセッシングを提供。中古市場で約90,000円で入手可能であり、THD 0.05%の優れた性能とコストパフォーマンスを両立しているが、生産終了品としてのリスクも存在する。
Denon AVR-X4300H
既に生産終了となった9.2チャンネルAVレシーバー。現行機種と比較して技術的に陳腐化が進んでいるが、中古市場における同世代機との比較では一定の価値を持つ。
Denon AVR-X3800H
9.4chの本格的なAtmos対応を約165,000円で実現する合理的設計のAVレシーバー。THD 0.08%(2ch駆動時)の良好な測定性能と豊富な機能を搭載し、同等のチャンネル数を持つ競合製品の中で最安クラスの優れたコストパフォーマンスを誇る。
Denon DCD-A110
デノンの110周年記念SACD/CDプレーヤー。日本製の重厚な作りと4枚のBurr Brown PCM1795 DACチップによる高品質再生を特徴とするが、同等機能を持つ製品の6分の1の価格で入手可能な代替品が存在するため、コストパフォーマンスは低い。
Denon SC-M41
Denon SC-M41は、D-M41システム向けに設計された2ウェイブックシェルフスピーカーです。同性能の競合製品の中で実質的に最安であり、極めて優れたコストパフォーマンスを示しますが、測定データの不足により科学的有効性の評価は限定的です。
Denon PMA-150H
DDFA技術とHEOSストリーミングを搭載したコンパクトなネットワーク統合アンプ。測定性能は妥当だが、より安価で高性能な代替品の登場によりコストパフォーマンスに課題がある。
Denon SC-CX101
Denon SC-CX101は、2ウェイ・バスレフ型のコンパクトブックシェルフスピーカー。コンパクトなボディに40kHzまでの高域再生能力を謳うが、科学的有効性は限定的で、生産終了品としてのコストパフォーマンスは一定の水準
Denon PMA-390RE
2012年日本限定の50W級エントリークラスアンプ。現代の透明性基準を満たす優れた測定値(THD 0.01%、SNR 107dB)を達成。卓越したコストパフォーマンスで中古市場において極めて有力な選択肢。
Denon DCD-755RE
測定データが一切公開されず、非科学的な技術を謳うなど多くの問題点を抱えるCDプレーヤー。生産終了品のためサポートにも懸念があり、専用機としての価値はほとんど見いだせない。唯一、中古市場での価格がコストパフォーマンスを辛うじて支えている。
Denon DL-110
1982年発売のDenon DL-110は、MM入力で使える高出力MCカートリッジ。40年以上前の基本設計であり、技術的優位性は限定的。より安価なMMカートリッジが存在するため、コストパフォーマンスも高いとは言えない。
Denon DL-103
1963年発売のDenon DL-103は、放送業界向けに開発された低出力MCカートリッジ。60年以上前の設計であり、最新技術との比較では大幅に劣る。大幅に安価で高性能な代替品が存在するため、コストパフォーマンスは極めて劣悪。
DENON DP-450USB
デノンの中級ベルトドライブターンテーブル。USB録音機能を搭載し、セミオート機能が便利だが、6万円台の価格設定に対してFluance RT85(5万円、Ortofon 2M Blue標準装備)という強力な競合が存在。付属カートリッジの品質を考慮すると、コストパフォーマンスは劣悪。
DENON DHT-S218
DENON DHT-S218は、デュアルサブウーファーを内蔵したDolby Atmos対応サウンドバーです。Dolby TrueHDやBluetooth 5.3 LE Audioといった上位規格に対応し、将来性も見据えた設計が特徴です。価格は27,979円で、より安価な競合も存在しますが、その機能差を考慮すれば、忠実度の高い再生を求めるユーザーにとって合理的な選択肢となります。