Drop
Corsair傘下のDropは、共同開発型の定番(HD 6XX、PC38Xなど)を長期継続供給しつつ、OAE1のような実験的設計にも挑戦する企業です。測定面の堅実さと開発スピードは良好ですが、価格破壊力は平均的で、保証・サポートも平均的という評価です。
概要
Dropは2012年にコミュニティ主導の共同開発プラットフォームとして出発し、2023年にCorsairに買収されたブランドです[1]。オーディオ領域ではSennheiser/EPOSやAxel Grellと協業し、HD 6XXやPC38Xのような定番を継続しながら、OAE1のような新規設計にも取り組んでいます。本レビューは最新の第三者測定と市場価格に基づき、企業全体の傾向を評価します。
科学的有効性
\[\Large \text{0.6}\]代表機の測定は概ね良好です。HD 6XXは周波数応答の整合性と左右一致が良好です[5]。PC38Xは開放型・有線・ブームマイク構成で定位とマイク収音が安定しています[11]。一方、OAE1は前方配置ドライバーという独自構造により音場は広いものの、約5.5 kHz付近のインピーダンスピークなど特異挙動が報告され、出力インピーダンスの高い機器では影響に留意が必要です[14]。総じて測定起点で堅実だが例外もあるため、この評価です。
技術レベル
\[\Large \text{0.7}\]社内単独というより高品質な外部設計資産(Sennheiser系やAxel Grellの知見)を取り込み、合理的に製品化する力が強みです。Corsair傘下で量産・供給体制の拡張も進みました[1][2]。OAE1のような前方配置・広開放メッシュといった新機軸も投入しており、独自性と実装力は平均より上と判断します。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.5}\]企業評価として主要3機種の加重平均で算出しました(重み=市場存在感:HD 6XX=0.5、PC38X=0.3、OAE1=0.2)。いずれもユーザー視点の機能・測定性能が同等以上と判断できる世界最安の比較対象を選定しています[8][11][12]。
- HD 6XX(199 USD):開放型・有線・測定良好[4][5]。比較対象 HiFiMAN HE400se(109 USD):開放型・有線でFRと歪みが同等レンジ[6][7]。計算: 109 ÷ 199 = 0.547… → 0.5。
- PC38X(199 USD):開放型ゲーミング、有線、良好なマイク測定[10][11]。比較対象 Logitech G PRO X 有線(99.99 USD):有線・ブームマイク・類似機能で測定も同等レンジ。クローズドのため受動遮音は優位[12]。計算: 99.99 ÷ 199 = 0.502… → 0.5。
- OAE1(299 USD):開放型・前方配置。比較対象 HiFiMAN HE400se(109 USD):同等機能と測定レンジ[6][7]。計算: 109 ÷ 299 = 0.364… → 0.4。
加重平均: 0.5×0.547 + 0.3×0.502 + 0.2×0.364 = 0.497… → 0.5(小数第1位丸め)[8]。
同等性メモ(最小要件):いずれも開放型・有線の完成品で、主要測定(FR、THD、一貫性等)が同等レンジである第三者データを参照しています[7][11]。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.5}\]Dropは30日以内の返品(新品同様)を明示し[3]、オプションの延長保証も提供しています[2]。HD 6XX/PC38Xは2年保証の表記があります[4][10]。一方、協業先やロットによりサポート窓口や部材供給の見通しが製品ごとに異なる可能性があり、長期信頼性データの公開は限定的です。総合して平均的(0.5)です。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.6}\]マーケティング主導のオカルト主張は見られず、測定整合性とユーザー機能(有線・開放・マイク品質など)を正面から押さえる姿勢は概ね合理的です。OAE1のような実験的設計は賛否が分かれますが、測定上の注意点を把握すれば運用で回避可能であり、挑戦的でありつつ実用の線を狙う方針として評価します。
アドバイス
中立的な開放型を手頃に求めるならHD 6XX(199 USD)は依然として堅実です[4][5]。ゲーミング重視ならPC38X(199 USD)は定位とマイク品質が強みです[10][11]。広い音場表現を試したいならOAE1(299 USD)は選択肢ですが、出力インピーダンスの高いアンプ(OTLなど)との組み合わせは避けると安定します[14]。購入前に返品ポリシーと保証条件を確認し、用途に合うか早めに実機で確かめることをおすすめします[2][3]。
参考情報
[1] CORSAIR IR, “CORSAIR to Acquire Drop Assets”(2023-07-17). https://ir.corsair.com/news-releases/news-release-details/corsair-acquire-drop-assets-further-expand-peripherals-business
[2] CORSAIR Newsroom, “Drop unlocks new levels…(買収後の製品拡張)”(2023-10-17). https://www.corsair.com/newsroom/press-release/drop-unlocks-new-levels-of-personal-expression-with-highly-customizable-mechanical-keyboards
[3] Drop Help Center, “Drop’s return/replacement policy” (参照日:2025-09-02). https://helpdesk.drop.com/hc/en-us/articles/26310998802573-Drop-s-return-replacement-policy
[4] Drop, “Massdrop x Sennheiser HD 6XX”(参照日:2025-09-02). https://drop.com/buy/massdrop-sennheiser-hd6xx
[5] RTINGS, “Sennheiser HD 6XX Review”(参照日:2025-09-02). https://www.rtings.com/headphones/reviews/sennheiser/hd-6xx
[6] HIFIMAN Store, “HE400se — 109 USD”(参照日:2025-09-02). https://store.hifiman.com/index.php/he400se.html
[7] RTINGS, “HiFiMAN HE400se Review”(参照日:2025-09-02). https://www.rtings.com/headphones/reviews/hifiman/he400se
[8] 評価手順・丸め規則(企業の加重平均を許容). ポリシーv3参照。
[9] Sennheiser US, “HD 560S — 199.95 USD”(参照日:2025-09-02). https://www.sennheiser-hearing.com/en-US/p/hd-560s/
[10] Drop, “Drop PC38X Gaming Headset — 199 USD”(参照日:2025-09-02). https://drop.com/buy/drop-pc38x-gaming-headset
[11] RTINGS, “Drop + Sennheiser/EPOS PC38X Review”(参照日:2025-09-02). https://www.rtings.com/headphones/reviews/drop/sennheiser/epos-pc38x
[12] Logitech Store, “G PRO X Wired — 99.99 USD”(参照日:2025-09-02). https://www.logitechg.com/
[13] Drop, “Drop + Grell OAE1 — 299 USD”(参照日:2025-09-02). https://drop.com/buy/drop-grell-oae1-headphones
[14] UnheardLab, “Review of Drop x Grell OAE1 Signature: style over substance?”(2024-10-28, 2025-08-11更新). https://unheardlab.com/2024/10/28/review-of-drop-x-grell-oae1-style-over-substance/
(2025.9.2)