Eversolo

総合評価
3.7
科学的有効性
0.9
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
0.4
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
0.8

中国深圳発の新興オーディオ企業。DMP-A8やDMP-A10などの測定スペックに優れたストリーミングDAC製品で急成長。AKMやESS製DACを用いた技術的実力は高いが、コストパフォーマンスで競合に圧倒される。

概要

Eversolo(エバーソロ)は2023年に製品ライナップを開始した中国深圳のオーディオ企業。親会社のZidoo Technology(ジドゥーテクノロジー、2014年設立)の投資により設立され、主にネットワークストリーマーとDAC製品を手がける。創設チームはHiFi業界での長年の経験を持ち、音響デコード、アナログ音響、アンプ、システム統合などの専門技術を有する。DMP-A6、DMP-A8、DMP-A10といったストリーミングDAC製品で急速に知名度を上げ、特に測定スペックの優秀さで注目を集めている。企業理念は”Feel the charm of HIFI”で、技術革新と正確な音響再現を重視している。

科学的有効性

\[\Large \text{0.9}\]

DMP-A8でTHD+N -120dB(0.00009%)、SNR 128dB、ダイナミックレンジ128dBという優秀な測定値を達成。上位機種DMP-A10では更にTHD+N -122dB、SNR 130dBまで向上させており、透明レベルを大幅に上回る性能を示す。Stereophile誌の独立測定でも2次高調波が-120dB(0.0001%)という極めて低い歪率を確認済み。周波数特性もDMP-A8で±0.25dB、DMP-A10で±0.15dBと優秀で、科学的に可聴な効果が期待できる。AKM AK4499EXやESS ES9039PROといった高性能DACチップの特性を適切に活用している。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

AKM AK4499EX+AK4191EQまたはESS ES9039PROを用いたDAC設計、独立した44.1kHzと48kHzのOCXO発振器によるクロック設計、フルバランス回路構成など、技術的な設計は業界標準を上回る。DMP-A10では特にノイズ除去に重点を置いた設計改良を実施。ただし、基本的にはAKMやESSの既存DACチップを活用した設計で、独自開発の要素は限定的。ARM Cortex-A55クアッドコアプロセッサーによる信号処理、DSD512/PCM 32bit 768kHz対応など、スペック面では十分な技術レベルを示すが、革新的な独自技術は見当たらない。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.4}\]

主力製品であるDMP-A8(300,000円)は、より安価なWiiM Ultra(49,800円)と比較した場合、コストパフォーマンス(CP)は約0.17となります。同等以上の性能を持つFiiO R9(224,000円)と比較してもCPは約0.75であり、価格競争力に課題があります。さらに上位機種のDMP-A10(550,000円)はFiiO R9に対してCPが約0.41とさらに厳しくなります。製品ラインナップ全体として、優れた測定性能に対して価格設定が非常に高く、コストパフォーマンスは低いと評価せざるを得ません。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

2023年に製品展開を開始した新興ブランドながら、親会社Zidoo(2014年設立)の技術基盤により製品の基本的な信頼性は確保されている。国際的な販売網を構築し、Amazon USやEUでも販売を展開。日本での正規代理店も存在し、サポート体制は整いつつある。ただし、長期的な故障率やMTBFについては実績が少なく評価困難。ファームウェア更新は定期的に実施されており、機能改善に積極的。保証期間は標準的だが、新興企業としては妥当な水準のサポートを提供している。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.8}\]

測定重視の設計アプローチは科学的で合理的。透明レベルを大幅に上回る測定性能の追求、フルバランス回路構成、高精度クロック設計など、音質向上に寄与する技術的判断は適切。6インチタッチスクリーン搭載によるユーザビリティ向上、多様なストリーミングサービス対応なども現代的で合理的。ただし、WiiMやFiioなどの競合製品が同等性能を大幅に安価で提供している状況で、専用オーディオ機器として存在する必然性に疑問がある。特に高価格帯の製品では、スマートフォン+外付けDACソリューションとの優位性が限定的。

アドバイス

Eversoloは測定スペックに優れた製品を提供する技術力のある企業だが、価格競争力に課題がある。DMP-A8やDMP-A10の測定性能は確かに優秀で、Stereophile誌の独立測定でも性能が実証されているが、WiiM Ultra(6倍安価)やFiio R9(25-40%安価で同等以上の性能)といった競合製品の存在により相対的に割高感がある。ただし、6インチタッチスクリーンによる操作性や、フルバランス設計、専用オーディオ機器としての完成度では優位性がある。購入を検討する場合は、操作性やデザイン性、専用機としてのトータル体験に価値を見出せるかがポイント。純粋にコスパ重視なら競合製品の方が有利だが、統合性と使いやすさを重視するなら検討価値がある企業。

(2025.7.8)