Exasound
カナダのハイエンドDAC専門企業。ESS製チップを採用するが、科学的有効性と極めて低いコストパフォーマンスが課題。
概要
Exasoundはカナダに拠点を置くオーディオ企業で、主にハイエンドDAC(デジタル・アナログ変換器)の設計・製造に特化しています。同社は2008年に設立され、ESS Technologies製のSabre DACチップを採用した製品ラインナップを展開。s88 Streaming DAC、e32/e38/e62/e68といった多チャンネル対応モデルを中心に、DSD512やMQAデコード機能を搭載した高価格帯製品を展開しています。Roon Ready認証を取得し、ネットワークストリーミング機能を重視した設計思想を採用しています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.3}\]Audio Science ReviewによるExasound e32の測定では、アンバランス出力時に測定上の問題が指摘されており、価格に見合わない測定結果が確認されています。バランス出力では2次高調波歪みが6dB改善されるものの、依然として透明レベルには達していません。ESS ES9038PROチップ採用を謳うものの、実装技術により期待される性能が実現されておらず、測定結果基準表の透明レベル(THD 0.01%以下、SNR 105dB以上)を大幅に下回っています。多チャンネル対応やDSD512サポートなどの機能は、基本的な測定性能の不足を補償するものではありません。
技術レベル
\[\Large \text{0.7}\]ESS Technologies製ES9038PROを採用し、独自のASIOドライバーとFPGAファームウェアによる32bit低ジッター信号処理を実装しています。USB絶縁技術やRoon Ready認証による高品質ネットワークストリーミング機能は技術的価値があります。8チャンネルDXDやDSD256対応を業界に先駆けて実現した実績もあります。しかし、DACチップの高性能を実際の測定結果に反映させる実装技術において課題があり、回路設計や電源部の最適化が不十分です。技術仕様は先進的ですが、実際の性能への技術投入効率が低い状況です。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.1}\]s88 Streaming DACの6500ドル(約950,000円)に対し、より高性能なDACであるTopping D90SE(約60,000円)と高機能なストリーマーWiim Pro Plus(約30,000円)の組み合わせが合計約90,000円で実現可能です。計算式:90,000円 ÷ 950,000円 = 0.09となり、0.1に四捨五入されます。e32やe38も同様に、SMSL D6S(約25,000円)やTopping E50(約40,000円)などのES9038Q2M搭載DAC群が同等以上の測定性能を大幅に安価で提供しています。多チャンネル対応も、PC+マルチチャンネルDACの組み合わせで代替可能であり、専用機としての価格優位性は認められません。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.5}\]カナダ本社からの直接サポート体制を維持し、ファームウェア更新も継続的に提供されています。製品保証期間は業界標準の3年間を提供し、Roon Ready認証により長期的なソフトウェア互換性も確保されています。しかし、日本国内での修理体制は限定的で、海外配送が必要となる場合があります。企業規模が小さいため、将来的なサポート継続性に不安要素があり、大手企業と比較すると信頼性・サポート体制は平均的なレベルに留まります。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.5}\]DSD512やMQA対応など、科学的に意味のない機能に開発リソースを投入する非合理的側面があります。DSDは最新マルチビットDACと比較して優位性がなく、MQAも科学的根拠に乏しい技術です。一方、Roon Readyによるネットワークストリーミング統合やUSB絶縁技術は合理的なアプローチです。しかし、基本的な測定性能向上よりも機能追加を優先する開発方針は問題があります。汎用機器(PC+高性能DAC)で代替可能な機能に対して専用機器として高価格を設定する戦略も、合理性を欠いています。
アドバイス
Exasound製品の購入は推奨できません。s88の950,000円という価格に対し、Wiim Pro Plus(30,000円)とTopping D90SE(60,000円)の組み合わせが、合計約90,000円でより優れた測定性能と柔軟なシステムを実現します。Audio Science Reviewの測定結果が示すように、価格と性能が著しく乖離しており、科学的視点から購入を正当化する根拠がありません。高額な投資に見合う音質改善は期待できず、より合理的な選択肢を検討することを強く推奨します。DSDやMQAなどの機能に惑わされず、測定データに基づく冷静な判断が重要です。
(2025.7.20)