Holo Audio

総合評価
2.9
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
0.2
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
0.4

中国のR2RラダーDAC専門メーカー。優れた測定性能を持つが、より安価で高性能なΔΣ方式DACの存在によりコストパフォーマンスは著しく低く、技術選択の合理性にも疑問が残る。

概要

Holo Audioは中国に拠点を置くオーディオメーカーで、R2RラダーDAC技術に特化した製品開発を行っています。同社の代表製品であるMay DACは、22ビットを超える分解能を実現するなど、発売当時は高い評価を受けました。現在の製品ラインナップは、エントリーレベルのCyan 2(約1,200 USD / 約190,000円)から、フラッグシップのMay KTE(約5,600 USD / 約880,000円)まで展開しています。R2R技術の課題であった抵抗値の誤差を独自技術で補正している点を特徴としています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

同社製品の測定性能は優れています。May DACは122dB超のチャンネルセパレーションや高い分解能を実現し、Cyan 2もTHD+N 0.0005%(PCM)、SNR 127dBなど、R2R方式のDACとしては良好な数値を記録しています。これらの測定結果は、ポリシーの測定結果基準表における「透明レベル」を多くの項目で達成しており、可聴域における音質への科学的有効性は確認できます。しかし、2025年現在、より安価な最新のΔΣ(デルタシグマ)方式DACがこれらの数値を上回る性能を実現しており、絶対的な最高水準とは言えません。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

Holo Audioの技術レベルは業界で一定の水準にあります。PCM用とDSD用に独立したラダーを構成するデュアルネットワークや、抵抗値の誤差をデジタル補正する技術は、R2R方式の性能向上に貢献する独自アプローチです。しかし、R2R技術自体は既存技術の延長線上にあり、測定性能において最新のΔΣ方式を上回る革新とは言えません。選択した技術の枠内で性能を追求する努力は見られますが、より優れた代替技術が存在する以上、その技術的優位性は限定的です。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.2}\]

同社製品のコストパフォーマンスは著しく低いと評価せざるを得ません。R2R方式という内部構造にこだわらず、純粋な性能で比較した場合、より安価で高性能な製品が多数存在します。例えば、フラッグシップのMay KTE(約5,600 USD)に対して、Topping社のD90 III Sabre(約900 USD)は、SINAD値でMayを上回る優れた測定性能を8分の1以下の価格で実現しています。したがってコストパフォーマンスは 900 USD ÷ 5,600 USD ≒ 0.16 となり、スコアは0.2となります。内部の技術方式の違いは、ユーザーが最終的に得る音質に科学的な優位性をもたらさないため、この比較が妥当です。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

同社は3年間の部品・工賃保証を提供し、保証対象の片道送料も負担するなど、手厚いサポート体制を構築しています。米国やヨーロッパに正規代理店が存在し、販売・サポート網も確立されています。ファームウェアの定期更新も継続的に実施しており、新興メーカーとしては充実した体制です。長期使用における安心感は比較的高いと言えますが、創業からの歴史が浅いため、企業の長期的な継続性については今後の実績を見守る必要があります。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.4}\]

同社の設計思想には合理性が認められません。測定結果で劣り、高コストになりがちなR2R方式をあえて採用しているためです。測定データの開示や性能改善への取り組みは評価できるものの、それはあくまで非合理な技術選択という枠組みの中での最適化に過ぎません。より低コストで優れた性能を達成できるΔΣ方式という明確な代替手段が存在する以上、Holo Audioの製品開発は、科学的合理性よりも特定の技術への固執や、「R2Rは音が良い」といった非科学的なオーディオ神話に迎合している面があると言わざるを得ず、合理性は低いと判断します。

アドバイス

Holo Audioの製品は、優れた測定データに裏付けられてはいますが、R2Rという特定の技術方式に強い興味やこだわりを持つユーザー向けのニッチな製品です。純粋にコストと性能を重視するならば、購入は推奨できません。Topping D90 III Sabreに代表される、より安価で測定性能に優れる最新のΔΣ方式DACが多数存在します。Holo Audio製品の価格の大部分は、R2R方式という特定の技術を実現するために支払われるコストであることを理解した上で、慎重に購入を判断すべきです。

(2025.7.31)