JH Audio

総合評価
2.8
科学的有効性
0.6
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
0.2
信頼性・サポート
0.7
設計思想の合理性
0.5

JH AudioはFreqPhaseや多ドライバー実装でカスタムIEMを牽引し、2025年5月にSound Devices(Audiotonix傘下)に買収されましたが、測定に基づく実力に対して大幅に安価な代替品が存在し、客観的な価値は厳しく見えます。

概要

JH Audioは2007年にジェリー・ハーヴェイ氏が設立し、アレックス・ヴァン・ヘイレン向けの2ウェイ・カスタムIEM開発を契機にCIEM市場を切り開きました。オーランドでの自社製造により、カスタムと一部ユニバーサルのIEMを提供し、FreqPhaseおよびSoundrive技術を掲げています。2025年5月30日、同社はAudiotonixグループ傘下のSound Devicesに買収されました。 [1][2][3][4][5]

科学的有効性

\[\Large \text{0.6}\]

第三者測定は限定的です。JH16 Proではインピーダンスが帯域内で大きく変動(約13~35Ω)し、多BA機で一般的な「出力インピーダンス依存性」が確認されています。 [6] JH16v2は10 Hz–23 kHz、18 Ω、118 dB/1 mW、遮音−26 dB(いずれもメーカー公称)です。 [7] FreqPhaseは多ウェイ位相整合の課題に取り組む技術ですが、可聴域での透明レベル改善を裏付ける広範な第三者データ(THD/IMD等)は十分ではありません。総じてプロ用途として良好ながら、全モデルにわたる透明レベル達成の証拠は不足しています。 [1][7][8]

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

多BA構成、可変低域機構、FreqPhase波guideやSoundriveミニ四連ドライバー(片側最大12基)など、内製設計の完成度は高いです。 [1][8] 米国製造と厳密なマッチングも技術的強みです。他方、多BAは業界的に確立した手法であり、最新の単発〜少数ドライバーで高品位を実現する流れもあるため、技術的優位は高いが唯一無二ではありません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.2}\]

基準価格:JH16v2 1,999 USD(公式)。日本円換算の目安は292,953円(1 USD=146.55 円、2025-08-14のIMF公表レート)。 [7][14]
最安の同等以上比較対象Etymotic ER4XR(有線IEM)44,820円(309.99 USD)。 [9][15]
同等性の根拠(ユーザー視点):有線モニターIEMとして、受動遮音は同等以上(ER4XRは総合約33 dB、音声帯で約29 dB、トレブルで約49 dBの減衰)かつ低歪(加重THD ≈0.225% @100 dB)。 [10] JH16v2の遮音は−26 dB(メーカー)。 [7]
計算(USDベース):309.99 USD ÷ 1,999 USD = 0.1550.2(小数1位四捨五入)。
結論:モニターに重要な遮音・歪の実測で同等以上を示す低価格IEMが存在し、客観的な費用対効果は低いです。 [7][9][10]

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.7}\]

1年保証(イヤピース)と30日フィット保証、通常4~6週間の製作リードタイムを明示しています。 [11][12][13] 2025年のSound Devicesによる買収は長期的な供給・サポート体制の強化に資する見通しです。一方で大手コンシューマー企業に比べるとサポート規模は限定的です。 [2][3][4]

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.5}\]

位相整合や実装精度への投資は合理的で、舞台用途に資する科学的アプローチです。 [1][8] しかし、深挿しユニバーサルIEM(例:Etymotic)の高遮音・低歪という実測メリットが低価格で得られる現状では、多ドライバーや意匠に対する価格上乗せの聴感上の効用は限定的です。 [9][10]

アドバイス

カスタムフィット堅牢な舞台運用が最優先ならJH Audioは有力候補です。一方、透明志向のモニターを低コストで求める場合、Etymotic ER4XRなど深挿し系ユニバーサルは高い遮音と低歪を大幅に安価に提供します。用途と必要要件(カスタム必須か)を明確にして選定することをおすすめします。 [9][10]

参考情報

[1] JH Audio – “About / History” および “Innovation.” https://jhaudio.com/about ; https://jhaudio.com/freqphase(参照日 2025-08-14)
[2] Sound Devices – “JH Audio Joins Sound Devices.” 2025-05-30. https://www.sounddevices.com/jh-audio-joins-sound-devices/(参照日 2025-08-14)
[3] Audiotonix – “JH Audio Joins Sound Devices.” 2025-05-30. https://audiotonix.com/news/jh-audio-joins-sound-devices/(参照日 2025-08-14)
[4] JH Audio – “Company / History.” https://jhaudio.com/company(参照日 2025-08-14)
[5] Wikipedia – “Jerry Harvey (inventor).” https://en.wikipedia.org/wiki/Jerry_Harvey_(inventor)(参照日 2025-08-14)
[6] Stereophile – “JH Audio JH16 Pro in-ear monitors Measurements.” 2011-08-10. https://www.stereophile.com/content/jh-audio-jh16-pro-ear-monitors-measurements(参照日 2025-08-14)
[7] JH Audio – 製品ページ/仕様:JH16v2. https://jhaudio.com/iem/JHA-CIEM-16V2 または https://jhaudio.com/all-item-groups/products/custom-fit/custom-jh16v2-pro-custom-in-ear-monitor(参照日 2025-08-14)
[8] JH Audio – Layla ページ(Freq|phase / Soundrive説明)。https://jhaudio.com/iem/JHA-CIEM-LAY1(参照日 2025-08-14)
[9] Sweetwater – Etymotic ER4XR 価格。https://www.sweetwater.com/store/detail/ER4XR–etymotic-research-er4xr-extended-response-earphones(参照日 2025-08-14)
[10] RTINGS – Etymotic ER4XR 実測(遮音・歪)。https://www.rtings.com/headphones/reviews/etymotic/er4xr(参照日 2025-08-14)
[11] JH Audio – FAQ(イヤピース本体1年保証)。https://jhaudio.com/frequently_asked_questions(参照日 2025-08-14)
[12] JH Audio – Service & Repair(30日フィット保証)。https://jhaudio.com/service_and_repair(参照日 2025-08-14)
[13] JH Audio – リードタイム(多くの製品ページに明記、例:JH5/JH13/JH16)。https://jhaudio.com/iem/JHA-CIEM-5V1 ; https://jhaudio.com/iem/JHA-CIEM-13V2 ; https://jhaudio.com/iem/JHA-CIEM-16V2(参照日 2025-08-14)
[14] IMF – SDR/為替レート(USD/JPY 146.55, 2025-08-14)。https://www.imf.org/external/np/fin/data/rms_sdrv.aspx(参照日 2025-08-14)
[15] Amazon.co.jp – ER4XR 国内価格例(44,820円)。https://www.amazon.co.jp/dp/B01GW786B4(参照日 2025-08-14)

(2025.8.14)