Laiv

総合評価
2.0
科学的有効性
0.6
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
0.1
信頼性・サポート
0.4
設計思想の合理性
0.3

シンガポール発の新興オーディオメーカー。主力製品のHarmony DACは、コストパフォーマンスと設計思想に致命的な課題を抱える。

概要

Laiv(ライブと発音)は2023年にシンガポールで設立された新興オーディオメーカーです。創設者のWeng Fai Hoh氏はDenafrips DACで知られるVinshine Audioの出身で、中高級市場でのオーディオ愛好家のニーズを満たすことを目指しています。現在の主力製品はHarmony DACで、Intel Altera Cyclone FPGAと0.05%精度の抵抗ネットワークを使用したR2R設計が特徴で、アルミニウム削り出しシャーシと高級部品を採用した製品作りを行っています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.6}\]

Harmony DACの測定性能は、THD+N 0.0035%など、レビューポリシーの基準表における「透明レベル」を一応は満たしています。しかし、この数値は現代の基準では凡庸であり、数万円クラスのDACでさえ容易に達成可能なレベルです。業界最高水準の製品が0.0001%以下の歪率を達成している現状を踏まえると、本機が提供する科学的な忠実度は、その価格に見合う卓越したものとは到底言えません。したがって、評価は標準レベルに留まります。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

Intel Altera Cyclone FPGAを用いたR2R設計は一定の技術的独自性を示しています。0.05%精度の抵抗ネットワークやCrystek水晶、Audio Note Kaisei、Rubycon ZLHコンデンサなどの高級部品の採用は、技術的なこだわりを示しています。モジュラー設計やI2S自動同期機能も評価できます。しかし、R2R技術自体は古典的な手法であり、結果として得られる測定性能が最新のデルタシグマ方式に及ばない点を考慮すると、業界最高水準の革新性があるとは言えません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.1}\]

Harmony DACの価格は約410,000円(2,700 USD)です。しかし、驚くべきことに、わずか約30,000円(200 USD)で販売されているS.M.S.L D-6Sは、本機を全ての測定性能で圧倒し、機能面でも同等です。10分の1以下の価格で、より優れた製品が存在するという事実は、本機のコストパフォーマンスが実質的に存在しないことを示しています。計算式は 30,000円 ÷ 410,000円 ≒ 0.073 となり、スコアはこれを四捨五入した値です。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.4}\]

2023年設立の新興企業であるため、長期的な信頼性データや故障率の実績が不足しています。創設者がVinshine Audio出身という経験はプラス要素ですが、Laiv独自のサポート体制や修理対応の実績は未知数です。シンガポールを拠点とする海外メーカーであることから、国内でのサポート対応にも課題があります。製品の保証期間や具体的なサポート内容についても、確立されたメーカーと比較して不透明な部分が残ります。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.3}\]

R2R方式の採用は、しばしば特有の「音楽的」な音質を求めて行われますが、これは科学的根拠に乏しい感性的な主張です。音源を忠実に再現するという目的(ハイフィデリティ)から見れば、より低コストで、かつ遥かに高い測定性能を達成できる現代のデルタシグマ方式を選択しないことに合理性はありません。 NOS(ノンオーバーサンプリング)モードの搭載も、忠実再生の観点からは非合理的な機能です。高級部品の採用は品質向上に寄与する可能性がありますが、基本設計の合理性の欠如を補うものではありません。結果として、より安価な汎用技術で達成可能な性能に、高価格な専用機器として存在する必然性は極めて低いと評価します。

アドバイス

Laiv Harmony DACの購入は、いかなる観点からも推奨できません。本機はその高額な価格に見合う性能や価値を全く提供しておらず、設計思想も科学的合理性を欠いています。約41万円という予算は、S.M.S.L D-6S(約3万円)のような、本機をあらゆる性能で凌駕するDACを購入しても、まだ38万円も残ります。この差額をスピーカーやアンプ、ルームアコースティックの改善に投資すれば、システム全体の音質は比較にならないほど向上するでしょう。R2R方式という特定の技術に郷愁や魅力を感じる場合でも、それは音源の忠実な再現という目的とは相反する非合理的な選択です。公正な評価に基づけば、本機は避けるべき製品です。

(2025.7.24)