Lo-D
1970-80年代の日立のオーディオブランド。アナログ技術は当時として先進的だったが、現代の測定基準では大幅に劣る性能
概要
Lo-D(ロード)は1970年代から1980年代にかけて展開された日立製作所のハイエンドオーディオブランドです。世界初のパワーMOSFETを使用したHMA-9500ステレオパワーアンプ(1977年発売)で知られ、当時としては革新的な技術を投入していました。アンプ、スピーカー、フォノカートリッジ、ターンテーブルまで幅広く展開し、特注スピーカーHS-1500/5000/10000などの超高級機も製造していました。しかし現在は製造終了しており、中古市場でのみ入手可能です。
科学的有効性
\[\Large \text{0.3}\]HMA-9500の公称スペック(100W+100W/8Ω、周波数特性5Hz-100kHz)は1977年当時としては優秀でしたが、現代の測定基準と比較すると問題レベルです。アナログ回路のため、最新デジタルアンプが実現するTHD 0.01%以下、SNR 105dB以上、クロストーク-70dB以下といった透明レベルには到底及びません。MTシリーズフォノカートリッジ(MT-24など)も周波数特性10Hz-25kHz、出力3mVと1970年代水準に留まり、現代の高精度デジタル測定機器と比較すると可聴な劣化が生じます。
技術レベル
\[\Large \text{0.3}\]世界初のパワーMOSFET採用(HMA-9500)、独自のユニトルクモーター技術(ターンテーブル)、宝石軸受けシステム(カートリッジ)など、1970年代としては先進的な設計でした。3段構成の差動アンプ、左右独立電源、NFBループ内のコンデンサー排除など、当時の技術水準では合理的なアプローチでした。しかし現代の技術水準から見ると、デジタル制御、高精度クロック、32bit DAC、Class Dアンプ技術に大幅に劣り、既に時代遅れの技術となっています。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.1}\]中古のHMA-9500が25,309-160,000円の範囲で取引される中、同等の100W出力ならFosi Audio BT20A Pro(11,000円)が周波数特性20Hz-20kHz ±1dB、THD ≤0.005%、SNR ≥108dBという遥かに優秀な測定性能を実現します。コストパフォーマンス計算では、Fosi Audioが約1/7の価格で優秀な仕様を実現しているため、Lo-D製品のコストパフォーマンスは極めて劣ります。MTシリーズカートリッジも中古約1万円に対し、Audio-Technica VM95E(11,000円)が同等以上の性能です。ヴィンテージ価値は測定性能とは無関係のため、純粋な音質性能対価格比では現代製品に大幅に劣ります。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.2}\]製造終了から40年以上経過しており、メーカーサポートは一切ありません。部品調達は困難で、故障時の修理は専門業者頼みとなります。アナログ回路のため経年劣化は避けられず、電解コンデンサーの交換などメンテナンスコストが継続的に発生します。当時の製品としては堅牢な作りでしたが、現代の製品が提供する長期保証、ファームウェア更新、部品供給体制と比較すると大幅に劣ります。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.3}\]1970年代のアナログ技術の限界内では合理的な設計でしたが、現代の視点では非合理的要素が多数存在します。アナログ回路固有の歪み、ノイズ、クロストークは原理的に回避困難で、デジタル処理による完全な透明性達成が可能な現代において、あえてアナログ機器を選択する科学的根拠はありません。真空管やアナログレコードと同様、測定可能な音質劣化を受け入れる非合理的な選択となります。スマートフォン+外付けDACの組み合わせで同等以上の機能と大幅に優秀な測定性能が実現可能です。
アドバイス
Lo-D製品の購入は音質向上目的では推奨できません。現代の11,000円のClass Dアンプが、8万円のヴィンテージLo-Dアンプを測定性能で完全に上回ります。ヴィンテージ機器としての収集価値や歴史的意義に価値を見出す場合のみ検討対象となりますが、それは音質とは無関係の主観的価値です。実用目的であれば、同予算で現代製品を選択することで、大幅に優秀な測定性能と信頼性を得られます。特に初心者は、測定データに基づく客観的な音質改善を優先し、ブランドや歴史に惑わされない選択を強く推奨します。
(2025.7.21)