OASA Electronics

総合評価
2.8
科学的有効性
0.4
技術レベル
0.5
コストパフォーマンス
0.7
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.6

広島に拠点を置く日本のオーディオ機器メーカーで、全方位スピーカー「Egretta」シリーズを展開。20年のOEM経験を活かし独自ブランドを展開するが、性能対価格比ではより合理的な代替品が存在する。

概要

OASA Electronics(オオアサ電子株式会社)は広島県に拠点を置く日本のオーディオ機器メーカーです。20年間のOEM製造経験を活かし、2011年に自社ブランド「Egretta」を日本で立ち上げ、2017年に海外展開を開始しました。同社の主力製品は全方位(360度)スピーカーで、特にデスクトップ用途向けのコンパクトな製品を展開しています。TS-A200シリーズでは、ハイル型ツイーターと改質リグニンを使用したドーム型ウーファーを組み合わせた独自の音響設計を採用しています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.4}\]

OASA Electronicsの製品は全方位スピーカーという特殊な設計を採用していますが、その音質的優位性は限定的です。TS-A200シリーズの周波数特性は80Hz-45kHzとされていますが、80Hzという低域再生限界は現代の基準では不十分で、サブウーファーが必要となります。全方位スピーカー自体は音の拡散性において特徴がありますが、位相問題や反射音による音像の曖昧さなど、高忠実度再生の観点では問題があります。同社が主張する「改質リグニン」や「ポリマークレイコンポジット」などの素材的工夫も、可聴域における明確な優位性を示す測定データが不足しており、科学的有効性は低い水準にとどまります。

技術レベル

\[\Large \text{0.5}\]

20年のOEM経験を持つ企業として一定の技術力を有していますが、業界水準と比較すると限定的です。ハイル型ツイーターの採用や改質リグニンを使用したドーム型ドライバーなど、従来とは異なるアプローチを試みている点は評価できます。しかし、これらの技術が音質向上に対してどの程度寄与するかの科学的検証が不足しており、特許や論文などの技術的成果も見当たりません。全方位スピーカーの設計自体も目新しいものではなく、MBLやGerman Physiksなど既存メーカーの技術水準には及ばないと判断されます。技術レベルは業界平均程度の評価です。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.7}\]

OASA ElectronicsのTS-A200as(実売価格 217,800円)は、ニッチな全方位デスクトップスピーカー市場において、そのコストパフォーマンスを慎重に評価する必要があります。性能面で比較対象となるのは、より優れた低域再生能力(52Hz)を持つOhm MicroWalsh Shortです。このスピーカー(ペア約127,000円)に、Fosi Audio V3のような安価で高性能なアンプ(約21,000円)を組み合わせると、合計約148,000円でTS-A200asを上回る低域性能を備えた全方位システムを構築可能です。これを基にコストパフォーマンスを計算すると 148,000円 ÷ 217,800円 ≒ 0.68 となり、スコアは0.7となります。MBLのようなハイエンド製品よりは遥かに安価ですが、より合理的な価格で同等以上の性能を実現する代替手段が存在するため、この評価となります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

日本国内メーカーとして適切なサポート体制を維持しており、20年のOEM経験に基づく品質管理体制があります。広島県に製造拠点を持ち、Yahoo!ショッピングやAmazonを通じた正規販売ルートが確立されています。保証期間や修理体制については標準的な水準を維持していると推測されますが、新興ブランドとしての実績はまだ限定的です。大手メーカーと比較すると販売網や長期サポートの面で不安要素があるものの、国内メーカーとしての基本的な信頼性は確保されています。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.6}\]

全方位スピーカーという設計思想は、音の拡散性や聴疲労軽減という点で一定の合理性があります。デスクトップ用途においてスイートスポットを広くするというアプローチは理にかなっており、狭い空間での使用には適しています。しかし、音像定位の精度や測定性能の最適化という観点では、従来の指向性スピーカーに劣る面があります。材料工学的なアプローチ(改質リグニンやポリマークレイコンポジット)は興味深いものの、その効果の科学的検証が不十分です。ニッチ市場への特化戦略としては合理的ですが、汎用性と性能の両面で制約があります。

アドバイス

OASA Electronicsは日本の技術力を活かした独自性のあるオーディオメーカーです。全方位デスクトップスピーカーを特に求める方で、日本製品の品質を重視する場合には選択肢となり得ます。しかし、購入検討者は、全方位スピーカーが音像定位の精度に本質的な妥協を伴うことを理解する必要があります。また、TS-A200シリーズは80Hzの低域再生限界により、フルレンジ再生にはサブウーファーの追加が不可欠です。コストパフォーマンスの観点では、Ohm MicroWalsh Shortに別途アンプを用意する構成のほうが安価で優れた性能を実現できるため、 TS-A200シリーズの優位性は低いと言えます。同社が技術的主張を実証するため、詳細な測定データを公開することが期待されます。

(2025.7.23)