Sendy Audio

総合評価
2.2
科学的有効性
0.3
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
0.3
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.4

手工芸による木製ヘッドホンで知られる中国メーカー。技術的には業界平均レベルだが、測定性能に問題を抱え、価格に見合った性能を提供できていない。

概要

Sendy AudioはSivga Electronic Technology Co., Ltd.の傘下ブランドとして2015年に設立された中国のヘッドホンメーカーです。手工芸による木製筐体のプラナーマグネティック型ヘッドホンを主力製品とし、AIVA、Apollo、Peacockなどの製品ラインを展開しています。ゼブラウッドやローズウッドなど天然木材を使用した外観の美しさと伝統的な職人技術を売りとしており、オーディオファイル層に一定の支持を得ています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.3}\]

Sendy Audioの製品は測定性能に深刻な問題を抱えています。主力製品AIVAの実測データでは、全体のTHD(高調波歪率)が0.4%と問題レベルの基準(ヘッドホンでは0.5%以上)に近い値であり、特に20-70Hzの低域では最大10%という極めて深刻な歪率を記録しています。さらに左右チャンネルの出力差が最大5dBに達し、ステレオイメージングに致命的な影響を与えます。これらの測定結果は透明レベルから大幅に逸脱しており、科学的に可聴な劣化を生じさせています。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

プラナーマグネティック技術の採用と、ダブルマグネット・ダブルコイル構成は業界標準レベルの技術です。木製筐体の音響設計や航空機グレードアルミニウムのCNC加工など、一定の技術的工夫は見られますが、測定性能の改善には十分に寄与していません。88mmという大型ドライバーの採用は物理的なアドバンテージを持ちますが、結果として得られる性能は技術投入に見合っていません。業界平均水準の技術レベルと評価されます。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.3}\]

企業全体のコストパフォーマンスを評価するため、代表製品であるAIVAとPeacockを評価します。まず、AIVA (599 USD) は、同等以上の性能を持つHiFiMAN HE400SE (149 USD) と比較できます。このCPは 149 ÷ 599 = 0.248 となります。次に、Peacock (1,499 USD) は、より安価で優れた測定性能を持つHiFiMAN Edition XS (499 USD) と比較でき、そのCPは 499 ÷ 1499 = 0.332 です。これら2製品のCPの平均値は0.29となり、四捨五入した結果、スコアは0.3となります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

12ヶ月の製品保証を提供し、手工芸による品質管理体制を敷いています。レビューでは「欠陥ゼロ」「細部への配慮が完璧」との評価もあり、物理的な製造品質は良好です。しかし、新興メーカーとしての実績不足と、複雑な製造工程による生産量の制約が課題です。サポート体制は業界平均水準にあると評価されます。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.4}\]

木製筐体による美観を重視するアプローチは、純粋な音質改善の観点からは非合理的な側面を持ちます。測定性能の問題を解決しないまま高価格設定を行う姿勢は、科学的な音質改善への取り組みが不十分であることを示しています。プラナーマグネティック技術の採用など基本的な音響知識はありますが、美観と音質のバランスを取ろうとする試みは、結果として音響性能を犠牲にしています。

アドバイス

Sendy Audio製品の購入は推奨できません。同社の強みである手工芸による美しい外観は確かに魅力的ですが、音質面では明確な問題を抱えており、価格に見合った性能を提供できていません。150 USDから500 USD程度の価格帯で、HiFiMAN HE400SEやSundara、Edition XSなど、同等以上の音質をはるかに低価格で実現する選択肢が豊富に存在します。特にAIVAの低域における10%という高調波歪率は、音楽鑑賞において明確に可聴な劣化をもたらすレベルです。美観を最優先する場合でも、まずは科学的に優れた製品で確かな音質基準を確立してから、装飾的な価値を持つ製品を検討することをお勧めします。

(2025.7.28)