Tanchjim

総合評価
3.6
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
0.7
信頼性・サポート
0.5
設計思想の合理性
0.8

中国の新興オーディオブランドTanchjimは、科学的な測定に基づく独自のDMT技術を武器に高品質なイヤホンを展開しています。技術レベルと設計思想は優秀ですが、ケーブル品質など信頼性に課題があります。

概要

Tanchjimは2015年に設立された中国のオーディオブランドで、Hi-Fiインイヤーモニター(IEM)の開発に特化しています。同社は音響工学の専門チームを擁し、独自のDMT(Dual Magnetic Technology)ドライバー技術を核とした製品展開を行っています。代表作であるOxygenで業界から注目を集め、現在も同シリーズを中心とした製品展開を行っています。Technology、Art、Nature、Change、Judge、Interest、Mergeの頭文字から成る社名が示すように、技術と芸術の融合を企業理念としています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

Tanchjim製品の測定性能は総じて良好です。特に代表作であるOriginは、メーカー公称値でTHD<0.0056%@1kHzという優れた低歪率を達成しており、これはポリシーの透明レベル(0.01%以下)をクリアするものです。Audio Science Review(ASR)による客観測定では、エントリーモデルのOneがターゲットカーブとのコンプライアンスで「very good to excellent」と評価されるなど、周波数特性においても大きな問題は見られません。一部製品では業界最高水準に及ばない指標もありますが、主要な製品においては科学的に有効な性能が確認されています。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

Tanchjimの技術レベルは業界内で高い水準にあります。第5世代DMT5ドライバーは dual-magnetic double-cavity 構造により高い磁束密度と低歪みを実現し、独自の技術的優位性を確立しています。FEA(有限要素解析)シミュレーションを用いた cavity 設計、HRTF(頭部伝達関数)に基づく target response curve の自社開発など、科学的アプローチに基づいた設計手法を採用しています。複合材料ダイアフラムの最適化や制御された airflow 構造など、音響工学の専門知識が製品に反映されています。単純なOEM品ではなく、自社開発による技術的独創性を持つ製品群を展開しています。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.7}\]

Tanchjimのコストパフォーマンスは製品によってばらつきがありますが、全体としては良好な水準です。例えば、主力製品のOrigin(260USD)は、同等性能を持つSimgot EA1000(220USD)と比較するとCPは0.8程度(220USD ÷ 260USD)となります。一方で、エントリー機のOne DSP(28USD)は、より安価なMoondrop Quarks DSP(15USD)などが存在するため、このセグメントでの価格優位性は限定的です。これらの代表製品を総合的に評価すると、ブランド全体のコストパフォーマンスは平均を上回るものの、突出したレベルにはありません。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.5}\]

Tanchjimの信頼性・サポートは業界平均水準ですが、改善の余地があります。製品本体に1年、ケーブルに3ヶ月の保証を提供していますが、複数のユーザーレビューでケーブル品質に関する問題が報告されています。「cables are ghetto」「cable feels cheap and thin」といった指摘が複数製品で見られ、ケーブル破損による交換需要が発生しています。また、Oxygenでは fit 問題が「infamous achilles heel」として知られており、物理的設計に起因する課題があります。Linsoul、HiFiGoなどの authorized distributor を通じた support 体制は整っていますが、RMA率などの具体的な信頼性データは公開されていません。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.8}\]

Tanchjimの設計思想は科学的根拠に基づいた合理的なアプローチを採用しています。HRTF(Head-Related Transfer Function)を基盤とした target response curve の自社開発、FEAシミュレーションによる cavity 最適化、客観的測定に基づくチューニングなど、主観や感性に依存しない scientific approach を重視しています。「scientific HiFi in-ear earphones」という明確な方向性のもと、ultra-low distortion と natural tonality の実現を目指しており、測定結果基準表の透明レベル達成に寄与する技術開発を継続しています。複数の tuning nozzle や adjustable filter system による customization 対応も、ユーザーの多様なニーズに科学的に対応する合理的な設計思想の表れです。

アドバイス

Tanchjimは科学的測定に基づく高品質なイヤホンを求めるユーザーに適したブランドです。特にOriginやOneシリーズは優秀な測定性能と合理的な価格設定を実現しており、客観的な音質改善を重視するユーザーには強く推奨できます。ただし、ケーブル品質や一部製品のフィット感に課題があるため、購入時は aftermarket ケーブルへの交換も視野に入れることを推奨します。エントリーレベルからハイエンドまで幅広い価格帯をカバーしているため、予算に応じた選択が可能ですが、特に技術的な完成度の高いOriginと、コストパフォーマンスに優れた選択肢の一つであるOne DSPが注目に値します。

(2025.7.26)