Truthear
2022年設立の新興中国IEMメーカーで、Crinacle×Zero、Hexa、Zero:REDなど測定データに基づく高精度チューニングで大きな注目を集める。創設者にMoondrop出身エンジニアが含まれるとされ、Harman目標曲線準拠の低価格高性能IEMを次々と発表。Zero:RED(55ドル)は100ドル以下で最高のIEMと評価され、価格破壊的なコストパフォーマンスを実現。新興企業ながら既存メーカーの脅威となる存在です。
概要
Truthearは2022年に中国深センで設立された新興オーディオメーカーです。創設からわずか2年で業界に大きなインパクトを与えた企業として注目されています。同社の最大の特徴は、著名IEMレビュアーのCrinacleとのコラボレーションと、Harman目標曲線に基づく科学的チューニングアプローチです。
創設者の一人がMoondrop出身のエンジニアとされており、同社の測定データ重視・アニメ系マーケティング・低価格戦略という成功パターンを継承しています。Zero(初代)で業界デビューを果たし、その後Hexa、Zero:REDと立て続けに高評価製品をリリース。特にZero:REDは50ドルという価格で「100ドル以下最高のIEM」という評価を獲得し、業界の価格体系に大きな影響を与えています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.8}\]同社の製品は、客観的測定データに基づく科学的有効性が高く評価されています。Zero:REDの周波数特性は20Hz-40.5kHz、THD < 1%、感度117.5dB/Vrms@1kHzと優秀な測定値を示します。Hexaも20Hz-40kHz、インピーダンス20.5Ω、感度120dB/vと良好な仕様です。RTINGSによる測定では、Hexaが極めて高いTimbre(音色)およびDistortion(歪み)スコアを獲得し、平均評価4.8/5という高評価を得ています。Harman目標曲線への準拠も科学的根拠に基づいた設計です。
技術レベル
\[\Large \text{0.7}\]技術的には堅実ですが、革新性では限定的です。Zero:REDの10mm+7.8mmデュアルダイナミックドライバー構成は珍しく、ポリウレタンサスペンション複合液晶ドーム振動板やN52ルビジウム磁石など高品質部材を使用。Hexaは10mmダイナミック+3BA構成で、PU+LCP複合振動板を採用しています。ただし、これらの技術は既存技術の組み合わせに近く、Toppingのような測定値における技術的ブレークスルーは見られません。設計の完成度は高いものの、独自技術の開発では他社に劣ります。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{1.0}\]コストパフォーマンスは業界トップクラスです。Zero:RED(55ドル)は、同等性能のIEMが他社では存在しないため、CP = 55ドル ÷ 55ドル = 1.0。Hexa(100ドル以下)も、Moondrop Blessing 2(319.99ドル)と類似の周波数特性を持ちながら価格は3分の1以下です。測定性能、音質評価、価格のバランスで現在最も優れた選択肢の一つとなっています。特に55ドル以下のIEM市場では、従来のKZ/CCAなどの競合を大きく上回る性能を実現しています。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.7}\]新興企業のため長期的な信頼性実績は限定的です。製品の初期品質は良好で、ユーザーレビューでは故障報告は少ないものの、2年間の企業歴では長期耐久性の評価は困難です。サポート体制についても、国際的な販売網は整備されているものの、修理サービスや部品供給の長期継続性には不安があります。ただし、製品の設計品質や部材選定は適切で、当面の信頼性は確保されています。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.7}\]設計思想は合理的ですが、独自性は限定的です。Harman目標曲線への準拠、測定データ重視のチューニング、コストパフォーマンス最優先の価格設定など、すべて科学的根拠に基づいています。Crinacleとの協力により、主観的評価と客観的測定の両面で検証された製品開発も評価できます。ただし、これらのアプローチは既にMoondropなどが確立した手法の踏襲に近く、独自の設計哲学や技術的ビジョンは明確ではありません。
アドバイス
Truthearは、現在最も注目すべき新興オーディオメーカーの一つです。コストパフォーマンスを最優先とする方には、同社の製品は最適な選択肢となるでしょう。
強く推奨される方:
- 55-100ドル予算で最高の性能を求める方
- 測定データに基づく客観的音質を重視する方
- 新興ブランドのリスクを受け入れられる方
注意点:
- 企業歴が短いため、長期サポートの保証は限定的
- 技術的独自性は他社に劣る可能性
- 製品ラインナップはIEMに限定
現在の価格帯では他社を大きく上回る性能を提供しており、特にZero:REDやHexaは価格破壊的な製品として高く評価されています。ただし、新興企業特有のリスクも考慮した上で、購入検討することをお勧めします。コストパフォーマンスを最重視するなら、現在最も有力な選択肢です。
(2025.7.6)