Ultrasone

総合評価
2.7
科学的有効性
0.4
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
0.2
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
0.7

ドイツの老舗ヘッドホンメーカーUltrasoneは、S-Logic技術と「Made in Germany」の品質を特徴とするが、測定性能は競合他社に劣り、価格も高めに設定されている。

概要

Ultrasone AGは1990年12月にドイツのTutzingでFlorian M. Königによって設立され、1991年に最初の製品が発表された老舗ヘッドホンメーカーです。同社は独自のS-Logic技術を中心とした音響技術により、スタジオ、DJ、コンシューマー向けヘッドホンの分野で30年以上の実績を築いています。「Made in Germany」の品質にこだわり、自社工場でのハンドメイド製造を行っています。60以上の特許を保有し、EMI遮蔽技術(ULE)による健康配慮も特徴的です。

科学的有効性

\[\Large \text{0.4}\]

同社の測定性能は現代基準では問題があります。Pro 900は周波数特性6Hz-42kHzを謳いますが、Reference Audio Analyzerの実測では9kHz周辺で大きなディップがあり、10kHzと11.5kHzで急激なピークが確認されており、これが高音の刺激的な音質の原因となります。S-Logic技術は音場を広げるとされますが、これは実際には周波数特性の不整合によるものです。Edition 15の40mm Mylar ドライバーやチタニウム・ゴールドコーティング(GTC)技術も、実際のTHD改善効果は限定的です。ULE技術による電磁波遮蔽は98%削減を主張しますが、これは音質改善に直結しません。最新の高性能DACアンプと比較すると、透明度レベルに到達していません。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

S-Logic技術は1991年から開発されており、ドライバー配置の独自性は評価できます。60以上の特許保有は技術開発への投資を示しています。Made in Germanyでのハンドメイド製造や、Edition 15のGTC技術など、技術的な取り組みは見られます。しかし、基本的な音響設計は従来的なダイナミック型が中心で、革新性は限定的です。競合他社の平面磁界型や静電型などの先進技術に比べると、技術レベルは業界平均程度に留まります。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.2}\]

同社の価格設定は高めです。例えば、Signature MASTER MKIIは約1,000 EUR(約150,000円)ですが、同等の性能を持つSennheiser HD6XX(199 USD/約30,000円)が存在します。計算式:30,000円 ÷ 150,000円 = 0.20となり、コストパフォーマンスは極めて低いです。Edition 15は2,999 USDで999個限定の高価格設定ですが、測定性能は同価格帯の他社製品に劣ります。「Made in Germany」のブランド価値は含まれていますが、純粋な性能対価格比では競合他社に劣ります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

ドイツの自社工場でのハンドメイド製造により、品質管理は良好です。30年以上の企業歴と60以上の特許保有により、技術的な信頼性は高いです。環境配慮として太陽光発電システムの導入、電気自動車の使用、持続可能な材料選択など、企業の社会的責任も評価できます。Made in Germanyブランドによる品質保証は市場で認知されており、長期的な製品サポートも期待できます。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.7}\]

S-Logic技術による音場拡大のアプローチは、スピーカーリスニングの再現という点で方向性は合理的です。ULE技術による電磁波遮蔽は健康配慮として理解できます。しかし、基本的な周波数特性の改善が後回しになっており、音質向上の優先順位が不適切です。プロフェッショナル市場への特化は合理的ですが、測定性能の改善がより重要です。環境配慮の取り組みは評価できますが、音質改善への技術投資がより求められます。

アドバイス

Ultrasoneは「Made in Germany」の品質とS-Logic技術による独特の音場感を求める方には選択肢となりますが、純粋な音質性能を重視する方には推奨できません。特に、測定性能を重視するプロフェッショナル用途では、より高性能な競合製品を検討すべきです。同価格帯であれば、Focal、Beyerdynamic、Sennheiserなどの選択肢がより合理的です。S-Logic技術の音場効果を体験したい場合は、中古市場での購入を検討することで、コストパフォーマンスを改善できます。

(2025.7.17)