64 Audio Nio
ダイナミック+BAのハイブリッドIEM。温厚で量感のある低域とtia技術が魅力ですが、フラッグシップ価格に対するコスパは低いです
概要
64 Audio Nio は、9 mmダイナミック1基+BA8基の4ウェイ構成を採るユニバーサルIEMです。自社特許のtia(チューブレス)とapex(圧力解放)を搭載し、同梱の m20/m15/mX モジュールで音傾向と遮音量を切り替えられます。公称はインピーダンス6 Ω、感度105 dB/mW、価格は米国で 1699 USD(換算レート例:1 USD=147.26円(2025-08-25)、250,195円相当)。[1][5]
科学的有効性
\[\Large \text{0.5}\]第三者の周波数特性測定では、m15/m20使用時に低域が大きく持ち上がる一方、mXでは低域が抑えられ中立寄りに変化することが確認できます。Headphones.comのIEC-711系測定では(m15)、中低域で左右約1–2 dBの個体差も報告されています。したがってNioはウォームで楽しい音色を狙った調整であり、帯域全体で±1 dB級の透明性を目指す設計ではありません。[7][8]
技術レベル
\[\Large \text{0.8}\]tiaのオープンBA(チューブレス高域)とapexの着脱式モジュールという実体のある機構を実装し、1DD+8BA/4ウェイの高度な構成です。ただし現在のハイエンドIEM市場においては、突出した唯一無二の技術優位とまでは言い切れません。 [1][5]
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.1}\]前提 — ユーザー視点で同等以上の機能・測定性能を満たす最も安い製品を比較基準にします。
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比較対象: Etymotic ER2SE(有線IEM/パッシブ遮音/ニュートラル目標)。メーカー公称の遮音は35–42 dBで、apex(mX≈−10 dB、m15≈−15 dB、m20≈−20 dB)装着のNioより高い遮音を示します。第三者測定でもER2SEは拡散場系の中立的FRに近いことが確認できます。よってIEMの主要軸(FRの線形性、パッシブ遮音)で同等以上と判断します。[2][3][4][9][10]
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最安確認価格(ER2SE): 149.99 USD(公式。期間限定セールはCPから除外)。
Nio価格(分母): 1699 USD。
計算: 149.99 USD ÷ 1699 USD = 0.0883 → 四捨五入で 0.1。 [1][9]
(注:apex各モジュールおよびER2SEの遮音値はメーカー公開値。FRは第三者の711系カプラ測定に基づきます。)[2][3][4][7][8][10]
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.7}\]アルミ削り出しシェル、脱着式2ピン、ブランドの運用実績により信頼性は一定水準です。ユニバーサルIEMは2年の限定保証が案内されており、正規窓口による修理対応も用意されています。多ドライバ+モジュール機構は構造上の複雑さを伴いますが、総合的には価格帯相応の体制です。[1][6]
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.7}\]apex(鼓膜圧の低減)とtia(オープンBA/チューブレス高域)という合理的な音響メカニズムを採用しています。一方で標準のm15/m20では低域量感を優先したチューニングで、厳密な透明性はmX装着時に寄せる構図です。技術の方向性は妥当ですが、価格は測定上の透明性向上だけで説明しきれません。[5][7][8]
アドバイス
迫力の低域と広がりのある定位を好み、さらにmXで中立寄りにも切り替えたい方に向きます。測定基準の中立性と遮音性能を低コストで重視するなら、ER2SEが目的適合度で優勢です(本機のCPが低い根拠)。Nioを選ぶ場合は、低域を抑えたいリスナーはmX運用を前提にすると良いでしょう。[2][4][7][8][9][10]
参考情報
[1] 64 Audio — 「Nio」製品ページ(仕様・価格)。https://www.64audio.com/products/nio (2025-08-25参照)
[2] 64 Audio — 「m20 apex module」(遮音 −20 dB)。https://www.64audio.com/products/m20-apex-module (2025-08-25参照)
[3] 64 Audio — 「m15 apex module」(遮音 −15 dB)。https://www.64audio.com/products/m15-apex-module (2025-08-25参照)
[4] 64 Audio — High-Fidelity Earplugs(apex全体の遮音目安。mX −10 dB記載)。https://www.64audio.com/pages/high-fidelity-earplugs (2025-08-25参照)
[5] 64 Audio — 「tia」技術ページ。https://www.64audio.com/pages/tia (2025-08-25参照)
[6] 64 Audio — 保証ページ(ユニバーサルIEM含む2年限定保証)。https://www.64audio.com/pages/warranty (2025-08-25参照)
[7] Headphones.com — 「64 Audio Nio Review: The Triumph of Bass」(IEC-711測定・左右約1–2 dB差の記述)。https://headphones.com/blogs/reviews/64-audio-nio-review-the-triumph-of-bass (2025-08-25参照)
[8] In-Ear Fidelity — 「64 Audio Nio Review: The Real N8」(m15/m20とmXの音傾向差の記述)。https://crinacle.com/2020/11/24/64-audio-nio-review-the-real-n8/ (2025-08-25参照)
[9] Etymotic — ER2シリーズ/ER2SE 価格(MSRP 149.99 USD、セールはCPから除外)。https://etymotic.com/earphones/ (2025-08-25参照)
[10] In-Ear Fidelity — ER2SE 周波数特性グラフ(711系カプラ)。https://crinacle.com/graphs/iems/etymotic-er2se/ (2025-08-25参照)
(2025.8.25)