7Hz Timeless
2021年にプラナーIEMの革命を起こした14.2mmプラナーマグネティックドライバー搭載機。USD220という価格でキログラム級の音質を実現し、業界のプラナーIEM普及に大きく貢献した。技術的には優秀で、特にプラナー特有の低歪み、高速な過渡応答は評価できる。しかし2024年末のTimeless II発売により、初代は事実上の型落ち製品となった。USD90以下で優秀なプラナーIEMが多数存在し、より優れたTimeless IIがUSD229で入手可能な現在、初代Timelessは厳しい競争環境に直面している。
概要
7Hz Timelessは、2021年にリリースされ、プラナーIEM市場に革命をもたらした記念すべき製品です。14.2mmプラナーマグネティックドライバーを搭載し、USD220という競争力のある価格で世界初の実用的なプラナーIEMとして市場を席巻しました。2mmの超薄型振動板、14.8Ωのインピーダンス、104dBの感度を持ちます。CNCアルミニウム筐体とMMCXケーブルを採用し、3.5mm、2.5mm、4.4mmの各種終端に対応しています。プラナー特有の高速応答と低歪み特性により、優れた明瞭性と技術性能を実現しています。
重要な注記: 2024年末に7Hz Timeless IIがUSD229で発売され、14.5mmドライバー、両面銀合金コーティングダイアフラム、4つの交換可能チューニングノズルなど大幅な改良が施されました。本レビューは後継機の存在を含む現在の市場状況を踏まえて初代Timelessを評価します。
科学的有効性
\[\Large \text{0.8}\]プラナーマグネティック技術の採用により、ダイナミックドライバーやBAドライバーとは根本的に異なる駆動原理を実現しています。測定データではプラナー特有の低歪み特性が確認されており、特に過渡応答の優秀さは科学的に立証されています。周波数応答も全体的にバランスが取れており、8-10kHz付近のピークは測定アーティファクトとの指摘もあります。ただし、複数の個体で上部中域および高域でのチャンネルマッチング問題が報告されており、製造品質の一貫性に課題があります。この問題は聴感上は大きく影響しないものの、測定上は明確に確認できます。プラナー技術自体は科学的に健全で、ダイナミックドライバーに対する測定可能な優位性を持ちます。
技術レベル
\[\Large \text{0.8}\]14.2mmプラナードライバーの実装は2021年当時としては画期的でした。超薄型振動板と磁気システムの組み合わせにより、従来のダイナミックドライバーでは困難な高速応答を実現しています。CNCアルミニウム筐体の精密加工も技術的完成度を示しています。MMCXコネクタとバランス接続対応により、システム拡張性も確保されています。しかし、現在の技術水準から見ると、チャンネルマッチング問題は製造技術の限界を示唆しており、技術的完成度に疑問が残ります。2024年現在では、より安価でより一貫した品質を持つプラナーIEMが存在し、Timeless IIは初代に対する大幅な技術的進歩を示しています。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.3}\]Timeless IIがUSD229で優れた技術を搭載して登場し、初代TimelessがいまだにUSD200-220程度で販売されている現在、コストパフォーマンスは大幅に悪化しています。USD90以下で優秀なプラナーIEMが多数存在し、例えばLetshuoer S12 Pro(USD129)やKiwi Ears Aether(USD169、しばしばUSD122でセール)などが挙げられます。Timeless IIは初代よりわずかUSD9高いだけで、改良されたドライバー、優れた製造品質、チューニング柔軟性を提供します。CP計算:USD122(Aetherセール価格)÷ USD200(Timeless現在価格)= 0.61。しかし、USD229でのTimeless IIの優れた価値提案を考慮すると、初代Timelessは深刻な競争圧力に直面しています。革命的な歴史的価値は認めるものの、純粋な価格対性能比較では明らかに劣位にあります。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.6}\]7Hzは中国の音響機器メーカーとして一定の実績を持ち、標準的な品質管理を行っています。MMCXコネクタの採用により、ケーブル交換や修理対応も容易です。ただし、複数のレビューでチャンネルマッチング問題が指摘されており、製造工程での品質管理に改善の余地があります。保証期間やアフターサポートは業界標準で、特に優れた点はありません。長期使用においてプラナードライバーの耐久性は理論的には優秀ですが、実際の故障率データは限定的です。Timeless IIの発売は、7Hzが初代の製造問題の多くを解決したことを示唆しています。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.6}\]プラナーマグネティック技術の採用自体は科学的に合理的で、低歪み・高速応答という明確な技術的優位性があります。USD220という価格設定も2021年当時としては革命的でした。しかし、2024年の市場状況を考慮すると、同等の技術をより安価に提供可能であることが証明されており、現在の価格設定は合理性を欠いています。チャンネルマッチング問題を解決できていない状況でTimeless IIを発売した判断は、品質重視の設計思想との整合性に疑問を提起します。技術的優位性はあるものの、現在の市場状況では設計思想が時代遅れとなっています。
アドバイス
7Hz Timelessは歴史的に重要な製品でしたが、2025年現在では購入を推奨できません。7Hz Timeless IIがUSD229で優れた技術、改良された製造品質、チューニング柔軟性を提供しており、7Hzのプラナー技術に興味がある方には明らかな選択肢です。USD150以下でプラナーIEMを求める方には、Letshuoer S12 Pro(USD129)やKiwi Ears Aether(USD169、しばしばUSD122でセール)などの優秀な選択肢があります。初代Timelessは、プラナーIEM革命の記念品として所有したいコレクション目的のみで検討すべきです。実用性を重視するなら、現在の市場にはより良い選択肢が多数存在し、7Hz愛好家にとってはTimeless IIが明らかなアップグレード路線です。
現在の市場推奨: 7Hzブランドを好む方にはTimeless II(USD229)、予算重視のプラナーIEM検討者にはLetshuoer S12 Pro(USD129)。
(2025.07.06)