ADAM Audio A5X

参考価格: ? 213000
総合評価
2.5
科学的有効性
0.6
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
0.2
信頼性・サポート
0.4
設計思想の合理性
0.5

X-ARTツイーターを搭載した5.5インチニアフィールドモニターですが、フロントポート設計による1.1kHzでの明確な周波数特性の問題と、廃番による限定的なサポートが課題となっています。

概要

ADAM Audio A5Xは、同社の特徴的なX-ARTフォールドリボンツイーターと5.5インチウーファーを組み合わせた2ウェイアクティブニアフィールドモニターです。50Wアンプをツイーターとウーファーにそれぞれ搭載し、最大110dB SPLの出力を実現します。カーボンファイバー/ローハセル/グラスファイバー複合素材のドライバーを採用し、動的特性の向上を図っています。しかし現在は廃番製品となっており、新規購入は困難な状況となっています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.6}\]

AudioScienceReviewの詳細測定によると、A5Xは1.1kHzで明確な周波数特性の落ち込みが確認されています。これはフロントポート設計による相殺効果が原因で、JBL 7シリーズなど他のフロントポート2ウェイスピーカーでも見られる問題です。86dB SPLでの歪率は良好に制御されており、ハイパスフィルターにより適切な帯域制限が行われています。全体的な特性は良好ですが、1.1kHzの明確な問題により、透明レベルの達成には至っていません。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

X-ARTフォールドリボンツイーターは、従来のドームツイーターに比べて低歪みと50kHzまでの超高域再生を実現する先進技術です。カーボンファイバー複合材料のドライバーコーンは共振を抑制し、優れた動的特性を提供します。Class A/Bアンプ設計による駆動回路も適切です。しかし、フロントポート設計については、コンピューターモデリングや材質・テクスチャーの最適化が不十分であったことが測定結果から判明しており、設計の完成度に課題があります。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.2}\]

A5Xの現在価格はペアで1419.98USDですが、同等以上の性能を持つJBL 305P MkIIがペアで318USD程度で入手可能です。JBL 305P MkIIは同等の5インチクラスで、中域の明瞭性に優れ、A5Xよりも線形な低域特性を持ちます。計算式:318USD ÷ 1419.98USD = 0.223となり、四捨五入で0.2となります。A5XのX-ARTツイーターは高域特性に優位性がありますが、大幅な価格差を正当化するほどの性能差は認められません。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.4}\]

ADAM Audioは確立されたドイツのメーカーですが、A5Xは既に廃番製品となっており、公式サイトでも「Archived Product」として扱われています。主要な販売店では取り扱いが終了しており、新規での入手は非常に困難です。製造終了により今後の部品供給やサポートは期待できず、新規購入者には極めて限られた選択肢しかありません。製品の初期品質は良好でしたが、廃番による継続的サポートの欠如により信頼性・サポート面で低評価となります。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.5}\]

X-ARTツイーター技術は科学的に音質改善に寄与する合理的なアプローチです。しかし、フロントポート設計による1.1kHzでの相殺効果は、設計段階で予測・回避可能な問題であり、合理性に疑問が残ります。同社の他のモデルや競合製品がリアポート設計で同様の問題を回避していることを考慮すると、この設計選択は非合理的です。測定結果を重視する現代的なアプローチは評価できますが、実際の測定で明らかになった欠陥への対応が不十分でした。

アドバイス

A5Xは優れたX-ARTツイーター技術を持つ魅力的なモニターですが、廃番製品のため新規購入は推奨しません。同等以上の性能をより低価格で提供するJBL 305P MkII(ペアで318USD程度)や、同様に評価の高いYamaha HS5(ペアで400USD程度)が現実的な選択肢です。既にA5Xを所有している場合は、1.1kHzの問題を理解した上で使用継続は可能ですが、長期的にはサポート面での課題があります。新規購入者には、現行製品から選択することを強く推奨します。

(2025.7.31)