ADAM Audio T5V

参考価格: ? 63000
総合評価
3.9
科学的有効性
0.5
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
1.0
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
0.8

U-ARTリボンツイーターとHPSウェーブガイドを搭載した5インチ・ニアフィールドモニター。第三者測定では中域の偏差が小さく、価格水準としては合理的な設計と良好な信頼性を示します。米国市場における同等以上の最安比較でも割安で、コストパフォーマンスは最高評価です。

概要

ADAM Audio T5Vは、U-ART加速リボンツイーター(HPSウェーブガイド)と5インチ・ポリプロピレンウーファーを組み合わせた2ウェイ・アクティブ・ニアフィールド・モニターです。ウーファー50W+ツイーター20WのクラスDバイアンプ、DSP制御クロスオーバー/EQを内蔵し、周波数応答は45Hz–25kHz(-6dB)、最大SPLは「1m・ペアで106dB」です [2]。Tシリーズ共通の設計思想として、内蔵DSPクロスオーバーと合理的な部品選定により小型でも実用的な直進性と作業域を狙っています [3]。

科学的有効性

\[\Large \text{0.5}\]

Klippel NFSによる第三者測定では、-6dBポイントが約51.3Hz、-3dBポイントが約58.6Hzと、サイズ相応の低域拡張を示します。300Hz–5kHzの周波数帯での偏差は約2.0dBと小さく、リスニングウィンドウも概ね中立的です(Preference Score 4.06、理想的なサブ併用で6.42)[1]。一方、全帯域で±3dBを維持する「基準的な透明性」には届かない箇所がみられるため、評価は中庸としました。メーカー公称として最大SPLや帯域等の仕様値も整合しています [2]。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

独自のU-ARTリボンツイーターとHPSウェーブガイド、50W+20WのクラスD、内蔵DSPクロスオーバーという構成は、価格帯としては高い実装水準です [2][3]。設計の目的は可聴帯域での指向性制御と作業域の確保であり、上位機の技術を簡素化して下位機へ展開する合理性がみられます。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{1.0}\]

米国市場の実売(ペア)は479.98 USD [4]。同等以上の実測性能(より平坦なウィンドウ応答と深い低域拡張)を示す代表的比較対象は Kali Audio LP-6 V2 ですが、現在の実売(ペア)は498.00 USDでT5Vより高価です [5][6]。よって「同等以上でより安価な代替」は存在せず、CP=1.0 とします(比較の根拠:機能は2Wayアクティブ/バイアンプ等で同等、実測FRと低域拡張でLP-6 V2は同等以上)[5]。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

ADAM Audioはグローバルな販売・サポート網を持ち、T5Vは登録により最長5年保証(2年+登録で3年延長)です [2][3]。本カテゴリーはユーザー適用のファームウェア更新が不要で、基本はハードウェアの信頼性と出荷品質が指標となります。これらの点は業務用途に十分な水準と判断します。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.8}\]

「小型筐体+HPSウェーブガイド+DSPクロス」で可聴帯域の直進性と作業域を狙う方向性は科学的に合理的です [2][3]。過度な装飾や非科学的主張はなく、実測でも中域偏差を小さく抑えるなど目標整合が確認できます [1]。一方で、素の単体で「全帯域±1dB級の透明性」までは到達していないため満点ではありません。

アドバイス

デスクトップ〜近接設置で中域の見通しが欲しい用途に向いています。小音量でも情報量を保ちやすく、リスニングポジションの許容も広めです。より深い低域やより平坦なリスニングウィンドウを重視する場合は、価格は上がりますがKali LP-6 V2(ペアで498.00 USD) [5][6]も検討価値があります。超低域が必要ならT10Sサブの追加も選択肢です [2]。

参考情報

[1] Spinorama.org, “Measurements for speaker Adam T5V (ASR / Klippel NFS)”, https://www.spinorama.org/speakers/Adam%20T5V/ASR/index_asr.html, 2025年8月18日参照(-3dB/-6dB、300Hz–5kHz偏差、Preference)
[2] ADAM Audio, “T5V Product Sheet (PDF)”, https://www.adam-audio.com/content/uploads/2018/01/ADAM_Audio_T5V_Product_Sheet.pdf, 2025年8月18日参照(45Hz–25kHz、Max SPL per pair 106dB、50W+20W、DSPクロス)
[3] ADAM Audio, “T Series overview / technology”, https://www.adam-audio.com/en/t-series/, 2025年8月18日参照(内蔵DSPクロスオーバー、アンプ出力)
[4] Sweetwater, “ADAM Audio T5V 5 inch Powered Studio Monitor(ペア価格表記あり)”, https://www.sweetwater.com/store/detail/T5V–adam-audio-t5v-5-inch-powered-studio-monitor, 2025年8月18日参照(ペア 479.98 USD / 単品 239.99 USD)
[5] Erin’s Audio Corner, “Kali Audio LP-6 v2 (Second Wave) – measurements”, https://erinsaudiocorner.com/loudspeakers/kali_lp-6v2/, 2025年8月18日参照(同等以上の実測性能の根拠)
[6] B&H, “Kali Audio Project Lone Pine Studio Monitor LP-6 v2 (Black)”, https://www.bhphotovideo.com/c/product/1661707-REG/kali_audio_project_lone_pine_studio.html, 2025年8月18日参照(単品 249.00 USD → ペア 498.00 USD)

(2025.8.20)