Aful-Performer8

総合評価
3.7
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
0.3
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
1.0

7BA+1DDという贅沢なドライバー構成を採用した369ドルのハイブリッドIEM。4分岐クロスオーバーやRLCネットワーク技術など高度な音響設計により、5Hz-35kHzという広帯域再生を実現。測定性能は優秀で、特に高域の伸びの滑らかさは価格帯で屈指のレベル。ただし、15ドル程度のCCA CRAなど超低価格IEMの台頭により、コストパフォーマンスでは苦戦を強いられています。

IEM ハイブリッド 7BA+1DD 中国 高解像度

概要

Aful Performer8は、中国のオーディオメーカーAfulが2023年に発売したフラッグシップIEMです。7個のバランスドアーマチュアドライバーと1個の8mmダイナミックドライバーを搭載した計8ドライバー構成により、高解像度と自然な音色の両立を目指しています。

369.99ドルという価格設定は、Moondrop Blessing 2(319.99ドル)やDUNU SA6 MK2(579ドル)など、確立された中価格帯IEMと競合する領域です。RLCネットワーク技術による周波数分割補正、高ダンピング空気圧バランス技術、3Dプリント音響管構造など、先進的な音響技術を多数採用。特に10kHz以降も滑らかで伸びやかな高域特性は、多くのレビュアーから高い評価を得ています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

Performer8の測定データは、客観的に優れた性能を示しています。周波数特性は5Hz-35kHzと非常に広帯域で、人間の可聴域を大きく超えた再生能力を持ちます。インピーダンス30Ω、感度115dB@1kHzという仕様は、一般的なポータブル機器でも十分な音量を得られる適切な設計です。パッシブノイズリダクション26dBも実用的な遮音性を提供します。ただし、Audio Science Reviewなどによる詳細なTHD+N測定データが公開されていないため、歪み特性の客観的評価は限定的です。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

7BA+1DDという多ドライバー構成を、4分岐クロスオーバーで精密に制御する技術は高度です。RLCネットワークによる位相補正、カスタマイズされたBAドライバー、生体振動板を採用した8mmダイナミックドライバーなど、各要素に独自技術が投入されています。3Dプリント技術を活用した音響管構造も、精密な音響設計を可能にしています。ただし、これらの技術が実際の音質向上にどの程度寄与しているかは、測定データの不足により定量的評価が困難です。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.3}\]

Performer8の369.99ドルという価格に対し、同等以上の測定性能を持つIEMが大幅に安価で入手可能です。CCA CRA(15ドル)は単一DDながら優れた周波数特性を実現し、多くのレビュアーから高評価を得ています。KZ ZSN Pro X(30ドル未満)も1DD+1BAのハイブリッド構成で良好な性能を提供。CP = 15ドル ÷ 369.99ドル = 0.04となりますが、ドライバー数や技術の違いを考慮してもなお、性能差に対して価格差が大きすぎるため0.3と評価します。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

Afulは比較的新しいブランドながら、品質管理は良好です。医療グレードレジンを使用した筐体は耐久性が高く、高純度単結晶銅銀メッキケーブル(98線×4芯構成)も高品質です。標準的な2ピンコネクタ採用により、ケーブル交換も容易です。保証期間などの詳細情報は限定的ですが、ユーザーレビューでは初期不良や故障の報告は少なく、製造品質は安定しているようです。

設計思想の合理性

\[\Large \text{1.0}\]

Performer8の設計は極めて合理的です。多ドライバー構成の位相問題をRLCネットワークで補正し、各帯域を専用ドライバーに割り当てる手法は音響工学的に理にかなっています。5.83mmという太めのノズル径も、音響特性を優先した結果と考えられます。オカルト的な要素は一切なく、すべての技術的選択が測定可能な性能向上を目指しています。高域の滑らかな伸びという評価も、適切な設計の結果と言えるでしょう。

アドバイス

Aful Performer8は、技術的には優れたIEMですが、購入判断には慎重な検討が必要です。

推奨される方

  • 多ドライバーIEMの技術に興味がある方
  • 滑らかで伸びやかな高域特性を重視する方
  • 370ドルの予算があり、最新技術を体験したい方

代替案の検討

  • 予算重視の場合:CCA CRA(15ドル)やKZ ZSN Pro X(30ドル未満)
  • 同価格帯の選択肢:Moondrop Blessing 2(319.99ドル)
  • 上位価格帯の選択肢:DUNU SA6 MK2(579ドル)

純粋な音質性能では高評価に値しますが、近年の低価格IEMの急速な進化により、コストパフォーマンスの観点では厳しい評価となります。音質の絶対値を求めるか、価格対性能比を重視するかで、購入判断は大きく変わるでしょう。

(2025.7.6)