aiyima A70
TPA3255チップとPFFB技術を搭載したClass Dアンプ。測定性能は優秀で、機能セットにおけるコストパフォーマンスも優位です。
概要
Aiyima A70は、Texas Instruments社のTPA3255チップを採用したClass Dステレオアンプです。最大出力300W×2(4Ω)を謳い、Post Filter Feedback(PFFB)技術により負荷依存性を排除し、線形性を向上させることを特徴としています。XLRとRCA入力を装備し、トリガー入力機能も備えたデスクトップ向けのコンパクトなアンプとして設計されています。NE5532オペアンプを搭載し、交換可能な設計により音質調整の自由度を提供しています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.8}\]Audio Science Reviewの測定では、XLR入力かつ48V 10A電源使用時に96dBのSINADを記録し、「excellent」カテゴリに分類されています。SNRは116dB、THDは1Wで0.0015%と優秀な数値を示します。周波数特性は20Hz-20kHz(±1dB)で、可聴域をほぼ完全にカバーしています。PFFB技術により負荷依存性が排除されており、測定結果基準表の透明レベルに近い性能を実現しています。ただし、この最高性能はXLR入力と48V 10A電源の組み合わせ時のみであり、RCA入力では性能が低下します。
技術レベル
\[\Large \text{0.7}\]TPA3255チップにPFFB技術を組み合わせた設計は技術的に合理的です。Sumida製オーディオ用インダクタ、NCC大容量フィルタコンデンサ、ドイツWIMA出力コンデンサ、日本ELNA電解コンデンサなど、高品質な部品を使用しています。オペアンプ交換機能により音質調整の自由度を提供している点も評価できます。しかし、TPA3255自体は既に広く使用されている既存技術であり、PFFB実装も特別に独創的とは言えません。業界標準的な技術の適切な実装レベルです。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{1.0}\]199 USDでの価格設定に対し、XLR入力、PFFB技術、96dB SINAD相当の同等以上の機能・性能を持つより安価な代替品は見当たりません。Fosi Audio V3(109 USD)やZA3(149 USD)のような低価格製品は存在しますが、XLR入力の欠如やSINAD(88-89dB)の低さから、機能・性能面で完全に同等とはみなせません。このため、A70は同カテゴリで最もコストパフォーマンスの高い選択肢です。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.6}\]Aiyimaは中国系オーディオブランドとして一定の市場実績を持ちますが、長期的な信頼性データは限定的です。一部のレビューで発熱が早いとの指摘があり、熱管理に関する軽微な懸念がありますが、広範な故障報告はありません。製品保証は業界標準レベルで、グローバルサポート体制は大手メーカーと比較すると劣ります。Class D技術の特性上、故障率は比較的低いと予想されますが、長期使用における信頼性の実績が不足しています。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.8}\]Class D技術の採用、PFFB実装による線形性向上、高品質部品の使用など、設計思想は科学的に合理的です。測定可能な音質改善に寄与する方向性で開発されており、非科学的な主張は排除されています。XLRとRCA両対応、トリガー入力機能など、実用性を重視した設計も評価できます。コンパクトな筐体ながら適切な放熱設計を採用している点も合理的です。
アドバイス
A70は測定性能面では優秀なアンプで、XLR入力と48V 10A電源使用時には96dBのSINADを実現し、Fosi Audio V3(88dB)やZA3(89dB)を上回ります。同等機能(XLR入力、PFFB)を持つより安価な代替品がないため、バランス接続と高透明度を求めるユーザーにとって優れたコストパフォーマンスを提供します。最高水準の測定性能をコンパクトな形で求める場合に価値があります。一般的な音楽鑑賞でXLRを必要としない場合はより安価な選択肢で十分ですが、明確な先進機能・性能要求がある場合に推奨できる製品です。
(2025.7.26)