AKG K271 MkII

参考価格: ? 19500
総合評価
2.8
科学的有効性
0.5
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
0.6
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.5

ヘッドバンド内オートミュートと着脱式デュアルケーブルを備える密閉型業務用ヘッドホンです。基本的なモニタリングには使えますが、測定に基づく中立性では近年の競合に見劣りします。便利機能を重視する場合に選択肢となります。

概要

AKG K271 MkIIは、スタジオやライブ用途のモニタリング向けに設計された密閉型オーバーイヤー型です。ヘッドバンド内のスイッチにより、頭から外すと自動でミュートされるオートミュート機構と、mini-XLR着脱式の3 mストレート/5 mカールの2本のケーブルが付属します[1][2]。公称仕様は16 Hz〜28 kHz、55 Ω、104 dB SPL/V、最大入力200 mW、ドライバー径30 mmです[1][2]。実測チューニングは今日の測定最適化モデルに比べると中立性で不利です。

科学的有効性

\[\Large \text{0.5}\]
  • メーカー仕様(参考): 16–28,000 Hz、55 Ω、104 dB SPL/V、200 mW、30 mm [1][2]。
  • 第三者測定: Reference Audio Analyzerは実測感度約109.7 dB SPLインピーダンス約74.3 Ωを報告し、カタログ値との差異を示します[3]。HeadphoneCheckの周波数特性ではサブベースの減衰(例:25 Hz ≈ −12.5 dB100 Hz ≈ −2.8 dB)、中域の持ち上がり(200–630 Hzで+7〜+9 dB)、高域の上昇(10 kHz ≈ +5 dB)が確認できます[4]。Audio Science Reviewの分析も低域が薄く高域が明るい傾向を指摘し、200 Hz〜3 kHzは良好ながら全体として±3 dBの透明性帯から外れる領域が広いと要約できます[5]。
  • 含意: 低域の伸びと高域ピークにより中立性が限定され、近年のスタジオ向け競合より科学的妥当性は中程度に留まります。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

30 mmダイナミックドライバーとmini-XLR着脱ケーブル、ヘッドバンド内オートミュートなど実用機能は堅実です[1][2]。一方で最新のターゲット追従型チューニングや磁気回路/振動板素材の高度化といった最適化は見られません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.6}\]

レビュー対象の市場価格(分母): 130 USD(現行市場の代表値)[6]。参考として国内実勢は19,500円(約132 USD)です。

同等以上の最安比較対象: AKG K361 新品 79.99 USD(大手量販)[7]。
同等性メモ: クローズドの業務用モニターで着脱式ケーブルを備え、RTINGS実測でRMS偏差約2.5 dB・20 Hzまでの低域到達を示し、K271 MkIIに対して中立性(FR/低域)で同等以上と判断します[8]。

CP計算: (79.99 USD ÷ 130 USD = 0.615) → 0.6

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

パッド/ケーブルは交換可能で、部品供給も広く流通します。日本国内は正規取扱で3年保証(Y3)が提供されています[9]。一方、オートミュートの機械スイッチは長期使用での故障点になり得ますが、構造は単純でサービス性は確保されています。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.5}\]

利便機能とサービス性を重視した「道具」としては合理的ですが、測定に基づく中立性の追求は限定的です。現代の基準で“高忠実度”を狙う設計とは言い難く、用途は基本モニターに留まります。

アドバイス

オートミュートが必須(収録現場等)でmini-XLRの耐久性を重視するなら本機は有力です。音の中立性や費用対効果を優先するなら、AKG K361(またはK371)がよりターゲット準拠の特性と良好な低域を、より低価格または同等価格で提供します[8]。ライブのクリック対策など実務用途ではK271の遮音性とオートミュートは有効ですが、精度が問われるミックス判断には測定最適化モデルを推奨します。

参考情報

[1] AKG. 「K271 MKII | Professional studio headphones」https://www.akg.com/headphones/professional-headphones/K271MKII.html(2025-08-31参照)。
[2] AKG. 「AKG_K271_MKII_Spec_Sheet.pdf」https://www.akg.com/on/demandware.static/-/Sites-masterCatalog_Harman/default/dw32f8e624/pdfs/AKG_K271_MKII_Spec_Sheet.pdf(2025-08-31参照)。ヘッドバンド内オートミュート/30 mm/付属ケーブル。
[3] Reference Audio Analyzer. 「AKG K 271 MKII Measurement’s report」https://reference-audio-analyzer.pro/en/report/hp/akg-k-271-mk2.php(2025-08-31参照)。感度・インピーダンス実測。
[4] HeadphoneCheck. 「AKG K271 MKII」https://www.headphonecheck.com/test/akg-k271-mkii/(2025-08-31参照)。周波数特性の具体値(例:25 Hz −12.5 dB、10 kHz +5 dB)。
[5] Audio Science Review. 「AKG K271 Review (Closed Back Headphone)」https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/akg-k271-review-closed-back-headphone.24750/(2025-08-31参照)。
[6] Klarna価格概況. 「AKG K271 MKII 価格」https://www.klarna.com/us/shopping/pl/cl11/3205653/Headphones/AKG-K271-MKII/(2025-08-31参照)。
[7] Guitar Center. 「AKG K361 Closed-Back Studio Headphones — 79.99 USD」https://www.guitarcenter.com/AKG/K361-Closed-Back-Studio-Headphones-Black-1500000286083.gc(2025-08-31参照)。
[8] RTINGS. 「AKG K361 Headphones Review」https://www.rtings.com/headphones/reviews/akg/k361(2025-08-31参照)。RMS偏差2.5 dB、20 Hz到達。
[9] サウンドハウス. 「AKG K271MKII 密閉型モニターヘッドホン 3年保証モデル」https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/124431/(2025-08-31参照)。

(2025.8.31)