AKG Q701

参考価格: ? 85000
総合評価
2.5
科学的有効性
0.3
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
0.1
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.7

先進的ドライバー技術を採用したオープンバック・リファレンスヘッドホンだが、深刻な中域歪み問題と生産終了による劣悪なコストパフォーマンス

概要

AKG Q701「クインシー・ジョーンズ・シグネチャー」は、特許取得済みのVarimotion振動板技術とフラットワイヤー・ボイスコイルを特徴とするAKGのプレミアム・リファレンスクラスヘッドホンです。オーストリアのデザイン事務所Kiskaとの共同設計により、本革、金属アーチ、3D成型ベルベットイヤーパッドを採用しています。各ユニットは個別にテストされ、シリアルナンバーが刻まれており、このシグネチャーシリーズにおけるAKGの品質管理への取り組みを示しています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.3}\]

複数の測定ソースから、音響忠実度に致命的な影響を与える深刻な性能問題が明らかになっています。1kHzでのTHDは1.4%を記録し、ヘッドホンの問題レベル閾値0.5%を大幅に上回っています [1]。Audio Science Reviewは「高音量レベルにおける1k-3kHz範囲での受け入れがたいほど悪い歪みピーク」を確認しています [2]。スペック上の周波数範囲10Hz-39.8kHzは優秀に見えますが、実測性能では19Hz-24.8kHz (±3dB)となっており、問題レベルと透明レベルの中間に位置しています [1]。特に重要なボーカル帯域における深刻な中域歪み問題は、このヘッドホンのリファレンス・モニタリング能力を根本的に損ない、問題レベルを大幅に超える評価となります。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

Q701は独自技術により実質的な技術的成果を示しています。AKGの特許取得済みVarimotion振動板は、中央80マイクロメートルから周辺部40マイクロメートルまで厚さを変化させ、周波数応答を最適化しています [3]。同社はヘッドホンにおけるフラットワイヤー・ボイスコイル技術のパイオニアであり、優れた過渡応答と高域再生を提供しています。1947年以来1,500以上の特許を持つAKGは、重要な知的財産開発を実証しています。コンピューター最適化されたネオジウム磁石システムと精密製造プロセスは、業界標準に影響を与えた先進的エンジニアリング能力を反映しています。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.1}\]

現在の市場価格では、生産終了により Q701 は約85,000円で販売されています [4]。より安価な代替品が、優れた測定性能で同等のオープンバック機能を提供しています。Samson SR850(5,500円)は10Hz-30kHz周波数応答、32Ω インピーダンス、50mm ダイナミックドライバーを備え、大幅に低い歪み特性を示します [5]。Superlux HD668B(4,800円)は1kHz/1Vで0.3%未満のTHDという、Q701の1.4%よりもはるかに優秀な性能で同様のスペックを提供します [6]。両製品とも同等以上のユーザー機能を極めて優れたコストパフォーマンスで提供しています。最安の同等代替品を使用:CP = 4,800円 ÷ 85,000円 = 0.06、四捨五入で0.1となります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

AKGはHarmanのグローバルサポートインフラを通じて専用カスタマーサービスラインで1-2年の保証を提供しています [7]。頑丈な金属アーチ、本革コンポーネント、着脱式ケーブルを特徴とする構造は耐久性をサポートしています。しかし、生産終了状況により長期的な部品供給と修理サポートが制限されています。最小限の可動部品を持つシンプルなダイナミックドライバー設計は本質的な信頼性をサポートし、AKGの確立された実績は品質基準への信頼を提供しています。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.7}\]

Q701はHarmanターゲット時代以前の設計思想を表現し、科学的測定目標よりも従来のオーディオファイル嗜好を優先しています。Variomotionとフラットワイヤー技術への投資は、革新的エンジニアリングアプローチによる性能向上の合理的追求を示しています。洗練されたドライバー技術と精密製造は、音質に対する真剣なエンジニアリングコミットメントを反映しています。結果として生じた中域歪み問題は実行における限界を示していますが、先進ドライバー技術追求という基本設計思想は科学的合理性を示しています。K371シリーズなど現代のAKG製品は、Q701の技術的基盤を基に改善された測定重視アプローチでHarmanターゲット準拠への進化を実証しています。

アドバイス

Q701の深刻な中域歪み問題により、先進的ドライバー技術にもかかわらず、クリティカルリスニングやプロフェッショナルモニタリングには不適切です。生産終了による現在の価格設定は、Samson SR850(5,500円)やSuperlux HD668B(4,800円)など、コストの一部で優れた測定性能を提供する代替品と比較して極めて劣悪な価値提案を生み出しています。オープンバック・リファレンスヘッドホンを求める方は、Q701の歪み問題を回避しつつ、これらの予算代替品や現代的科学調整アプローチを組み込んだ現行世代製品を検討すべきです。

参考情報

[1] Reference Audio Analyzer, AKG Q 701 Measurement’s report, https://reference-audio-analyzer.pro/en/report/hp/akg-q-701.php, 2025年9月15日アクセス, 1V RMS, 1kHzで測定

[2] Audio Science Review Forum, Why RTings measured it differently: AKG open-ear bad 1k-3k distortions, https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/why-rtings-measured-it-differently-akg-open-ear-bad-1k-3k-distortions.41487/, 2025年9月15日アクセス

[3] AKG Official Website, Q701 Quincy Jones Signature line Reference-Class Premium Headphones, https://www.akg.com/Q701.html, 2025年9月15日アクセス

[4] Equipboard, AKG Quincy Jones Signature Series Q701 - What To Know & Where To Buy, https://equipboard.com/items/akg-quincy-jones-signature-series-q701, 2025年9月15日アクセス, 現在価格84,999円

[5] Amazon.co.jp, Samson SR850 Professional Studio Reference Headphones, https://www.amazon.co.jp/Samson-SR850-プロフェッショナル-スタジオ-リファレンス/dp/B002LBSEQS, 2025年9月15日アクセス, 現在価格5,500円

[6] Equipboard, Superlux HD 668B Headphones, https://equipboard.com/items/superlux-hd-668b-headphones, 2025年9月15日アクセス, 現在価格4,800円から, THD <0.3% @1kHz/1V

[7] AKG Support, AKG Warranty Information, https://support.akg.com/us/en/howto/akg-warranty-information-us/000047567.html, 2025年9月15日アクセス

(2025.9.16)