Akliam PD5

総合評価
3.7
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
1.0
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.6

AK4493SEQ DAC搭載のポータブルDAC/アンプ。SNR 125dB、THD+N -115dBの測定性能と255mW@32Ω出力を実現する軽量機

概要

Akliam PD5は、AKM製AK4493SEQ DACチップと2基のRT6863オペアンプを搭載したポータブルUSB DAC/アンプです。重量21gの軽量設計ながら、3.5mmシングルエンドと4.4mmバランス出力の両方を備え、768kHz/32bit PCMとDSD512の高解像度音源に対応します。6種類のフィルター選択、60段階音量調整、ハイ/ローゲイン切り替えなど多彩な機能を搭載。測定性能は4.4mmバランス出力でSNR 125dB、THD+N -115dB、出力電力255mW@32Ωを達成しています。68 USD前後で販売されています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

AK4493SEQ DACチップは、公式仕様でSNR 123dB(2Vrms)、125dB(2.7Vrms)、THD+N -113dBという優秀な測定値を示します。PD5の実装では、3.5mm出力でSNR 120dB、4.4mmバランス出力で125dB、THD+N -108dB~-115dBを達成しており、測定結果基準表の透明レベル(SNR 105dB以上、THD 0.01%以下)を大幅に上回ります。出力電力は3.5mmで130mW、4.4mmバランスで255mW@32Ωと十分な駆動力を提供し、多くのヘッドホン・イヤホンで可聴な音質改善効果が期待できます。チャンネルクロストーク-72dB~-135dBも優秀で、ステレオイメージングの向上に寄与します。背景ノイズも極めて低く、高感度IEMでもヒスノイズが聞こえない優秀な設計です。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

AK4493SEQ DACチップは32bit対応の高性能DACで、768kHz PCMとDSD512対応という高い仕様を持ちます。RT6863オペアンプの採用により、iBasso DC04 Proと同等の増幅回路を実現しています。FPGA DSP処理機能内蔵、CT7601PR音声ブリッジコントローラーの採用など、先進的な技術構成です。しかし、基本的には既存のICを組み合わせた設計であり、独自開発技術は限定的です。6種類のフィルター機能やバランス出力の実装は評価できますが、iBasso DC04 ProのようなデュアルDAC構成や、より革新的なアプローチは見られません。業界標準的な技術水準は満たしているものの、技術的ブレークスルーは含まれていません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{1.0}\]

同等機能・測定性能を持つ競合製品との比較において、PD5は優れたコストパフォーマンスを示します。より高性能なiBasso DC04 Pro(119 USD)は、デュアルCS43131 DAC、280mW@32Ω出力、THD+N 0.00013%という仕様でPD5を上回りますが、価格はより高価です。一方、より安価なTempotec Sonata HD Pro(約39 USD)は4.4mmバランス出力を欠き、出力電力も60mW@32Ω程度と劣ります。Apple USB-Cドングル(9 USD)は測定性能こそ優秀ですが、出力が低くバランス出力もありません。3.5mm/4.4mm両出力、255mW@32Ωの駆動力、768kHz/DSD512対応、SNR 125dB、THD+N -115dBという全ての機能・測定性能要件を満たす製品では、PD5が実質的に最安となっています。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

Akliamは近年注目を集めている新興オーディオメーカーで、AliExpressに公式ストアを持ち、デスクトップDAC・アンプからポータブル機器まで幅広い製品ラインナップを展開しています。PD4 Plus、PD3などの前モデルも一定の評価を得ており、継続的な製品開発体制は確認できます。しかし、設立からの歴史が浅く、長期的な故障率やRMA対応実績は不明です。保証期間や修理体制についても明確な情報が限定的で、大手メーカーのような充実したサポート体制は期待できません。製品の初期不良率は低いとレビューされていますが、数年後の長期信頼性については未知数です。新興メーカーとしては平均的なサポートレベルと判断されます。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.6}\]

PD5の設計思想は科学的な音質改善を目指しており、基本的に合理的です。AK4493SEQ DACとRT6863オペアンプの組み合わせは測定性能の向上に直結し、バランス出力の実装も実用的です。測定データに基づく設計アプローチを採用し、THD+N -115dB、SNR 125dBという透明レベルの測定値達成を重視する姿勢は評価できます。しかし、6種類のフィルター機能については、実用的な効果に疑問符が付きます。また、多くのユーザーが所有するスマートフォンとAppleドングル(9 USD)の組み合わせでも高音質な音楽再生は可能であるため、バランス出力や高出力を必要としないユーザーにとっては、専用機器としての本機の存在価値は限定的になります。

アドバイス

Akliam PD5は、4.4mmバランス出力と255mW@32Ωの駆動力を必要とするユーザーに適したポータブルDAC/アンプです。SNR 125dB、THD+N -115dBという透明レベルの測定性能を68 USDで実現した点は評価に値し、中程度のインピーダンスを持つヘッドホンやバランス駆動対応イヤホンの能力を十分に引き出せます。ただし、より高い測定性能を求める場合は、iBasso DC04 Pro(119 USD、THD+N 0.00013%)への投資も検討すべきです。4.4mmバランス出力が不要な場合はTempotec Sonata HD Pro(約39 USD)など、より安価な選択肢で十分な場合もあります。Akliamの新興メーカーとしてのサポート面での不安は残りますが、現時点では同等の機能・測定性能を持つ製品の中で最も安価な選択肢の一つといえます。

(2025.7.28)