Arturia AudioFuse 16Rig

参考価格: ? 194850
総合評価
3.5
科学的有効性
0.9
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
0.5
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.8

16チャンネル入出力に対応した高密度オーディオインターフェース。ESS・Cirrus Logic製コンバーターと独立ミキサー2基を搭載し、エレクトロニックミュージックに特化した設計が特徴的

概要

Arturia AudioFuse 16Rigは2023年にリリースされた16チャンネル入出力対応の高密度オーディオインターフェースです。ESS・Cirrus Logic製の24bit AD/DAコンバーターを搭載し、最大192kHz/24bitに対応します。DC結合出力とMIDI制御可能な独立ミキサー2基を内蔵し、モジュラーシンセやエレクトロニック音楽制作に特化した設計となっています。デスクトップ・1Uラック両対応で、USB-C接続とUSBハブ機能により拡張性も確保されています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.9}\]

測定性能は透明レベルを達成しています。ライン入力のTHD+Nは-113dB(0.0002%相当)、出力は-106dB(0.0005%相当)で透明レベル基準の0.01%を大幅に下回ります。周波数特性は入力が20Hz-20kHz ±0.06dB、出力が±0.04dBと±0.5dBの透明基準内です。ダイナミックレンジは入力118dB、出力120dB、スピーカー出力126dBと全て105dB以上の透明レベルをクリアしています。マイクプリアンプのEINも-129.5dBuと優秀で、可聴域での音質劣化は実質的に排除されています。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

ESS・Cirrus Logic製コンバーターの採用は業界標準レベルです。DC結合出力によるCV送信対応、MIDI制御可能な独立ミキサー2基の内蔵、USB-Cハブ機能など、従来製品にない機能統合を実現しています。しかし基本的な変換技術自体は既存の高品質チップに依存しており、自社開発の独自技術は限定的です。NAMM 2025で発表された2.0アップデートでイマーシブオーディオ対応が追加されるなど、継続的な機能拡張は評価できます。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.5}\]

市場価格1,299 USDに対し、同等以上の機能を持つPreSonus Quantum 2626が599.95 USDで入手可能です。コストパフォーマンスは 599.95 USD ÷ 1,299 USD ≒ 0.46 となり、スコアは0.5となります。AudioFuse 16RigはDC結合出力や独立ミキサーなど独自の付加価値を持ちますが、基本的な多入出力オーディオインターフェースとしての価格競争力は低いと評価せざるを得ません。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

Arturiaは音楽機器メーカーとして一定の実績を持ち、サポート体制も標準的です。2025年1月に大規模な2.0ファームウェアアップデートをリリースし、継続的な製品改良姿勢を示しています。しかし、具体的な故障率データやMTBFは公表されておらず、RMEやMOTUのような長期間の信頼性実績には及びません。保証期間や修理体制についても業界平均レベルと判断されます。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.8}\]

エレクトロニックミュージック制作への特化は合理的な方向性です。DC結合出力によるモジュラーシンセ対応、独立ミキサー2基による非PC環境での音声処理、USB-Cハブ機能による機器統合など、現代的な制作環境のニーズに対応しています。測定性能も透明レベルを達成しており、音質向上の科学的根拠に基づいた設計です。ただし、一般的なレコーディング用途では過剰な機能もあり、用途を絞った設計思想は評価が分かれる点です。

アドバイス

AudioFuse 16Rigはモジュラーシンセやエレクトロニック音楽制作者に適した特化型インターフェースです。DC結合出力とMIDI制御ミキサーが必要な環境では代替困難な価値を提供しますが、一般的な多入力レコーディング用途ではPreSonus Quantum 2626の方がコストパフォーマンスに優れます。測定性能は申し分ないため、用途が合致すれば音質面での不満は生じないでしょう。購入前に自身の制作スタイルがエレクトロニック系に特化しているか、DC結合出力が実際に必要かを慎重に検討することを推奨します。

(2025.7.21)