Audio-Technica ATH-ADX5000

参考価格: ? 208500
総合評価
2.5
科学的有効性
0.4
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
0.1
信頼性・サポート
0.7
設計思想の合理性
0.5

高度な技術を投入したフラッグシップ開放型ヘッドホンだが、測定性能に問題があり、コストパフォーマンスが極めて劣る

概要

Audio-Technica ATH-ADX5000は、同社のフラッグシップ開放型ヘッドホンです。58mmタングステンコート振動板、パーメンデュール磁気回路、独自のコアマウントテクノロジーを採用し、日本で手組み生産されています。270gの軽量マグネシウムシャーシを採用し、装着感の向上を図っています。2017年発売で、Audio-Technicaの開放型ヘッドホンにおける技術的頂点を表す製品として位置づけられています。価格は208,500円です。

科学的有効性

\[\Large \text{0.4}\]

測定データから複数の問題が確認されます。高調波歪み率は90dBA時に1.5%、100dBA時に4.7%(20Hz)と、ヘッドホンの優秀基準0.05%を大幅に上回る問題レベルです。周波数特性は「鞍型応答」と評される不自然な特性を示し、1.3kHz付近のミッドレンジバンプと明瞭度に必要な2-3kHz帯域の欠如が報告されています。透明性を阻害する共振も複数確認されており、マスター音源への忠実度という観点で大きな課題があります。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

58mmタングステンコート振動板、パーメンデュール磁気回路、バッフル一体型ドライバー設計など、技術的には高度な要素を数多く採用しています。独自のコアマウントテクノロジーによる気流効率最適化、270gという軽量化の実現など、設計の独創性と技術水準は業界でも高いレベルにあります。手組み生産による品質管理も含め、純粋な技術力としては評価できる製品です。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.1}\]

同等以上の性能を持つHiFiMAN SUNDARAが25,700円で入手可能であり、計算式は25,700円÷208,500円=0.123となります。SUNDARAは測定性能において、周波数特性の平坦性(20Hz-600Hzで優れた平坦性)、低歪み特性、3kHz付近の適切なプレゼンス特性など、ADX5000の鞍型応答や高歪み率(90dBA時1.5%、100dBA時4.7%)を上回る透明性を実現しています。8倍以上の価格差を正当化する客観的性能差は確認できません。208,500円という価格設定は、現在の高性能ヘッドホン市場において極めて非合理的です。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.7}\]

Audio-Technicaは日本の老舗音響機器メーカーとして、充実したサポート体制を持っています。国内での修理対応、部品供給も安定しており、企業としての信頼性は高いレベルにあります。特定の故障率データは確認できませんが、同社の他製品における実績から、業界平均を上回る品質水準が期待できます。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.5}\]

高度な技術要素を投入していますが、最終的な測定結果が透明性を達成していない点が問題です。タングステンコーティングやパーメンデュール磁気回路などの技術投資が、聴覚上意味のある改善につながっていません。むしろ、より安価な製品が優れた測定性能を示している現実を考慮すると、技術の方向性に疑問があります。科学的に効果の確認できない物量投入による高価格化という、非合理的なアプローチが見受けられます。

アドバイス

ATH-ADX5000の購入を検討されている方には、HiFiMAN SUNDARAを強く推奨します。SUNDARAは25,700円と8分の1以下の価格でありながら、測定性能・周波数特性ともにADX5000を上回る透明性を実現しています。具体的には、SUNDARAの20Hz-600Hzでの平坦な特性、3kHzでの適切なプレゼンス特性、優れた低歪み性能は、ADX5000の鞍型応答特性や高歪み率を大幅に上回ります。208,500円の予算があれば、SUNDARAに加えて優秀なヘッドホンアンプやDACを組み合わせることが可能で、トータルの音響システムとしてはるかに優れた結果を得られます。Audio-Technicaのブランドや日本製へのこだわりがある場合でも、この価格差を正当化する客観的根拠は存在しません。高品質なヘッドホンをお求めの場合は、測定データに基づいた合理的な選択をされることをお勧めします。

(2025.7.26)