AüR Audio Aehta
ボーンコンダクション搭載のクアッドハイブリッドと8種のチューニングを備えるIEM。機能は多彩ながら第三者測定の開示が乏しい点に留意が必要です。
概要
AüR Audio Aehta は、ダイナミック/ボーンコンダクション/BA/EST を組み合わせたクアッドハイブリッド構成(2DD+2BCD+4BA+2EST)で、計8通りのスイッチ式チューニングを提供します。メーカー仕様は 20 Hz–70 kHz、6 Ω、感度 105 dB(@130 mV)、THD < 1%(@130 mV)です。価格は米国向けで 1059 USD、メーカー直販は 1,399 SGD の記載があります。なお「世界初の10ドライバー・クアッドブリッド」との表現がありますが、同様の10ドライバー・クアッドブリッド製品は既に存在します(例:Unique Melody MEST MKIII、1DD+4BA+4EST+1BCD、2023年)。[1][2][3][4]
科学的有効性
\[\Large \text{0.4}\]第三者の包括的な測定(FR/THD/IMD/遮音)公開は確認できません。メーカー公表値(20 Hz–70 kHz、6 Ω、105 dB @130 mV、THD < 1% @130 mV)はありますが、独立検証や試験条件の詳細は不足しています。6 Ωという極低インピーダンスは出力インピーダンスの高い機器で周波数特性の変動を招く可能性があり、70 kHz拡張は可聴性の根拠になりません。測定不明の基準 0.5 から、開示不足とマッチング懸念を考慮し 0.4 としました。[1][3]
技術レベル
\[\Large \text{0.7}\]Sonion のボーンコンダクション(37AAX007)やEST(EST65DB01)を含むクアッドハイブリッド、3Dプリント樹脂シェル、8モードのスイッチなど、実装の複雑さと部品選定は平均以上です。一方で第三者測定による実効的な優位性は未提示のため、先進性は評価しつつも満点とはしません。[1]
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.1}\]比較対象(同等以上・最安):Etymotic ER2SE。有線IEMとしてユーザー視点の機能は同等で、受動遮音は 35–42 dB(公称)および同社ラインの第三者測定で高遮音が確認され、周波数特性はB&K 5128計測でリファレンスフラット寄りです。米国公式価格 149.99 USD、Aehta 米国価格 1059 USD。149.99 USD ÷ 1059 USD = 0.141… → 0.1。国内価格の目安は Aehta 156,000円(1059 USD相当)、ER2SE 約 20,530–22,800円(参考)です。[CPはUSDで計算し日英で整合][3][5][6][7][8][9]
(同等性注記:受動遮音の高さとリファレンスフラットなFRというカテゴリー適合指標で同等以上を満たします。ドライバー数など内部構成はユーザー可視の性能差を保証しないため比較軸に含めません。)
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.5}\]AüRは世界無料配送(FedEx)と6ヶ月の限定保証を掲げています。小規模メーカーにつき長期故障率や修理体制データは限定的です。本製品はアナログIEMのためファームウェアは非該当です。平均的評価としました。[2][1]
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.3}\]多方式ドライバーやスイッチは、測定上の透明性向上につながるなら合理的です。しかし Aehta の6 Ωという設計選択は、アンプ互換性を狭め、出力インピーダンスを持つ機器で周波数応答変化を招きやすくします。可聴変化を抑えるための工学的指針として負荷インピーダンスは出力インピーダンスの約8倍以上が用いられますが、6 Ωはその余裕を小さくします。加えて 70 kHz 帯域や「世界初」訴求など、可聴上の利益を裏づける独立測定が示されていない点も減点要因です。よってスコアを引き下げました。[1][10][4]
アドバイス
新技術や音色切替を重視する方に向きます。測定に基づく忠実度を優先する場合は、第三者測定の不足が主なリスクです。遮音と基準的FRが明確な Etymotic ER2SE/ER4SR などの選択肢を起点に比較し、Aehta は低出力インピーダンスの機器と組み合わせることを推奨します。独立測定の公開後に再検討すると安心です。[5][6][7]
参考情報
[1] AüR Audio「Æhta 製品ページ」https://www.auraudio.store/product-page/%C3%A6hta-distro-pack (参照日: 2025-08-21)
[2] AüR Audio「Shipping & Warranty」https://www.auraudio.store/shipping-warranty (参照日: 2025-08-21)
[3] Head-Fi「AüR Audio Aehta — Showcase」https://www.head-fi.org/showcase/a%C3%BCr-audio-aehta.27301/ (参照日: 2025-08-21、USD価格の言及あり)
[4] Unique Melody(公式)「MEST MKIII CF」https://www.uniquemelody.org/products/mest-mkiii-1 (参照日: 2025-08-21)
[5] Etymotic(公式)「ER2SE」https://etymotic.com/product/er2se-earphones/ (参照日: 2025-08-21)
[6] SoundGuys「Etymotic ER2SE review」https://www.soundguys.com/etymotic-er2se-review-29943/ (B&K 5128によるFR測定)
[7] Rtings「Etymotic ER4XR Headphones Review」https://www.rtings.com/headphones/reviews/etymotic/er4xr (受動遮音の第三者例)
[8] 価格.com「Etymotic Research ER2SE」https://kakaku.com/item/K0001141292/ (参照日: 2025-08-21)
[9] フジヤエービック「ER2SE 商品ページ」https://www.fujiya-avic.co.jp/shop/g/g200000046041/ (参照日: 2025-08-21)
[10] NwAvGuy「Headphone & Amp Impedance」https://nwavguy.blogspot.com/2011/02/headphone-amp-impedance.html (1/8ルールの説明)
(2025.8.21)