Bowers & Wilkins 607 S3

総合評価
3.5
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
0.4
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
0.8

B&Wの新世代600シリーズの最小モデル。チタンドームツイーターとContinuumコーンの組み合わせで、11万円のスピーカーとしては技術的洗練度は高い。同等性能のQ Acoustics 3020i(4万円)と比較すると、コストパフォーマンスは限定的である。

概要

Bowers & Wilkins 607 S3は、英国B&Wの600シリーズ第3世代における最小モデルです。25mmチタンドームツイーターと16.5cmコンティニュームコーンドライバーを搭載した2ウェイバスレフ型スピーカーで、11万円という価格帯では技術的な洗練度は確かに高いものがあります。同社の800シリーズで培われたコンティニュームコーン技術を下位モデルに展開し、従来のアルミニウムからチタンへの材質変更により高域特性の向上を図っています。寸法は300×166×235mm、重量4.7kgと、このクラスとしては標準的なサイズです。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

測定データによると、周波数特性は52Hz-28kHzの範囲をカバーし、感度84dBと比較的駆動困難な設計となっています。チタンドームツイーターとコンティニュームコーンの組み合わせは、従来のアルミニウムドームとペーパーコーン設計と比較して、確実に測定可能な差異を生み出しています。特に、高域での歪み特性とトランジェント応答において、ブラインドテストでも識別可能な改善が確認されています。ただし、この価格帯において革新的とは言えず、同等の測定性能を達成する競合製品が存在することも事実です。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

技術的には、B&Wの上位機種である800シリーズで開発されたコンティニュームコーン技術を下位モデルに展開している点は評価できます。チタンドームツイーターも従来のアルミニウム製から材質を変更し、理論的には高域特性の改善に寄与しています。しかし、基本的な2ウェイ設計は業界標準であり、特に革新的な技術的ブレークスルーは見られません。エンクロージャー設計も従来的なアプローチを踏襲しており、技術レベルとしては業界平均をやや上回る程度の水準に留まります。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.4}\]

11万円という価格に対して、同等の測定性能を持つ2ウェイブックシェルフスピーカーとして、Q Acoustics 3020i(4万円、周波数特性64-30kHz、感度88dB)が最も安価な選択肢として存在します。両製品の測定データを比較すると、607 S3は周波数特性52Hz-28kHzで感度84dB、3020iは周波数特性64-30kHzで感度88dBとなっています。3020iの方が駆動しやすく、607 S3の方が低域が若干拡張されていますが、実用的な性能差は限定的です。さらに、ELAC Debut 2.0 B6.2(5.5万円)やKEF Q150(8万円)など、他の同等性能製品も存在します。計算式:CP = 4万円 ÷ 11万円 = 0.36 ≈ 0.4。同等機能性能を持つ製品が1/3以下の価格で入手可能であることを考慮すると、コストパフォーマンスは限定的な水準にあります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

B&Wは75年以上の歴史を持つ老舗メーカーで、製品の信頼性は業界でも高く評価されています。保証期間は5年間と十分で、世界各地にサービスセンターを展開しています。部品供給も長期間にわたって行われており、修理体制も整備されています。ただし、アフターサービスのレスポンス時間や技術サポートの質については、一部のユーザーから改善要望が出されているのも事実です。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.8}\]

607 S3の設計思想は、パッシブスピーカーとしての基本に忠実でありながら、技術的な洗練を追求した合理的なアプローチです。11万円という価格帯において、コンティニュームコーン技術やチタンドームツイーターなどの先進技術を投入し、測定性能の向上を図っています。バスレフ設計の採用により低域の拡張を実現し、デュアルターミナル設計によりバイワイヤリングにも対応しています。パッシブスピーカーとしての設計思想は、アンプの選択自由度を提供し、システム全体の柔軟性を確保するという点で合理的です。

アドバイス

607 S3は11万円という価格帯において、技術的洗練度と音質のバランスが良好な製品です。同等性能の競合製品としては、Q Acoustics 3020i(4万円)が最も安価で、その他にもELAC Debut 2.0 B6.2(5.5万円)やKEF Q150(8万円)など複数の選択肢があり、コストパフォーマンスを重視する場合は比較検討が必要です。購入を検討する際は、まず適切なアンプとの組み合わせを確認してください。感度が84dBと低いため、十分な出力を持つアンプが必要です。試聴環境では、KEF LS50 Meta(19万円)やMonitor Audio Silver 50(12万円)などとの比較試聴を行い、価格差に見合う性能差を確認することをお勧めします。

(2025.7.8)