Bowers & Wilkins 801D4

参考価格: ? 7040000
総合評価
3.3
科学的有効性
0.7
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
0.2
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
0.8

高度な技術と優れた測定性能を持つフラッグシップスピーカーだが、同等性能をより安価に実現する代替品の存在により、コストパフォーマンスは極めて低い

概要

Bowers & Wilkins 801D4は、同社800シリーズDiamondの最上位フラッグシップスピーカーです。42年の歴史を持つ801シリーズの最新世代として、ダイヤモンドドーム・ツイーター、Matrixブレーシング、高度なクロスオーバー設計などの先進技術を投入。多くのレコーディングスタジオでリファレンスモニターとして採用される実績を持ちます。周波数レンジは13Hz-35kHz(-6dB)、感度90dB/2.83V/m、公称インピーダンス8Ω(最小3.0Ω)の3ウェイ設計。日本市場価格は704万円(ペア、税込、グロスブラック)です。

科学的有効性

\[\Large \text{0.7}\]

測定性能は高級スピーカーとして優秀な水準です。高調波歪率は30Hz-20kHzで1%未満、100Hz-20kHzで0.3%未満を実現。これはスピーカーの基準では優秀レベル(0.1%以下)には届かないものの、問題レベル(1%以上)は大幅にクリアしています。周波数特性は13Hz-35kHz(-6dB)、15Hz-28kHz(±3dB)で、±3dB範囲内の良好な特性を示します。感度90dB/2.83V/mは高効率で、最小インピーダンス3.0Ωは駆動可能な範囲です。Stereophile誌の詳細測定でも可聴閾値内での良好な性能が確認されており、音響工学的に有意な改善をもたらす製品です。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

業界最高水準の自社開発技術を多数投入しています。ダイヤモンドドーム・ツイーターは極めて高い剛性と軽量化を実現し、理想的な周波数特性を追求。Matrixブレーシング技術による筐体共振の抑制、400Hzと4kHzでの精密なクロスオーバー設計など、独創的かつ高度な技術が投入されています。これらの技術は測定可能な性能向上に直結しており、単なるOEM設計ではない自社開発の先進性を示します。42年間継続的に改良されてきた設計思想と最新技術の融合により、現在でも業界最高水準の技術レベルを維持しています。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.2}\]

極めて低いコストパフォーマンスです。801D4の価格は704万円(ペア)ですが、同等以上の機能・測定性能を持つ代替品としてTekton Design Ulfberht(約140万円/ペア)、Genelec 8361A(約150万円/ペア)が存在します。これらは20Hz-20kHz以上の周波数特性、95dB以上の高感度、0.3%未満の低歪率を実現し、801D4と同等のユーザー向け機能を提供します。コストパフォーマンス計算: 代替品平均価格(約145万円) ÷ 704万円 ≈ 0.206、四捨五入で0.2となります。この価格差は約5倍のプレミアムを要求しており、客観的な性能対価格比では正当化が困難です。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

業界最高水準の信頼性とサポート体制です。Bowers & Wilkinsは75年以上の歴史を持つ老舗メーカーで、世界規模での正規代理店網とアフターサービス体制を確立しています。多くのプロフェッショナルスタジオでの長期使用実績により、高い耐久性が実証されています。保証期間も業界標準を上回り、部品供給や修理対応も長期間継続されます。ただし、この価格帯の製品として当然期待される水準であり、特別に突出した要素はありません。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.8}\]

測定性能の向上を重視した合理的な設計思想です。ダイヤモンド素材の採用は理論的根拠に基づく剛性・軽量化の追求であり、Matrixブレーシングによる共振抑制も音響工学的に合理的なアプローチです。非科学的な主張や測定不能な効果の宣伝は行っておらず、客観的な性能改善に焦点を当てた開発姿勢は評価できます。ただし、同等の測定性能を大幅に安価に実現する技術的手法が存在する現状では、専用オーディオ機器として高額化する必然性は限定的です。コスト効率を度外視した物量投入的な側面もあり、完全に合理的とは言えません。

アドバイス

購入検討者は慎重な判断が必要です。801D4は確かに優秀な測定性能と高い技術レベルを持つ製品ですが、同等の音響性能をTekton Design Ulfberht、Genelec 8361Aなどで約5分の1の価格で実現可能です。約550万円の価格差は、ブランド価値や外観デザイン、所有満足感への対価と考えるべきです。純粋に音質改善のみを求める場合、代替品での投資効率が優れています。ただし、プロフェッショナル用途やブランドステータスを重視する場合、信頼性と技術的完成度は最高水準です。購入前に上記代替品との直接比較試聴を強く推奨します。客観的な性能差と価格差を天秤にかけ、コストパフォーマンスを冷静に評価することが重要です。

(2025.7.26)