Denon AVR-X1800H

参考価格: ? 72600
総合評価
3.3
科学的有効性
0.7
技術レベル
0.5
コストパフォーマンス
0.9
信頼性・サポート
0.7
設計思想の合理性
0.5

7.2チャンネル対応のAVレシーバー。測定性能は良好ですが、技術的には標準的。より安価な競合製品が存在するため、コストパフォーマンスは最高評価には及びません。

概要

Denon AVR-X1800Hは、7.2チャンネル対応のAVレシーバーです。80W(8Ω、20Hz-20kHz、0.08% THD、2ch駆動)の出力をを持つディスクリート構成のパワーアンプを搭載し、8K Ultra HD、HDR10+、eARCといった最新の映像フォーマットをサポートします。32ビットD/Aコンバーターを搭載し、ハイレゾ音源にも対応。HEOSによるワイヤレスストリーミング機能や、Audyssey MultEQ XTによる室内音響補正機能も備え、現代のホームシアターの中核を担う十分な機能を備えています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.7}\]

AVR-X1800Hの測定性能は全体的に良好です。THD+Nは0.08%(定格出力時、2ch駆動)で問題レベル(0.1%)を下回り、優秀な数値を示します。S/N比は98dB(IHF-A加重、ダイレクトモード)で、透明レベル(105dB以上)には届かないものの、問題レベル(80dB以下)を大きく上回る良好な値です。周波数特性は10Hz-100kHz(+1/-3dB、ダイレクトモード)で、理想的な±0.5dBには及ばないものの、問題となる±3.0dBは十分にクリアしています。ただし、クロストークや混変調歪率(IMD)などの詳細な実測データは公開されておらず、これらの指標での厳密な評価は困難です。

技術レベル

\[\Large \text{0.5}\]

技術的には業界平均水準の設計を採用しています。ディスクリート構成のClass ABパワーアンプは、このクラスの製品では標準的な選択であり、技術的な革新性や独自性は見られません。搭載されているD/Aコンバーターも最高級品ではなく、Audyssey MultEQ XT室内補正技術も同社の上位バージョンに比べると機能が限定的です。HEOS連携や音声アシスタント対応などの機能は現代的ですが、これらは音質性能に直接寄与する技術ではありません。全体として、確立された技術を堅実にまとめた、保守的な技術アプローチと言えます。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.9}\]

実勢価格72,600円(2025年8月時点)に対し、ほぼ同等の機能・性能を持つ競合製品としてOnkyo TX-NR5100(実勢価格69,300円)が存在します。TX-NR5100も同じく7.2チャンネル、8K映像信号、Dolby Atmosに対応しており、出力スペックも同等です。ユーザーが得られる中核的な機能に大きな差はありません。本製品のコストパフォーマンスは、以下の計算に基づき評価されます。 69,300円 ÷ 72,600円 = 0.954... この結果から、より安価な代替品が存在するため、スコアは0.9となります。最高のコストパフォーマンスとは言えませんが、非常に僅差であり、価格性能比は高いレベルにあります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.7}\]

Denonブランドは100年以上の歴史を持つ確立されたオーディオメーカーであり、業界における信頼性は高い水準にあります。本製品には3年間の部品・技術保証が提供され、これは多くの競合製品の1〜2年保証を上回ります。D&M Holdings傘下での品質管理体制は安定的で、国内のサポート体制も整備されています。具体的な故障率などのデータは公開されていませんが、業界平均を上回る保証期間と企業の安定性から、平均以上の評価となります。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.5}\]

設計思想は科学的に合理的ですが、革新性に欠けます。ディスクリート構成のアンプやAudyssey MultEQ XTによる音場補正は、測定性能の向上に寄与する合理的なアプローチです。一方で、現代ではPCと高性能な多チャンネルDAC/アンプの組み合わせによって、より柔軟で高効率なシステムを構築することも可能です。汎用機器で同等以上の機能を実現できる時代において、AVレシーバーという専用機の存在意義は相対的に低下しています。オカルト的な要素はなく、測定値を重視する姿勢は評価できますが、設計思想の先進性は限定的です。

アドバイス

AVR-X1800Hは、7.2チャンネルのホームシアターシステムを堅実な品質で構築したいユーザーに適した製品です。測定性能は良好で信頼性も高いですが、コストパフォーマンスを最優先するならば、ほぼ同等の機能・性能をより低価格で提供するOnkyo TX-NR5100が有力な代替候補となります。購入前には、両製品の最新価格と、ストリーミング機能(HEOS対Chromecast等)の細かな違いを比較検討することをお勧めします。オーディオ性能のみを追求し、映像機能が不要な場合は、PCを核としたシステム構築も視野に入れると良いでしょう。

(2025.8.2)