Denon AVR-X2800H

参考価格: ? 85000
総合評価
3.5
科学的有効性
0.6
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
0.7
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
0.7

95W×7chのクラスAB離散アンプを搭載したミドルクラスAVレシーバー。Dolby Atmos/DTS:X対応、8K Ultra HD対応でホームシアター構築に必要な機能を網羅している。

概要

Denon AVR-X2800Hは2022年発売の7.2chミドルクラスAVレシーバーです。95W×7chのクラスAB離散パワーアンプを搭載し、Dolby Atmos、DTS:X、8K Ultra HD対応など現代のホームシアターに求められる機能を包括的に搭載しています。独自のAL32プロセッシング技術による高解像度音声処理とAudyssey MultEQ XT自動音場補正により、中級者から上級者まで満足できる音響性能を実現している製品です。HEOS内蔵によりストリーミング対応も万全で、総合的なAVシステムの中核となる設計が施されています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.6}\]

AVR-X2800Hの測定性能は高調波歪率0.08%(8Ω、20Hz-20kHz、2ch駆動時)を記録しており、透明レベルと問題レベルの間の中間値です。周波数特性は20Hz-20kHz範囲で公称されており、標準的な可聴域をカバーしています。クラスAB離散アンプ設計により95W×7chの実用的な出力を確保し、一般的なホームシアタースピーカーを十分に駆動できます。AL32プロセッシング技術は24bit/192kHz対応の高解像度処理を提供しますが、科学的に意味のある改善効果は限定的です。Audyssey MultEQ XTの自動音場補正機能は実測による室内特性改善に寄与します。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

離散構成クラスABパワーアンプは設計の堅実性を示していますが、技術的新規性は限定的です。AL32プロセッシング技術は同社の既存技術の応用であり、業界標準レベルの信号処理機能です。8K/60Hz、4K/120Hz対応のHDMI回路は現行世代として適切ですが、先進性は認められません。HEOS内蔵ストリーミング機能は利便性向上に寄与しますが、音質面での技術貢献は軽微です。全体として業界平均を上回る堅実な設計ですが、革新的な技術要素は見当たりません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.7}\]

現在の市場価格85,000円に対し、同等機能を持つDenon AVR-X1800H(59,319円)が存在します。X1800Hは80W×7ch出力で基本機能は同等であり、15Wの出力差は一般的な使用環境では実用上の差は軽微です。計算式:59,319円 ÷ 85,000円 = 0.698となり、四捨五入で0.7の評価となります。ただし、X2800Hの離散パワーアンプ設計とより充実した端子構成は価格差に見合う差別化要素として認められます。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

Denonは創業110年を超える老舗オーディオメーカーとして確立したサポート体制を有しています。AVレシーバー分野では長年の製造実績があり、一般的な故障率は業界平均レベルです。3年保証が標準で提供され、全国的なサービス網も整備されています。ファームウェア更新対応も適切に実施されており、製品寿命期間中の機能改善が期待できます。ただし、近年の電子機器として特に優秀な信頼性指標は確認されていません。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.7}\]

クラスAB離散アンプ採用は音質と効率のバランスを取った合理的選択です。8K対応、Dolby Atmos対応など現行規格への対応は適切で、将来性も考慮されています。しかし、DAPやネットワークストリーマーと異なり、AVレシーバーは汎用機器による代替が困難な製品カテゴリーであり、専用機器としての存在意義は明確です。AL32プロセッシングなど一部の技術は科学的効果が限定的ながら、全体的には測定可能な性能改善に向けた設計思想が貫かれています。オーディオオカルト的要素は排除されており、合理的なアプローチが取られています。

アドバイス

AVR-X2800Hは7.2chホームシアターシステムの中核として安定した性能を提供する製品です。95W×7chの出力は30畳程度までの部屋で十分な音圧を確保でき、Dolby Atmosによる立体音響も適切に再現できます。ただし、同等機能のX1800Hとの価格差25,681円を正当化するには、離散アンプによる音質向上効果を実感できる環境が必要です。高効率スピーカーとの組み合わせでは出力差の恩恵は限定的になるため、能率85dB以下のスピーカーを使用する場合に真価を発揮します。初回設置時のAudyssey自動音場補正は必ず実行し、手動調整と併用することで最良の結果が得られます。ストリーミング機能はHEOS対応により音楽配信サービスとの連携も良好で、総合的なエンターテインメントハブとして機能します。

(2025.8.4)