Denon AVR-X4300H

参考価格: ? 69000
総合評価
2.4
科学的有効性
0.6
技術レベル
0.3
コストパフォーマンス
0.7
信頼性・サポート
0.3
設計思想の合理性
0.5

既に生産終了となった9.2チャンネルAVレシーバー。現行機種と比較して技術的に陳腐化が進んでいるが、中古市場における同世代機との比較では一定の価値を持つ。

概要

Denon AVR-X4300Hは2016年に発売された9.2チャンネルAVレシーバーです。125W×9チャンネルの出力を持ち、Dolby AtmosやDTS:Xなどの立体音響フォーマットに対応しています。HEOS Built-inによるマルチルーム機能も特徴でしたが、現在は生産終了となっており公式サポートも限定的です。HDMI規格や音場補正技術など、現在の技術水準から見ると多くの面で陳腐化が進んでいます。

科学的有効性

\[\Large \text{0.6}\]

測定性能は透明レベルには達していません。公式スペックのTHD 0.05%(8Ω, 2ch駆動時)は、問題レベル(0.1%以上)と透明レベル(0.01%以下)の中間に位置します。S/N比 102dBも透明レベル(105dB以上)をわずかに下回ります。周波数特性も現代の最高水準の機器が達成する±0.1dBのような精度は期待できません。現在の最新デジタル技術と比較すると、可聴域での性能は平均的なレベルに留まります。

技術レベル

\[\Large \text{0.3}\]

2016年の設計であり、現在の技術水準から大きく取り残されています。搭載されている音場補正技術はAudyssey MultEQ XT32であり、現行のDirac Liveのようなより高度な補正技術は搭載されていません。また、HDMI 2.0a対応のため8K信号には非対応です。9.2チャンネル処理能力は当時としては先進的でしたが、現在では技術的優位性はほぼ失われています。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.7}\]

中古市場での実勢価格が約69,000円であるのに対し、同世代のライバル機であるYamaha RX-A2060などが中古市場で約50,000円から見つかります。RX-A2060は9.2chアンプやHDMI 2.0a対応など、本機とほぼ同等の機能・性能を備えています。ポリシーに基づきコストパフォーマンスを計算すると 50,000円 ÷ 69,000円 ≒ 0.72 となります。より安価な代替品が存在するため、コストパフォーマンスは最高評価には至りません。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.3}\]

既に生産終了品であり、メーカーによるファームウェアの更新や長期的な修理サポートは期待できません。Denon製品として標準的な耐久性は持っていますが、経年劣化による故障リスクや、故障時の部品調達の困難さは避けられません。長期使用を前提とした新規購入の場合、サポート面でのリスクは高いと言わざるを得ません。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.5}\]

当時のAVレシーバーとして標準的な設計思想であり、特に非合理な側面はありませんが、先進性も限定的です。立体音響への対応など、音質改善に寄与する機能は一通り備えていますが、現在の基準から見ると物足りない部分も多く見られます。専用機器としての価値はありますが、技術の進歩を考慮すると、その設計は時代相応のものと言えます。

アドバイス

AVR-X4300Hは中古市場でのみ入手可能ですが、技術的な陳腐化とサポート終了のリスクを十分に考慮する必要があります。同等の機能をより安価に中古で入手できる選択肢も存在します。もし最新のHDMI規格(8K対応)や、より高度な音場補正技術(Dirac Liveなど)を求めるのであれば、価格は上がりますがOnkyo TX-RZ50(実勢価格 約180,000円)のような現行機種の検討を強く推奨します。本機は、9.2ch環境を安価に構築したいという限られたニーズ以外では、積極的に推奨できる製品ではありません。

(2025.7.27)