Denon AVR-X4500H

参考価格: ? 90000
総合評価
3.7
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
1.0
信頼性・サポート
0.4
設計思想の合理性
0.8

2018年発売のパワフルな9.2チャンネルAVレシーバー。IMAX Enhancedに対応し、11.2chプロセッシングを提供。中古市場で約90,000円で入手可能であり、THD 0.05%の優れた性能とコストパフォーマンスを両立しているが、生産終了品としてのリスクも存在する。

概要

Denon AVR-X4500Hは2018年にリリースされた9.2チャンネルAVレシーバーで、コンシューマー機で初めてIMAX Enhanced対応を実現した製品の一つとして注目されました。チャンネルあたり125Wの出力と11.2チャンネルプロセッシング能力により、5.2.4や7.2.2といった高度なDolby Atmos構成をサポートします。包括的な4K HDR対応、内蔵HEOSストリーミングプラットフォーム、Audyssey MultEQ XT32ルーム補正を搭載。後継機は登場していますが、現代のAVレシーバーの標準機能を確立した、現在でも有能な中上級機です。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

AVR-X4500Hは優れた測定性能を示します。定格125W出力(8Ω、2ch駆動時)において全高調波歪率(THD)0.05%を実現しており、これは可聴劣化の閾値0.1%を大幅に下回る優秀な値です。周波数特性は20Hz-20kHzの全域を良好な直線性でカバーします。S/N比は102dBと良好ですが、最高水準(105dB以上)にはわずかに及びません。しかし、第三者機関による測定でも複数チャンネルでの安定した性能が確認されており、科学的に妥当な設計に基づく堅実なエンジニアリングがうかがえます。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

AVR-X4500Hは2018年当時、複数の先進技術を採用していました。IMAX Enhanced対応の先駆けであり、IMAXコンテンツに最適化された体験を提供します。高解像度フィルターを持つAudyssey MultEQ XT32ルーム補正、DSD 5.6MHzやPCM 24bit/192kHzまでのハイレゾ音源サポートも特徴です。HDMIは4K/60Hz、HDR10、Dolby Visionに加え、HDMI 2.1の機能であるeARCにも対応。ただし、現行機が備える完全なHDMI 2.1帯域幅(4K/120Hz等)や高度なゲーミング機能は搭載していません。11.2チャンネルプロセッシング構成は、当時として先見性のある設計でした。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{1.0}\]

現在の中古市場において、本機は約90,000円程度で取引されています。9.2チャンネルアンプ、11.2チャンネルプロセッシング、IMAX Enhanced対応といった本機が提供する機能と性能を総合的に考慮すると、これは同等の体験を実現する上で最も安価な選択肢の一つです。例えば、同様以上の機能を持つ現行製品であるOnkyo TX-RZ50の新品価格が約180,000円であることを踏まえると、本機の価格的な優位性は明らかです。安価な代替品が見当たらないため、ポリシーに基づきコストパフォーマンスは最高評価の1.0となります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.4}\]

生産終了品であるため、メーカーによるファームウェアの更新や長期的な修理サポートは期待できません。Denon製品として標準的な耐久性は持っていますが、発売から年数が経過しており、経年劣化による故障リスクは避けられません。特にこの世代のレシーバーに散見されるHDMI基板の故障事例も報告されており、修理時の部品調達も困難になる可能性があります。2年古いX4300Hよりはリスクが低いものの、長期使用を前提とするにはサポート面での懸念は大きいと言えます。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.8}\]

AVR-X4500Hは、技術重視の合理的な設計思想を体現しています。Audyssey MultEQ XT32による測定ベースのルーム補正、科学的に検証されたイマーシブオーディオへの包括的な対応、そして堅実なデジタル信号処理への注力は、証拠に基づくエンジニアリングを示しています。11.2チャンネルプロセッシングは将来の拡張性を見据えつつ、実用的な9.2チャンネルアンプを提供する合理的な構成です。設計はオーディオに関する非科学的な俗説を排し、測定可能な改善をもたらす実証済み技術を優先しています。

アドバイス

AVR-X4500Hは、最新のゲーミング機能を必須とせず、高度なサラウンドプロセッシングを持つ有能な9.2チャンネルレシーバーを合理的な価格で求めるユーザーにとって、今なお優れた選択肢です。特に5.2.4や7.2.2のDolby Atmosシステムを構築したい映画中心のホームシアターに適しています。現在の中古価格は、新品レシーバーに対する魅力的な代替案となります。ただし、4K/120HzやVRRといった最先端のゲーミングサポートを優先するユーザーは、AVR-X4700H以降のモデルを検討すべきです。購入前にはファームウェアが最新に近いかを確認し、今後の更新は期待できないことを理解しておく必要があります。

(2025.7.27)