Denon DNP-720SE
2012年発売のネットワークストリーマー。技術仕様は透明レベルを満たすが現代的機能に欠ける。中古市場では妥当なコストパフォーマンスを示す。
概要
Denon DNP-720SEは2012年に発売されたネットワークオーディオプレーヤーです。AirPlay対応、FLAC 96kHz/24bit再生、インターネットラジオ機能を搭載し、当時としては先進的な機能を提供していました。しかし、発売から13年が経過した現在、技術的な陳腐化が著しく、特に内蔵DACの性能問題が深刻です。現行中古市場価格は約30,000-40,000円で、同等機能を同等またはより安価で実現できる現代的な選択肢が存在します。
科学的有効性
\[\Large \text{0.6}\]公式仕様では周波数特性2Hz-20kHz ±0.2dB、THD+N 0.003%、S/N比110dBを示し、測定上は透明レベル基準を満たしています。これらの仕様は透明な再生に必要なパラメータ内に収まっています。しかし、2012年の設計のため、現代のストリーマーの高度なデジタル処理能力や現代的接続機能には欠けています。WiFi実装は旧規格を使用しており、一部のネットワーク環境で安定性の問題が報告されています。光デジタル出力使用時には主にトランスポートとして機能し、外部DACと組み合わせることでパフォーマンス向上が可能です。
技術レベル
\[\Large \text{0.3}\]2012年当時としては96kHz/24bit FLAC対応やAirPlay搭載は先進的でしたが、現在の技術水準から評価すると大幅に劣ります。内蔵DACの設計は既製品の組み合わせレベルで、独自性や技術的優位性は認められません。動作速度も現代基準では非常に遅く、USBメモリ起動に1分、低速メモリでは3分を要します。フォルダ階層のナビゲーションも困難で、ユーザーインターフェースの技術的完成度は低水準です。WiFi技術も当時の水準に留まっており、現代の高速・安定接続技術とは大きな格差があります。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.9}\]現行中古市場価格約35,000円に対し、WiiM Pro Plus(32,000円)が同等以上の機能を提供します。WiiM Pro PlusはAKM 4493SEQ DACを搭載し、768kHz PCM/DSD512対応、WiFi 6対応、より高速な動作速度を実現しています。これは現在市場で最も低価格な同等機能製品を表します。計算式:32,000円 ÷ 35,000円 = 0.91となり、コストパフォーマンススコアは0.9となります。DNP-720SEは中古市場において現代の代替手段と比較して妥当な価値を提供します。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.5}\]Denonブランドとしての基本的な品質は確保されており、重大な故障報告は少数です。しかし、2012年発売の旧世代機種のため、ファームウェア更新は既に終了しており、新しいストリーミングサービスへの対応は期待できません。保証期間も新品購入時の標準的な1年間のみで、長期サポートの観点では現行機種に劣ります。修理対応についても部品調達の問題から将来的な継続性に懸念があります。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.3}\]2012年当時のネットワークオーディオ黎明期においては先駆的な製品でしたが、現在の視点では非合理な側面が目立ちます。最も問題となるのは、専用ストリーマーとして高価格を設定しながら、より安価なPC+DAC構成や現代的なストリーマーに性能・機能面で劣ることです。内蔵DACの問題により、結局外部DACが必要となる設計は根本的に非合理です。現代的なソフトウェア処理やAI技術の活用もなく、ハードウェア依存の旧来的アプローチに留まっています。ユーザーインターフェースの複雑さも合理的設計とは言えません。
アドバイス
DNP-720SEの購入は推奨できません。同じ予算で現代的な選択肢を検討することを強く推奨します。WiiM Pro Plus(32,000円)やWiiM Ultra(48,000円)は、より高い音質、豊富な機能、将来のアップデート対応を提供します。最大の価値を求めるユーザーには、一般的な中古DNP-720SEユニットより低価格で優れた機能を提供するWiiM Pro Plusがおすすめです。既に本機を所有している場合は、光デジタル出力を使用して外部DACと組み合わせることで音質改善は可能ですが、その場合でも現代的なストリーマーへの買い替えが合理的選択となります。オーディオ機器は技術進歩が著しい分野であり、13年前の製品に固執する理由はありません。
(2025.7.21)