Denon PMA-1700NE
70W×2出力のプリメインアンプ。USB-DAC、MM/MC対応フォノイコライザーを内蔵し、Advanced AL32 Processing Plusによる高解像度音源対応を特徴とする。測定性能は優秀だが、同等機能をより低価格な組み合わせで代替可能でコストパフォーマンスは低い。
概要
Denon PMA-1700NEは、70W×2(8Ω)出力のプリメインアンプです。2022年に発表された本機は、USB-DAC機能とMM/MC対応フォノイコライザーを内蔵し、Advanced AL32 Processing Plusによる最大11.2MHz DSD、384kHz/32bitPCM対応を実現しています。白河工場での日本製造により、同社の音響技術の集大成として位置づけられています。超高電流シングルプッシュプル回路の採用により、4Ω負荷時には140W出力を実現し、アナログとデジタル双方の音源に対応する包括的なソリューションを提供します。
科学的有効性
\[\Large \text{0.8}\]実測データによる評価では優秀な性能を示しています。高調波歪率(THD)は1W・10W出力時で200Hz-1kHz帯域において0.0007%、20kHzで0.01%を記録し、63W出力時でも中域0.0015%、20kHz 0.02%に留まります。公称スペックの0.07%(8Ω、70W)を大幅に上回る実性能です。SN比は107dB(CD/LINE入力)、89dB(MM)、74dB(MC)と透明レベルをクリアしています。周波数特性や歪率特性は透明レベルを満たしており、最新デジタル機器との横並び比較でも科学的有効な音質改善効果が期待できます。
技術レベル
\[\Large \text{0.7}\]Advanced AL32 Processing Plusによる高解像度デジタル処理と、超高電流シングルプッシュプル回路による電力増幅技術を組み合わせた設計です。USB-DAC部は最大11.2MHz DSD、384kHz/32bit PCM対応により、現行デジタル音源規格への包括的対応を実現しています。MM/MC両対応のフォノイコライザー内蔵により、アナログレコード再生にも配慮されています。ダンピングファクターの高い設計により、スピーカー制御能力も確保されています。ただし、基本的な回路トポロジーは従来技術の延長線上にあり、革新的な技術的breakthrough は見られません。製造品質の高さと安定した設計思想は評価できますが、技術的独創性の面では業界平均水準の範囲内です。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.4}\]市場価格148,000円に対し、同等機能を持つ単一製品としてCambridge Audio CXA81(約150,000円、80W×2出力、USB-DAC内蔵、フォノステージ非搭載)が存在しますが、フォノステージの有無により完全同等とは言えません。より包括的に、同等機能を実現する組み合わせ(PC + Topping DX3 Pro+ DAC約20,000円 + Schiit Mani 2フォノ約25,000円 + Fosi Audio ZA3アンプ80W約15,000円、合計約60,000円)で代替可能であり、60,000円 ÷ 148,000円 = 0.4となります。一方、Yamaha A-S701(約200,000円、90W出力)はUSB-DACとフォノステージ非搭載のため機能的に劣ります。同等機能・性能の低価格代替が存在するため、コストパフォーマンスは低いです。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.7}\]Denonブランドは70年以上の歴史を持つ老舗オーディオメーカーとして、業界標準的な信頼性を提供しています。日本国内での製造により品質管理は良好で、サポート体制も整備されています。保証期間は業界標準の1年間で、全国のサービスネットワークによる修理対応が可能です。長期信頼性についてはDenonブランドの実績により一定の期待はできますが、新興高性能メーカーと比較して特別に優位な点はありません。ファームウェア更新等の先進的サポートは提供されていません。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.8}\]透明レベル達成を目指した科学的アプローチが採用されています。高調波歪率の低減、高SN比の実現、広帯域周波数特性の確保など、客観的な音質指標の改善に焦点を当てた設計は合理的です。USB-DAC機能による高解像度デジタル音源対応と、MM/MC両対応フォノステージによるアナログ音源対応により、現代的な音源環境への包括的対応を実現しています。Source Direct機能によりトーンコントロール回路のバイパスが可能で、信号経路の純度向上への配慮も見られます。ただし、PC+高性能DAC+フォノステージ+アンプの組み合わせで同等機能が低価格で実現可能であり、統合機器としての付加価値は限定的です。オカルト的要素の排除と科学的根拠に基づく設計は評価できます。
アドバイス
Denon PMA-1700NEは、70W×2出力でUSB-DACとフォノステージを内蔵した統合性の高いプリメインアンプです。測定性能は優秀で、特に歪率特性は公称値を大幅に上回る実性能を示しています。アナログレコードとデジタル音源の両方を扱うユーザーにとって、必要な機能が一体化された利便性は魅力です。ただし、148,000円という価格帯では、同等機能をより低価格な組み合わせ(PC+DAC+フォノ+アンプで約60,000円)で代替可能であり、単一製品としてのコストアドバンテージはありません。フォノステージが不要であればCambridge Audio CXA81が同価格で80W出力を提供しますが、組み合わせ代替を考慮すると全体的に低コスト化が可能です。本機は機能的バランスと測定性能の良さが特徴ですが、代替手段との比較で優位性は限定的です。購入検討時は、フォノステージの必要性と出力要件を明確にした上で、組み合わせを含む機能・性能比較を行うことを推奨します。
(2025.8.5)