Denon PMA-2500NE
白河工場製の重厚なプリメインアンプで、先進機能搭載だがS/N比の実測値に乖離あり、外付けフォノ組み合わせ考慮時のコストパフォーマンスは中程度の製品
概要
Denon PMA-2500NEは、福島県白河工場で製造される重量25kgの大型プリメインアンプです。8Ω時80W、4Ω時160Wの出力を持ち、UHC-MOS FET技術を採用しています。USB-B入力による384kHz/32bit PCMおよびDSD 11.2MHzまでの高解像度再生に対応し、MM/MCフォノイコライザーを内蔵しています。「New Era」を意味するNEシリーズの一角として、2016年から継続販売されている製品です。
科学的有効性
\[\Large \text{0.3}\]公称仕様では THD 0.01%、S/N比 110dBと発表されていますが、第三者による実測では大幅に異なる結果が確認されています。Audio Science Reviewでの測定では S/N比が75dBと公称値を大幅に下回り、Hi-Fi Newsの測定でも81dBという「平均以下」の結果でした。一方、THD+Nは10W/4Ω時に0.0057%と公称値より優秀な数値を示しています。周波数特性は5Hz-100kHz (-3dB)と、透明レベルの20Hz-20kHz (±0.5dB)を上回っています。しかし、最も重要な S/N比が80dB以下の問題レベルに該当し、透明レベルの105dB以上から大きく乖離しています。科学的有効性は低いと判断されます。
技術レベル
\[\Large \text{0.6}\]UHC-MOS FET(Ultra High Current MOS)技術によるシングルプッシュプル構成は、最大210Aのピーク電流供給能力を実現しています。Advanced AL32 Processing Plusによるデジタル信号処理や、高速デジタルアイソレーターによるUSBノイズ除去など、一定の技術的工夫が見られます。日本国内の自社工場での製造により品質管理も期待されます。しかし、これらの技術投入にもかかわらず実測のS/N比が業界平均を下回っており、技術の効果的な活用に疑問が残ります。現在の業界水準から見ると平均的な技術レベルにとどまっています。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.8}\]現在価格209,980円に対し、Yamaha A-S801(900 USD)とSchiit Mani 2外付けフォノプリアンプ(149 USD)の組み合わせが総額1,049 USDで同等以上の機能・性能を提供します。A-S801は100W @ 8Ω(高出力)、USB DAC機能(DSD 5.6MHz、PCM 384kHz/32bit対応)、MMフォノ入力を備え、Mani 2はMCフォノを追加し優れた測定値(SNR >87dB、THD <0.0015%)を示します。コストパフォーマンス計算では1,049 USD ÷ 1,400 USD = 0.75となり、同等機能を約75%の価格で入手可能を示しています。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.6}\]Denonは日本国内にサポート体制を構築しており、1年間の標準保証を提供しています。ユーザーレポートでは重大な故障事例や高額修理の報告が確認されませんでした。白河工場での国内生産により一定の品質管理は期待されるものの、長期的な信頼性については業界平均レベルと判断されます。サポート品質についても標準的な水準にとどまっており、特筆すべき問題はありません。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.6}\]アナログモードによるデジタル回路のバイパス機能や、MM/MC対応フォノイコライザーの搭載など、従来のオーディオ愛好家のニーズに応える設計思想は理解できます。しかし、25kgという重量や大型筐体による物量投入にもかかわらず、実測性能がS/N比で期待値を下回っている点は合理性に疑問を投げかけます。現在では、より軽量・コンパクトな設計で同等以上の測定結果を達成する製品が存在し、純粋な性能向上という観点での合理性は限定的です。USB DAC機能の搭載により現代的な使用環境への対応は図られていますが、全体的には従来型アプローチの延長にとどまっています。
アドバイス
PMA-2500NEの購入を検討される方は、同等機能を持つ代替組み合わせとの慎重な比較をお勧めします。特にYamaha A-S801とSchiit Mani 2の組み合わせは約75%の価格で同等以上の機能、高出力、優れたフォノ測定を提供し、より合理的な選択肢となります。一体型設計やDenonブランドを重視する場合でも、実測性能の限界を理解した上での判断が必要です。また、重量25kgという物理的な制約や標準保証についても事前に検討すべきでしょう。オーディオ機器選択においては、ブランドイメージよりも客観的な性能指標を優先し、ご自身の予算と使用環境に最適な製品を選択されることを強くお勧めします。長期的な満足度を考慮すると、より合理的な価格設定の競合組み合わせを検討されることが賢明です。
(2025.8.5)