Denon PMA-900HNE

参考価格: ? 158000
総合評価
3.9
科学的有効性
0.7
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
1.0
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
0.7

HEOS内蔵でネットワーク機能を搭載したミドルクラス統合アンプ。測定性能は許容範囲で、同等機能での世界最安価格によりコストパフォーマンスは優秀

概要

Denon PMA-900HNEは、HEOS Built-inを搭載したネットワーク対応の統合アンプです。Advanced High Current Single Push-Pull回路により85W×2(4Ω)の出力を実現し、AirPlay 2、Bluetooth、各種ストリーミングサービス対応を備えています。1910年創業のDenonが培ったアナログ回路技術と現代のネットワーク機能を融合させた製品として位置づけられ、ハイレゾ音源やDSD再生にも対応しています。MM/MCフォノイコライザーを内蔵し、アナログレコード再生も可能です。

科学的有効性

\[\Large \text{0.7}\]

透明レベルに照らし合わせた評価では許容範囲の結果を示しています。S/N比はライン入力で105dBと透明レベルをクリアし、高調波歪率は8Ω負荷時0.07%と透明レベルと問題レベルの間です。ただし4Ω負荷時のTHDが0.7%と問題レベルを超えており、低インピーダンス負荷での性能に課題があります。周波数特性は100kHzまで対応し可聴帯域を大きく上回ります。MMフォノのS/N比86dB、MCフォノ71dBは実用的な範囲内です。全体として透明レベルに近い測定性能を達成していますが、特定の負荷時の歪率に限界があります。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

Advanced High Current Single Push-Pull回路は独自の設計アプローチを示しており、HEOS Built-inによるネットワーク機能統合は技術的な先進性があります。24bit/192kHz PCMおよびDSD 5.6MHzまでの対応は現代の高解像度音源に適合しています。ただし基本的なアンプ回路は従来技術の延長線上にあり、革新的な要素は限定的です。ネットワーク機能と従来のアナログ回路の組み合わせは合理的ですが、純粋な音響性能面での技術的優位性は限定的です。業界平均を上回る設計レベルですが最高水準には達していません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{1.0}\]

158,000円の価格は、同等機能を持つ製品の中で世界最安レベルです。HEOS内蔵ネットワークストリーミング、高性能内蔵DAC、MM/MCフォノイコライザー、デジタル入力、リモコン統合制御を全て備えた統合アンプとして比較すると、最も近い競合製品はNAD C399(約330,000円)やCambridge Audio Evo 150(約500,000円)となります。これらの製品は出力や一部機能で上回りますが、基本的な同等機能セットでは本製品が圧倒的に安価です。ネットワークストリーミング機能が不要なユーザーには過剰仕様ですが、HEOS対応製品を求めるユーザーにとっては他に選択肢がない価格帯です。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

Denonは長い歴史を持つオーディオブランドとして確立されており、日本国内では充実したサポート体制があります。製品の保証期間は業界標準的で、修理体制も整備されています。HEOS機能についてはファームウェア更新が定期的に提供されており、ネットワーク機能の改善や新機能追加が継続的に行われています。大手ブランドとして品質管理も適切に行われており、致命的な欠陥報告は見られません。ただし一部のネットワーク機能で接続の不安定さを報告するユーザーもおり、完璧とは言えません。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.7}\]

ネットワーク機能の統合は現代的なオーディオ環境に適合した合理的なアプローチです。測定性能の向上に寄与する設計要素が含まれており、透明レベルに近い性能達成は評価できます。しかし同等の音質性能をより低コストで実現する手法が存在する中で、従来的なアナログ回路とネットワーク機能の組み合わせに留まっています。DACやストリーミング機能を分離した構成の方が柔軟性とコストパフォーマンスに優れる可能性があります。科学的な測定結果改善への取り組みは見られますが、価格破壊的なアプローチには至っていません。

アドバイス

本製品は測定性能が許容範囲で、同等機能での価格競争力に優れた製品です。HEOS内蔵ネットワークストリーミング、高性能DAC、MM/MCフォノイコライザーを統合した構成を求める場合、この価格帯では他に選択肢がありません。ただし、ネットワーク機能が不要でアンプ性能のみを重視する場合は、より安価な選択肢も存在します。4Ω負荷時の歪率がやや高めである点は、低インピーダンススピーカーを使用する際に考慮が必要です。HEOS エコシステムを活用したマルチルーム環境を構築予定であれば、統合性とコストパフォーマンスの両面で推奨できます。アナログレコード再生を重視するユーザーにとって、MM/MC両対応の内蔵フォノイコライザーは大きなメリットとなります。

(2025.8.4)