Denon PMA-SX11
Denon PMA-SX11は優秀な測定性能を持つ高級プリメインアンプだが、同等機能の製品と比較して価格が高すぎる
概要
Denon PMA-SX11は2015年に発売された同社のハイエンドプリメインアンプです。120W+120W(8Ω)の出力を持ち、Advanced UHC MOS単推動回路とMC/MM対応のCR型フォノイコライザーを搭載しています。27.4kgの重量級筐体に収められた本機は、Denonの技術力を結集した製品として位置づけられています。測定性能面では非常に優秀な数値を記録しており、特に歪率0.01%、S/N比108dB(ライン入力)という仕様は透明レベルに達しています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.8}\]PMA-SX11の測定性能は透明レベルをクリアしています。THD+N 0.01%(定格出力時、8Ω負荷、1kHz)は透明レベル(0.01%以下)を満たしており、聴覚上の歪みは検知不可能です。S/N比108dB(ライン入力)も透明レベル(105dB以上)を上回り、ノイズフロアは実用上問題ありません。周波数特性5Hz-100kHzは可聴域を大幅に超えた帯域を確保しており、透明な再生が期待できます。ダンピング・ファクターやクロストークの具体的数値は不明ですが、他の測定項目が透明レベルに達していることから、総合的に高い科学的有効性を持つ製品です。
技術レベル
\[\Large \text{0.7}\]Advanced UHC MOS単推動回路は同社独自の増幅技術であり、低歪率と高S/N比の実現に寄与しています。CR型フォノイコライザーはMC/MM両対応で、MC感度0.2mV、MM感度2.5mVと実用的な設計です。27.4kgの重量級筐体は電源部の充実を示唆しており、電源変動への耐性向上が期待できます。ただし、測定性能は現在の最新技術水準と比較して特別に突出しているわけではなく、業界平均を上回る程度の技術レベルです。設計思想は堅実ですが、革新的な要素は限定的です。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.3}\]現在市場価格約250,000円に対し、同等機能・測定性能を持つ製品として、MC/MM対応フォノ段を搭載したMarantz Model 40N(現在価格405,000円、70W出力、THD 0.02%)が存在します。405,000円 ÷ 250,000円 = 1.62となり、本機は競合製品より安価ですが、最安代替としてFosi Audio V3(15,000円、89W出力、THD 0.0008%)、Schiit Mani 2(22,000円、MC/MMフォノ、THD 0.002%)、Schiit Saga S(45,000円、複数入力プリ amp)の組み合わせと比較すると、82,000円 ÷ 250,000円 = 0.33となります。この組み合わせはTHDやS/N比などの主要指標で同等以上の測定性能を提供し、複数入力切り替えとフォノ機能を実現する最安の同等代替として選定しました。したがって、コストパフォーマンスは低いと言わざるを得ません。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.7}\]Denonは1910年創立の老舗オーディオメーカーであり、長期にわたる製品サポート体制を持っています。本機は2015年製ですが、同社の製品は一般的に故障率が低く、修理体制も整備されています。ただし、製造から10年が経過しており、今後の部品供給や修理対応に不安が残ります。保証期間は標準的で、業界平均水準のサポートを提供しています。重量級筐体は物理的な耐久性に優れますが、内部回路の経年変化は避けられません。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.6}\]透明レベル達成を目指した設計思想は合理的です。低歪率と高S/N比の追求により、マスター音源への忠実度向上を実現しています。CR型フォノイコライザーの採用も、アナログレコード再生において科学的に有効です。ただし、27.4kgという過剰とも言える重量設計は、実際の音質改善効果に対して非効率な物量投入の側面があります。現在の技術水準では、より軽量で同等性能の製品が実現可能であり、設計効率の面で改善の余地があります。デジタル技術の活用が限定的な点も、現代的な合理性に欠けます。
アドバイス
PMA-SX11は測定性能面で透明レベルに達した優秀な製品ですが、コストパフォーマンスの観点から推奨は困難です。Marantz Model 40N(405,000円)と比較して中古価格が安価ですが、出力は120Wと70Wの差しかなく、実用上の音質差は測定不能レベルです。MC対応フォノ段と複数入力が必要な場合、より安価な選択肢としてFosi Audio V3、Schiit Mani 2、Schiit Saga Sの組み合わせ(合計82,000円)が存在し、同等の透明性能と入力切り替えを提供します。本機を選ぶ理由があるとすれば、Denonブランドへの信頼や重厚な筐体に価値を見出す場合に限られます。純粋に音質とコストを考慮するなら、上記組み合わせを検討することを推奨します。中古市場では250,000円程度ですが、その価格帯でも代替案の方が価値が高いです。
(2025.8.5)