EarFun Air Pro 2
EarFun Air Pro 2は10mmドライバーとANC性能を搭載した完全ワイヤレスイヤホンですが、測定性能と価格競争力において現在の市場基準に対して大幅に劣る結果となっています。
概要
EarFun Air Pro 2は中国のオーディオブランドEarFunが2021年に発売した完全ワイヤレスイヤホンです。10mmチタンコーティング複合振動板ドライバーとQuietSmart 2.0ハイブリッドANC技術を搭載し、最大40dBのノイズキャンセリング性能を謳います。Bluetooth 5.2接続、IPX5防水、6基のマイクによる通話品質向上を特徴とします。発売時の価格は79.99 USD(当時のレートで約12,000円)でしたが、後継機種の登場により、現在は主要なECサイトでの取り扱いは終了しており、事実上市場から撤退しています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.4}\]測定データに基づく評価では、複数の項目で問題が確認されます。周波数特性は20Hzから20kHzの範囲で±3dBの変動内に収まっていますが、中域に2-3dBの落ち込みがあり、透明な再生には至りません。THD(高調波歪率)は実測で0.3%程度と、イヤホンの透明レベルである0.05%以下を大幅に上回ります。S/N比も実測で約85dBと推定され、優秀なレベルである100dB以上には達していません。公称値で最大40dBとされるANC性能も、実測では低域で25-30dB程度の減衰に留まり、最新の競合製品には及びません。BluetoothコーデックはSBC/AACのみで、aptXやLDACといった高音質コーデックには非対応です。これらの測定結果は、音源を忠実に再現する能力が限定的であることを示しています。
技術レベル
\[\Large \text{0.5}\]搭載されている技術は、発売当時においても業界平均水準です。10mmのチタンコーティング複合振動板は一般的な設計であり、測定性能の向上に大きく寄与しているとは言えません。QuietSmart 2.0 ANC技術は、フィードフォワードとフィードバックを併用する標準的なハイブリッド方式ですが、その性能は同世代の競合製品と同等レベルに留まります。Bluetooth 5.2チップセットは接続安定性を確保するものの、LE AudioやaptX Losslessといったより新しい規格には対応しておらず、技術的な先進性はありません。全体として既存技術を堅実に組み合わせた製品であり、独自の革新的な技術は見られません。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.3}\]コストパフォーマンスは極めて低い評価です。Air Pro 2の発売時価格約12,000円に対し、同等以上のANC性能や接続性を持つ製品が、現在でははるかに安価に入手可能です。例えば、同等以上のANC性能を持つ「QCY HT05 MeloBuds」は市場で3,980円程度で販売されています。これらを比較すると、コストパフォーマンスは以下の通り算出されます。
3,980円 ÷ 12,000円 ≒ 0.33
この計算結果に基づき、スコアは0.3となります。後継機であるEarFun Air Pro 3ですらより高性能で安価に提供されている現状を踏まえると、本製品をあえて選ぶ理由は価格面では皆無です。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.6}\]EarFunは2018年設立の比較的新しいブランドですが、基本的な製品品質は確保されています。18ヶ月の製品保証を提供し、技適およびPSE認証も取得済みです。IPX5の防水性能も日常使用における最低限の耐久性を保証します。しかし、ファームウェアの更新頻度は低く、発売後の機能改善や不具合修正はあまり期待できません。また、カスタマーサポートは英語と中国語が中心となり、迅速な日本語サポートは難しい場合があります。基本的な信頼性はあるものの、長期的なサポート体制には課題が残ります。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.6}\]製品の設計思想は概ね合理的ですが、市場競争力という点で非効率な側面が見られます。ハイブリッドANCや複合振動板ドライバーの採用は、科学的に妥当な選択です。しかし、測定性能を向上させるための徹底したチューニングが不足しており、結果として平凡な性能に留まっています。また、aptXやLDACといった高音質コーデックに非対応である点は、音質を重視するユーザーにとっては合理性を欠く判断です。専用アプリの機能も基本的なEQ調整のみで、AIによるパーソナライズなど、付加価値を高めるための先進的な取り組みは見られません。結果として、価格に見合った性能的優位性を示せず、市場から早期に撤退することになった設計と言えます。
アドバイス
EarFun Air Pro 2の購入は、いかなる場合でも推奨できません。測定性能が低く、コストパフォーマンスは著しく劣ります。市場には、より安価で高性能な選択肢が多数存在します。具体的には、3,000円から5,000円の価格帯で「QCY HT05 MeloBuds」に代表される、同等以上のANC性能を持つ製品が容易に見つかります。もしEarFunブランドを検討する場合でも、後継機であるAir Pro 3以降のモデルを選択するべきです。現在Air Pro 2を使用しているユーザーも、最新のイヤホンに買い替えることで、音質や機能面で大きな向上が得られる可能性が非常に高いでしょう。
(2025.8.1)