EarFun Air Pro 3

総合評価
2.5
科学的有効性
0.4
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
1.0
信頼性・サポート
0.3
設計思想の合理性
0.2

11mmウールコンポジットドライバーとQualcomm QCC3071チップセットを搭載した完全ワイヤレスイヤホン。ANC性能は43dB、バッテリー寿命は45時間を誇り、8,490円という価格設定は極めて高いコストパフォーマンスを示すが、測定データでは歪みが目立ち科学的有効性に課題がある。

概要

EarFun Air Pro 3は、2023年にリリースされた完全ワイヤレスイヤホンです。11mmウールコンポジットドライバーとQualcomm QCC3071チップセットを搭載し、QuietSmart 2.0技術による最大43dBのノイズキャンセリング性能を誇ります。Bluetooth 5.3とaptX Adaptiveコーデックを採用し、VGP 2023 ゴールドアワードを受賞しました。IPX5の防水性能と45時間のバッテリー寿命を持ち、LE Audio技術への対応も特徴です。価格は8,490円で展開されています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.4}\]

EarFun Air Pro 3の測定性能は問題が多く、科学的有効性において低評価となります。SoundGuysのMDAQS測定において、歪み(distortion)の項目で低いスコアを記録し、「most people will find off-putting」レベルの歪みが測定されています。周波数特性では266Hz〜1.1kHzの中域に明確な落ち込みがあり、低域は過度に強調されています。8.1kHzまでの高域も過度に強調され、特に右ドライバーで刺激的で鋭い音質が測定されています。11mmウールコンポジットドライバーの限界により、透明感、明瞭性、解像度の不足が顕著です。THDは0.7%未満とされていますが、実測ではより高い歪みが検出されており、カタログスペックと実測値に乖離があります。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

技術的には中程度の水準を示しています。Qualcomm QCC3071チップセットとQuietSmart 2.0ハイブリッドANC技術は業界標準レベルの実装です。Bluetooth 5.3とLE Audio、LC3コーデック対応は最新技術への適応を示していますが、特段の独自性はありません。6つのマイクロフォンとQualcomm cVc 8.0技術による通話品質向上は一定の技術力を示しますが、11mmウールコンポジットドライバーの音響設計には限界があり、測定結果に表れる歪みやバランスの問題は根本的な設計課題を示唆しています。43dBのANC性能は数値的には良好ですが、実装における最適化が不十分です。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{1.0}\]

EarFun Air Pro 3は、8,490円という価格で、aptX Adaptive対応、LE Audio対応予定、43dBのANC性能、45時間のバッテリー寿命といった豊富な機能を提供します。同等以上の機能・性能を持つ製品をこの価格以下で見つけることは困難であり、したがってコストパフォーマンスのスコアは1.0となります。

参考として、より優れた測定性能を持つAnker Soundcore Liberty 4 NCは9,690円で販売されています。仮に比較した場合の計算式は 9,690円 ÷ 8,490円 = 1.14 となり、結果が1.0を上回るため、EarFun Air Pro 3が価格対性能比で優位にあることがわかります。

結論として、純粋な機能対価格の比較において、本製品のコストパフォーマンスは市場で最高レベルと評価できます。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.3}\]

製品の信頼性において懸念があります。ファームウェア0.5.1でも周波数特性の改善が限定的で、歪みの根本的解決には至っていません。マルチポイント接続の安定性では競合製品(Liberty 4 NC)に劣り、デバイス切り替え時の音声出力に問題が報告されています。EarFunのサポート体制は他の大手メーカーと比較して限定的で、グローバルサポートネットワークや修理体制が不十分です。充電ケースとの接続安定性にも課題があり、イヤホンを正しく認識しない場合があることが報告されています。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.2}\]

設計思想において非合理的な側面が目立ちます。11mmドライバーの大型化は音質向上を狙ったものですが、実際の測定結果では歪みと周波数バランスの悪化を招いており、科学的根拠に基づかない設計判断です。低域の過度な強調は「EDMやヒップホップに適している」という主観的な音質調整であり、高忠実度再生から逸脱しています。ANCオフ時により良好な音質特性を示すことは、ANC回路と音響設計の最適化が不十分であることを示しています。43dBという数値的なANC性能にこだわる一方で、実際の聴感上のバランスを犠牲にする設計は非合理的です。LE Audio対応などの新技術採用は評価できますが、基本的な音質性能の問題を解決していません。

アドバイス

EarFun Air Pro 3は8,490円という価格で最高のコストパフォーマンスを誇りますが、著しい測定性能の問題が音質優先ユーザーにとっての魅力を制限します。SoundGuysの測定で確認された歪みの問題は、音質に敏感なユーザーには明確に知覚され、忠実度を損ないます。Anker Soundcore Liberty 4 NC(9,690円、約1,200円高)は大幅に優れた測定性能、LDACコーデック対応、全体的に優秀な品質を提供し、この価格差は音質を重視するなら十分に正当化されます。

VGP 2023 ゴールドアワード受賞は評価できますが、客観的な測定データは根本的な音響限界を明らかにしています。基本的なANC機能を必要とし測定上の妥協を受け入れられる予算重視のユーザーには、Air Pro 3は受け入れ可能な選択肢です。しかし、音質を優先する場合、わずかな追加投資でSoundcore Liberty 4 NCを選択することを強く推奨します。aptX AdaptiveやLE Audio対応は将来的な価値を提供しますが、基本的な音響性能の欠陥を補うものではありません。

(2025.7.15)