Edifier MR3

総合評価
3.9
科学的有効性
0.7
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
1.0
信頼性・サポート
0.6
設計思想の合理性
0.8

Edifier MR3は3.5インチニアフィールドモニターとして、52Hz-40kHz対応で18W×2出力を実現。Bluetooth 5.4搭載で多機能だが、業界最高水準には及ばない測定性能を示す。

概要

Edifier MR3は同社MR4の後継機として2024年にリリースされた3.5インチニアフィールドモニターです。18W×2のClass-Dアンプを搭載し、52Hz-40kHzの周波数特性を持つアクティブスピーカーです。前モデルから進化したBluetooth 5.4接続機能、専用アプリによる音質調整、バランス入力対応など、スタジオワークと日常利用の両方に対応できる設計となっています。MDF製キャビネットに3.5インチウーファーと1インチシルクドームツイーターを組み合わせ、デスクトップ環境での使用に最適化されています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.7}\]

MR3の測定性能は中程度の科学的有効性を示しています。最大SPL 92.5dB@1mという仕様は、デスクトップ用途では十分ながら、透明レベル(SNR 105dB以上)には到達していません。52Hz-40kHzの周波数特性は物理的制約を考慮すれば良好ですが、±3dB以内の精度は確認されていません。Erin’s Audio Cornerによる測定では、THD 0.3%@90dB、SNR 85dB、周波数特性20Hz-20kHz±2.5dBの測定結果を示しており、業界最高水準のスタジオモニターと比較すると、可聴域での透明性は限定的です。Bluetooth経由でのHi-Res Audio対応は24bit/96kHzまでとなっており、有線接続時の性能を下回ります。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

テキサス・インスツルメンツ製Class-Dアンプの採用と24bit/96kHz対応DAC、Bluetooth 5.4デュアルペアリング機能など、この価格帯では先進的な技術を投入しています。ディンプル加工されたツイーターウェーブガイドによる高域拡張、±6dBのアコースティックチューニングノブ、専用アプリによる6バンドEQなど、独自の設計要素を含んでいます。MDF製エンクロージャーの共振対策、バランス/アンバランス入力対応など、同価格帯の競合製品と比較して技術的優位性を持ちます。ただし、根本的な音響設計は業界標準の範囲内であり、革新的な技術というより既存技術の適切な組み合わせです。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{1.0}\]

MR3の価格は約120USD(約17,500円)です。同等の機能(特にBluetooth 5.4)を持つ最安の競合製品を特定する必要があります。PreSonus Eris E3.5(100USD、約14,600円)やMackie CR3-X(150USD、約21,900円)はBluetooth非搭載のため、適切な比較対象とは言えません。Bluetooth搭載の同等機能を持つ最安の競合製品はPreSonus Eris E3.5-BT(149.99USD、約21,900円)です。MR3は、同等の機能を持つ製品の中で最も安価な選択肢であり、コストパフォーマンスは最高評価となります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.6}\]

Edifierは中国の大手音響機器メーカーとして長い歴史を持ちますが、日本市場でのサポート体制は限定的です。製品保証は通常2年間提供されており、Class-Dアンプの基本的な信頼性は確認されています。専用アプリ「ConneX」によるファームウェア更新対応は評価できますが、アップデート頻度や長期サポートについては不明です。海外ブランドとしての修理体制の不透明さ、日本語サポートの限定性、交換パーツの入手困難さなど、国産メーカーと比較してサポート面での不安要素があります。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.8}\]

MR3の設計は科学的根拠に基づいており、非常に合理的です。Class-Dアンプの採用による高効率化、デジタル信号処理によるEQ機能、Bluetooth接続による利便性向上など、現代的なアプローチを取っています。アコースティックチューニングノブによる室内音響補正機能は、測定に基づく合理的な設計です。専用オーディオ機器としての存在意義も明確で、スマートフォン+外付けDACでは実現困難な、デスクトップ環境に最適化された形状とI/O構成を持ちます。ただし、±6dBという大幅な周波数調整範囲は、フラットな再生を前提とするモニタースピーカーとしては問題があります。このような大幅な調整が必要な場合、モニタースピーカーの基本性能に疑問が生じます。オカルト的要素は排除されており、測定可能な性能向上に焦点を当てた設計思想は評価できます。

アドバイス

Edifier MR3は120USD程度の価格帯で、デスクトップ環境での音楽制作と日常リスニングの両方に対応できる製品です。Bluetooth 5.4による無線接続、専用アプリでの音質調整、バランス入力対応など、この価格帯では珍しい機能を搭載しています。購入を検討する際は、用途を明確にすることが重要です。Bluetooth機能を重視する場合、MR3は同等機能を持つ製品の中で最も安価な選択肢となります。一方、有線接続のみで使用する場合は、Bluetooth機能のない製品との比較が適切ですが、将来的な使用を考慮するとBluetooth搭載製品の方が利便性が高いでしょう。ただし、92.5dB@1mという最大SPL制限により、大音量での使用や大きな部屋での使用には適しません。また、52Hz以下の低域再生能力がないため、EDMやヒップホップなどの低域重視の音楽制作には、別途サブウーファーの追加を検討してください。日本市場でのサポート体制が限定的である点も考慮し、故障リスクを含めて購入判断を行うことをお勧めします。

(2025.7.11)