Eversolo DMP-A8

総合評価
4.2
科学的有効性
0.9
技術レベル
0.8
コストパフォーマンス
0.9
信頼性・サポート
0.8
設計思想の合理性
0.8

AKM Velvet Sound技術搭載のプレミアムストリーミングDAC。XLR出力でTHD+N -120dB、SNR 128dBの優秀な測定性能を実現。6インチタッチスクリーン、フルバランス構成、R2Rボリューム制御など上位機能を搭載するが、29万円台の価格でコスパに課題。

概要

Eversolo DMP-A8は2023年発売の同社フラッグシップストリーミングDAC。先代DMP-A6の約2倍となる1,980USD(約30万円)で販売される上位機種。AKM AK4499EX + AK4191EQによるVelvet Sound技術、フルバランス回路構成、R2Rボリューム制御、6インチタッチスクリーンなど、プレミアム機能を多数搭載。デュアル電源(リニア+スイッチング)、Accusilicon社製フェムト秒クロック、ドイツWIMA・日本ニチコンコンデンサーなど高品質部品を採用。DSD512/PCM 768kHz 32bit対応、Roon Ready認証取得済み。EISA 2024-2025ベスト製品賞受賞。独立系測定でも優秀な性能が確認されている。

科学的有効性

\[\Large \text{0.9}\]

XLR出力でTHD+N 0.00009%(-120dB)、SNR 128dB、ダイナミックレンジ128dBという極めて優秀な測定性能を実現。周波数特性は20Hz-20kHz ±0.25dBで透明レベルを大幅に上回る。Stereophile誌の独立測定では2次高調波が-120dB(0.0001%)で、4V/600Ω負荷でも極低歪を維持。クロストークは-121dBと優秀で、可聴閾値を大幅に下回る。AKM Velvet Sound技術によるデルタシグマとR2R両方の利点を活用した設計により、科学的に意味のある性能向上を実現している。RCA出力も同等の性能を示し、バランス・アンバランス両対応で実用性も高い。

技術レベル

\[\Large \text{0.8}\]

AKM AK4499EX + AK4191EQによるVelvet Sound技術は業界最高水準のDAC実装。AK4191EQがデジタル処理(フィルタリング等)、AK4499EXが実際の変換を担当する分離設計により最適化を実現。Accusilicon社製フェムト秒クロック(45.1584MHz/49.152MHz)による極低ジッター設計、Texas Instruments OPA1612オペアンプ採用など、技術的選択は適切。XMOS XU316プロセッサーによりDSD512 Native、PCM 768kHz/32bit対応を実現。ただし、基本的にはAKMの既存技術を活用した設計で、独自開発要素は限定的。R2Rラダー抵抗によるステップボリューム制御は高品質だが、革新的技術ではない。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.9}\]

WiiM Ultra(¥49,800、THD+N -115dB、SNR 121dB)と比較してDMP-A8(¥300,000、THD+N -120dB、SNR 128dB)のCPは0.17程度。同等性能のFiio R9(¥224,000、THD+N -122dB、SNR 132dB)に対してもCPは0.77となる。6インチタッチスクリーンやフルバランス回路などの付加価値はあるものの、純粋な測定性能に対する価格は高い。Cambridge Audio MXN10(¥65,000程度)も十分な性能を持ち、30万円という価格設定では競争力に欠ける。専用機としての統合性や操作性に価値を見出せるユーザー向けの製品だが、コスパ重視なら他選択肢が有利。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.8}\]

ドイツWIMA、日本ニチコン、日本オムロンリレー、米国TIオペアンプなど高品質部品を採用し、基本的な信頼性は確保されている。CNC加工アルミニウム筐体により物理的堅牢性も十分。ファームウェア更新は定期的に提供され、機能改善に積極的。国際的な販売網により日本でも正規サポートを受けられる。EISA賞受賞により第三者機関からの評価も得ている。ただし、2020年設立の新興企業としては長期的な故障率データは限定的。保証期間は標準的で、新興メーカーとしては妥当なサポート体制を構築している。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.8}\]

測定性能重視のアプローチは科学的で合理的。フルバランス回路、デュアル電源設計、高精度クロック実装など、音質向上に寄与する技術選択は適切。6インチタッチスクリーンによる直感的操作、多様なストリーミングサービス対応、DSPによる音場補正機能なども現代的で実用的。R2Rボリューム制御による高品質音量調整も理にかなっている。ただし、WiiM UltraやFiio R9といった競合製品が同等以上の測定性能を大幅に安価で提供している状況で、30万円の専用機として存在する必然性には疑問がある。特にスマートフォン+高性能外付けDACソリューションとの優位性が限定的な価格帯。

アドバイス

DMP-A8は測定性能、操作性、統合性において高い完成度を持つプレミアムストリーマーだが、コストパフォーマンスに課題がある。Stereophile誌の独立測定で実証された-120dBという極低歪性能は確かに優秀だが、WiiM Ultra(6倍安価)でも実用上十分な性能が得られ、Fiio R9(25%安価)では同等以上の測定値を実現している。購入を検討する場合は、6インチタッチスクリーンの操作性、フルバランス出力、R2Rボリューム制御、専用機としての統合体験に価値を見出せるかがポイント。純粋に音質重視なら同じ予算でより高性能な選択肢が存在する。オーディオ専用機の所有満足度や操作体験を重視し、価格差を受け入れられるユーザーには推奨できるが、コスパ重視なら他製品を検討すべき。

(2025.7.8)