FiiO CP13
アルミ合金筐体とUSB-C充電を備える現代的なカセットプレーヤーですが、アナログ磁気テープの制約により忠実度は低く、デジタル代替に対するコスト面の優位性も乏しい製品です。
概要
FiiO CP13はCES 2024で公開されたポータブルカセットプレーヤーです。フルアルミ筐体とUSB-C充電、テープヘッドから出力までの完全アナログ信号経路、JRC5532オペアンプの採用、約13時間再生の充電式バッテリーなどを備えます [1]。
科学的有効性
\[\Large \text{0.2}\]メーカー情報ではワウ・フラッターは典型0.2%(最大でも0.25%以下)とされ、可聴なピッチ変動を生じ得る水準です [2]。信号対雑音比は>55 dBとされ、テープヒスの自明性を示します。周波数特性はメーカー未公表で、第三者の実測は本レビュー時点で未確認です [1]。以上より、客観的な忠実度は現代的なデジタル再生と比べ大きく劣ります。
技術レベル
\[\Large \text{0.6}\]4.2 V駆動のモーター電源と速度安定化、30.4 mmの純銅フライホイール、「バランス増幅」再生ヘッド、JRC5532採用など、機械系・アナログ回路の堅実な実装が見られます [1]。もっとも、これらはアナログ方式の限界そのものを覆すものではありません。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{1.0}\]市場実売の例として本機は国内で24440円(エミライ直販) [5]。対抗としてWe Are Rewindは国内で23800円程度の実売例があり [6]、ワウ・フラッター(典型0.2%)と周波数特性(30 Hz–12.5 kHz、Type Iテープ条件)が同等以上で、さらにBluetoothや録音機能を備えます [3]。同等以上の機能・性能を持つより安価な製品は確認できなかったため、CPは上限の1.0です。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.5}\]アルミ筐体など作りは堅牢ですが、機械式トランスポートは摩耗や経年劣化の懸念を伴います。保証・修理体制は一般的な水準で、長期的な部品供給は不透明です。バッテリーは将来的に交換前提で、総合的には平均的評価です。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.4}\]完全アナログ再生という方針はノスタルジア重視であり、測定上の忠実度向上には繋がりません。機械・回路の作りは適切ながら、科学的な音質向上の観点では後退的です。
アドバイス
テープの手触りや雰囲気そのものを楽しみたい方、既存のカセット資産をカジュアルに再生したい方には選択肢になり得ます。一方、音質や費用対効果を重視する場合は、現代的なデジタル機器の方が圧倒的に高い忠実度を低価格で提供します。
参考情報
[1] FiiO — 「CP13 Portable Stereo Cassette Player(仕様)」, https://www.fiio.com/cp13, 2025-08-30参照.
[2] FiiO — 「CP13 FAQ:ワウ・フラッター等」, https://www.fiio.com/newsinfo/899710.html, 2025-08-30参照.
[3] We Are Rewind — 「Cassette Player Specifications」(FR 30 Hz–12.5 kHz〈Type I〉, W&F 0.2% typ., S/N 50 dB), https://www.wearerewind.com/pages/informations-produits, 2025-08-30参照.
[4] We Are Rewind — 製品ページ(価格 159 USD), https://www.wearerewind.com/products/serge, 2025-08-30参照.
[5] エミライダイレクト — 「FIIO CP13 Transparent FIO-CP13-T」(国内価格の例), https://store.emilai.co.jp/products/fiio-cp13-transparent, 2025-08-30参照.
[6] MAMMOTH BLD — 「WE ARE REWIND Cassette Player Orange - SERGE」(国内価格例 23,800円), https://mammothbld.theshop.jp/items/69677687, 2025-08-30参照.
(2025.8.30)