FiiO K9 AKM

参考価格: ? 118800
総合評価
3.0
科学的有効性
0.8
技術レベル
0.7
コストパフォーマンス
0.3
信頼性・サポート
0.5
設計思想の合理性
0.7

旭化成のフラッグシップDACチップAK4499EXを搭載したデスクトップDAC・ヘッドホンアンプ。測定性能は透明レベルを達成するが、コストパフォーマンスに課題

概要

FiiO K9 AKMは、中国のFiiOが製造するデスクトップDAC・ヘッドホンアンプです。従来のK9に搭載されていたESS製DACチップに代わり、旭化成のフラッグシップDACチップAK4191+AK4499EXコンボを採用した製品です。THX AAA 788+デュアルモジュールによるヘッドホンアンプ部を搭載し、バランス接続時に32Ω負荷で2000mW、300Ω負荷で780mWの出力を実現します。768kHz/32bit PCMおよびDSD512対応、Bluetooth接続にも対応した多機能なオールインワン製品として位置づけられています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.8}\]

測定性能において透明レベルをほぼ達成しています。THD+Nは0.00027%と透明レベル基準の0.01%以下を大幅にクリアし、S/N比124dBも透明レベル基準の105dB以上を上回ります。周波数特性は20Hz-50kHzと可聴帯域を超えてフラットな特性を実現し、出力インピーダンス1Ω未満も優秀な値です。ノイズフロアはアンバランス出力で8μV未満、バランス出力で9.3μV未満と極めて低く、クロストークも十分に抑制されています。これらの測定値は聴覚上透明な音質の実現に十分寄与する水準にあり、科学的に意味のある音質改善効果が期待できます。

技術レベル

\[\Large \text{0.7}\]

旭化成のフラッグシップDACチップAK4499EXとAK4191コンボの採用により、業界水準を上回る技術的実装を実現しています。DWA ROUTING技術によるS/N比改善、XMOS XUF208デコーダーによるデュアルクロック管理など、測定性能向上に寄与する技術が投入されています。THX AAA 788+デュアルモジュールによるアンプ部も実証された低歪率設計です。ただし、これらの技術は他社でも広く採用されている既存技術の組み合わせであり、FiiO独自の革新的技術は限定的です。技術レベルとしては業界平均を上回るものの、最高水準には達していません。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.3}\]

118,800円という価格に対し、同等以上の機能・測定性能を持つより安価な代替品が複数存在します。最も価格効率の良い比較対象として、Topping DX3 Pro+(約30,000円)が挙げられます。DX3 Pro+はES9038Q2M DACチップ、THD+N 0.00015%、SNR 120dB、32Ω負荷で1800mW出力と、K9 AKMと遜色のない基本性能と機能をより低価格で実現しています。コストパフォーマンス計算では30,000円 ÷ 118,800円 = 0.252となり、K9 AKMの価格効率は低い水準にあります。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.5}\]

FiiOの保証期間は1年間で業界平均水準です。カスタマーサポートについては地域により品質のばらつきがあり、欧州では比較的良好な評価がある一方、アジア地域では対応の遅れや不適切な修理事例が報告されています。製品の故障率に関する具体的なデータは公開されていませんが、Head-Fiなどのコミュニティでは散発的な初期不良報告が見られます。日本市場では正規代理店を通じた販売・サポート体制が整備されていますが、修理時の中国本社への送付が必要な場合があり、期間の長期化リスクが存在します。全体として業界平均的な水準にとどまります。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.7}\]

測定性能の透明レベル達成を目指した科学的アプローチは合理的です。AKMのフラッグシップDACチップ採用、THX認証アンプモジュール使用など、実証された技術による性能向上を図っています。768kHz/32bit PCM、DSD512対応は現在の高解像度音源に対応した仕様です。ただし、デスクトップDAC・アンプとしての専用機の必然性については疑問が残ります。同等の機能・性能はより安価なコンパクト製品や、PC+外付けDACの組み合わせでも実現可能であり、大型筐体や専用電源の必要性は限定的です。Bluetooth対応などの利便性向上は評価できるものの、価格に見合う差別化要素は不十分です。

アドバイス

FiiO K9 AKMは優秀な測定性能を持つ製品ですが、価格効率の観点から購入は推奨しません。同等の音質と機能を求める場合、Topping DX3 Pro+など、4分の1程度の価格で入手可能な代替品が存在します。DX3 Pro+は1800mW出力、THD+N 0.00015%、SNR 120dBと、同等以上の基本性能を約30,000円で実現しており、K9 AKMを選択する合理的理由は見当たりません。118,800円の予算があれば、より価格効率の良いDAC・アンプを選択し、残額でヘッドホンやスピーカーのアップグレードに充てることを強く推奨します。AKMチップの音色的特徴に特別なこだわりがない限り、客観的な性能・価格比較に基づいた製品選択を行うべきです。

(2025.8.2)