final A3000
final A3000は、強化された高音域と低音域レスポンスを持つV字型サウンドシグネチャーを提示します。同社のf-Core DUドライバー技術を特徴としていますが、130ドル未満の価格帯において、優れた測定性能と価値を提供する代替品との激しい競争に直面しています。
概要
final A3000は、同社の新設計f-Core DUを採用するシングルダイナミックドライバーIEMです。Aシリーズに位置づけられ、ABS樹脂筐体に6mmドライバー、着脱式2ピン(0.78mm)ケーブルを備えます[3]。同社は「圧倒的に自然な音」を掲げつつ、より広範なユーザーを想定したモデルとして展開しています。
科学的有効性
\[\Large \text{0.5}\]A3000はV字型に近い周波数応答で、上方向に強調が見られます(Crinacleの第三者測定)[1]。上位帯域では±3dBを超える偏差が複数箇所で確認され、完全な透明性の観点では限定的です。総合的なTHD等の網羅的データは公的には多くありませんが、18Ω/98 dB/mW(メーカー公表値)により一般的なソースでの駆動は問題ないと見込まれます[2]。独自ドライバーは注目点ではあるものの、測定上の優位が普遍的に示されているわけではありません。
技術レベル
\[\Large \text{0.6}\]f-Core DUは新設計の小口径DDで、コイルやフロントハウジング(真鍮)など細部の設計最適化がうかがえます[3]。2ピン0.78mmの汎用コネクタやABS樹脂筐体など、堅実な要素が中心で最先端というより成熟した実装です。一定の自社設計投資は評価できますが、市場全体と比べて突出した革新性までは示しません。
コストパフォーマンス
\[\Large \text{0.1}\]19800円に対し、より安価で同等機能(着脱式2ピンのシングルDD IEM)かつ第三者の周波数応答測定が充実する選択肢が存在します。例えばCCA CRAは実売約2000円前後(14 USD)で、同等の基本機能と良好な測定実績が確認できます[4][5]。よって 2000円 ÷ 19800円 = 0.10 となり、価格に対する純粋な性能・機能価値は低位です。
信頼性・サポート
\[\Large \text{0.6}\]A3000のメーカー保証は2年間です[2]。単一DD構成で可動部が少なく、着脱式ケーブルにより故障しやすい部位の交換も容易です。販売/サポート網はグローバルに整備されていますが、特筆する延長保証や特別なサポート体制はありません。筐体はABSで実用的な耐久性を期待できますが、素材面でのプレミアム性は限定的です。
設計思想の合理性
\[\Large \text{0.6}\]同社は計測重視の開発姿勢を掲げつつ、量販的な受け入れやすさを意識したV字傾向のチューニングを採っています[1][3]。商業的には合理的ですが、音響的透明性の最大化という観点では妥協が見られます。独自ドライバーの投入は前向きながら、測定上の優位が明確な形で価格に反映されているとは言い難いです。
アドバイス
finalらしいサウンドを手頃に求める方には候補になります。一方で純粋な測定性能や費用対効果を重視する場合、CCA CRAなど低価格帯の代替を含め再検討の余地があります[4][5]。V字傾向が好みの方には魅力ですが、ニュートラル志向や精度最優先の方は他機種も比較検討すると良いでしょう。
参考情報
[1] Crinacle - Final Audio A3000, In-Ear Fidelity(IEC 60318-4系カプラー測定DB), https://crinacle.com/graphs/iems/final-audio-a3000/, 2025年9月1日アクセス
[2] final - A3000 取扱説明書(保証2年/仕様:感度98 dB/mW・インピーダンス18Ω ほか), https://cdn.shopify.com/s/files/1/0516/3106/3190/files/A3000_manual_forweb.pdf?v=1672030951, 2025年9月1日アクセス
[3] final - A3000 製品ページ(2ピンφ0.78規格、設計ハイライト等), https://snext-final.com/en/products/detail/A3000, 2025年9月1日アクセス
[4] CCA CRA 仕様と価格, Linsoul Audio, https://www.linsoul.com/products/cca-cra, 2025年9月1日アクセス
[5] Crinacle - CCA CRA, In-Ear Fidelity(IEC 60318-4系カプラー測定DB), https://crinacle.com/graphs/iems/cca-cra/, 2025年9月1日アクセス
(2025.9.2)