Focal Shape 50

参考価格: ? 88000
総合評価
2.2
科学的有効性
0.4
技術レベル
0.6
コストパフォーマンス
0.2
信頼性・サポート
0.5
設計思想の合理性
0.5

Focal Shape 50は5インチスタジオモニターとして独自技術を搭載するが、測定性能とコストパフォーマンスで厳しい評価となる製品です。

概要

Focal Shape 50は、フランスの老舗スピーカーメーカーFocalが開発した5インチアクティブニアフィールドスタジオモニターです。TMD(Tuned Mass Damper)サラウンド技術、N.I.C.(Neutral Inductance Circuit)技術、フラックスサンドイッチコーン構造などの独自技術を投入し、スタジオグレードの音質を目指した製品として位置づけられています。85W総出力(ウーファー60W + ツイーター25W)のClass-ABアンプを内蔵し、50Hz-35kHz(±3dB)の周波数特性と106dB SPLの最大出力を謳っています。

科学的有効性

\[\Large \text{0.4}\]

TMD技術等で歪み低減を図っていますが、信頼できる第三者の実測データによれば、特に低域(100Hz以下)においてTHD(高調波歪率)が1%を超えるなど、問題レベルに達しています。公称の周波数特性50Hz-35kHz(±3dB)はスピーカーとして標準的な範囲ですが、歪率の高さを考慮すると、マスター音源への忠実度が高いとは言えません。N.I.C.技術による磁気回路安定化やパッシブラジエーター採用は評価できるものの、総合的な測定性能は価格に見合う透明レベルには達していません。

技術レベル

\[\Large \text{0.6}\]

TMDサラウンド技術は特定周波数帯域での共振制御として合理的なアプローチであり、N.I.C.技術による磁気回路の安定化も技術的に意味のある設計です。フラックス(亜麻)繊維サンドイッチコーンは軽量かつ高剛性を実現する材料選択として評価できます。M字プロファイルアルミニウム・マグネシウム合金ツイーターはKaptonボイスコイルと組み合わせて高域歪み低減を図っており、一定の技術投入が認められます。しかし、これらの技術の多くは既存技術の組み合わせであり、業界を牽引する革新性は限定的です。

コストパフォーマンス

\[\Large \text{0.2}\]

Focal Shape 50の価格は88,000円(単体)ですが、同等以上の機能・測定性能を持つJBL LSR305P MkIIが14,800円(単体)で入手可能です。14,800円 ÷ 88,000円 = 0.17となり、コストパフォーマンスは著しく劣ります。JBL LSR305P MkIIは同じ5インチクラスでありながら、より優れた低域レスポンス、広いスイートスポット、明確な中高域特性を実現しており、技術的優位性も認められません。PreSonus Eris E5やYamaha HS5なども2万円台から3万円弱で同等以上の性能を提供しており、Focal Shape 50の価格設定に合理性は見出せません。

信頼性・サポート

\[\Large \text{0.5}\]

Focalは歴史あるスピーカーメーカーとして一定の品質管理体制を有しており、製品保証も標準的な期間が設定されています。しかし、プロオーディオ分野でのサポート体制は、JBL ProfessionalやYamahaといった専業メーカーと比較すると限定的である可能性があります。故障率や長期信頼性については、コンシューマー向け製品での実績はあるものの、スタジオ環境での過酷な使用に対する具体的なデータは限定的です。

設計思想の合理性

\[\Large \text{0.5}\]

Focalの技術的アプローチ自体は音質改善に向けた合理的な方向性を示していますが、結果として同価格帯の競合製品に対する明確な優位性を実現できていません。TMDやN.I.C.などの独自技術は工学的に意味がありますが、最終的な測定性能での透明レベル達成には至っておらず、技術投入の効率性に疑問があります。また、88,000円という価格設定で提供する価値が、より安価な競合製品で代替可能である点は、専用機器としての存在意義を疑問視させます。透明レベル達成を目指すより直接的なアプローチが求められます。

アドバイス

Focal Shape 50の購入を検討されている方は、まずJBL LSR305P MkII(14,800円)やPreSonus Eris E5(19,800円)、Yamaha HS5(28,600円)との比較試聴を強く推奨します。これらの製品は3分の1から6分の1の価格でありながら、多くの測定項目でShape 50と同等以上の性能を実現しています。特にJBL LSR305P MkIIは優れた低域レスポンスと広いスイートスポットを持ち、コストパフォーマンスの観点から圧倒的に優位です。Focal Shape 50の独自技術に魅力を感じる場合でも、その技術的優位性が実際の測定性能に反映されているかを慎重に検証し、3倍から6倍近い価格差に見合う価値があるかを冷静に判断してください。予算に余裕がある場合は、より上位クラスの7-8インチモニターを検討することで、より確実な音質向上を得られるでしょう。

(2025.7.21)